2022年1月5日

新春トップインタビュー
住友ゴム工業

変革しっかり定着
さらなる成果へ結び付ける

【2021年度を振り返って】
米国、中国をはじめ多くの市場で回復基調が続いたものの、天然ゴム価格と石油系原材料価格の上昇や、海上輸送コストの高騰などが収益に大きな影響を与えた。しかしながら、外部環境の逆風に屈することなく全部門が一丸となった努力の結果、成果を出すことができたととらえている。当社グループはこれまで2025年を目標年度とする中期計画の達成に向け、経営基盤の強化を目指す全社プロジェクトを推進するとともに、世界の主要市場に構築した製販拠点の効果の最大化を図るべく、各地区の顧客ニーズに対応する高機能製品の開発と拡販に取り組んできた。タイヤ事業では世界各地のおう盛な需要にこたえるため、昨年2月に米国工場におけるSUV、ライトトラック用タイヤなどの増産投資を決定し、7月には今後の市場の成長を見込んでブラジル工場での増産投資を決定した。一方、国内の開発面においては、昨年1月、冬用タイヤ開発拠点の名寄タイヤテストコース内に国内最大級の屋内氷上試験施設(NICE=Nayoro indoor ICE field)を開設した。全長100㍍の制動試験路と約30㍍四方の旋回試験路を備えており、天候に左右されることなく高精度な試験が実施できる。今後このテストコースを最大限に活用しながら冬用タイヤの一層の高性能化と開発のスピードアップを図っていきたい。

【注力する高機能商品について】
近年、注目を集めているオールシーズンタイヤにおいては2019年3月に販売を開始した「オールシーズンマックスAS1」のサイズラインアップを昨年4月に拡大した。また、3月には国内市場初となる商用車用の「オールシーズンマックスVA1」、9月にはタクシー専用の「オールシーズンマックスAS1 For TAXI」を順次投入した。雪道でも走行可能なオールシーズンタイヤは履き替えの手間がなく、お客様に〝安全・安心〟を提供できる商品として好評を得ている。

スマートタイヤコンセプト(未来のモビリティ社会で求められる性能を実現させるためのコンセプト)採用商品としては、バイオマス原材料のセルロースナノファイバーを世界で初めてタイヤに採用した「エナセーブNEXTⅢ」が、一般財団法人省エネルギーセンター主催の「2020年度省エネ大賞」で資源エネルギー庁長官賞を受賞した。画期的な新ポリマーで優れた耐摩耗性とウエット性能の長期持続を実現しており、乗り心地や操縦安定性と環境性能を高次元で両立している。

【新車用タイヤの納入状況について】
ダンロップブランドではレクサス初の市販用EVモデル「UX300e」やトヨタ・ランドクルーザー、ニッサン・GT―R22年モデルへの納入を開始した。GT―R22年モデルに装着されたタイヤは黒色デザイン技術(ナノブラック)を採用しており、より存在感のあるロゴに加えて空気抵抗の低減にも貢献を果たしている。また、「ファルケン」においてもアウディA3を筆頭に実績を積み重ね、グローバルで納入を拡大しつつある

【産業用品の展開について】
医療用精密ゴム部品では、海外での売り上げが対前年2ケタ増を見込んでいる。また制振ビジネスにおいては戸建て住宅用制震ダンパー「ミライエ」が2012年の発売以来、順調に棟数を伸ばしており、累計で6万6000棟を超える実績を上げている。ビル用制震ダンパー「グラスト」も国内外ともに順調で、台湾の大型再開発事業のほか、インドネシアの国立大学などで採用されている。海外における需要の取り込みは今後も積極的に展開していきたい。

【ESG経営への取り組みについて】
グループの全工場から排出されるCO2を2030年には2017年度比で50%削減し、2050年にはカーボンニュートラルを目指すことを昨年2月に宣言した。8月にはサステナビリティ長期方針を策定して公表しており、その中で〝チャレンジ目標テーマ〟を環境、社会、ガバナンスの3つの分類でそれぞれ設定している。事業を通じて社会課題の解決に貢献し、サステナブルな社会の実現を目指しており、調達、輸送、開発、製造・販売、使用に至るサプライチェーン全体を通して、タイヤ、スポーツ、産業品の各事業でCO2の削減、原材料のバイオマス化やリサイクル化、サステナブルな商品開発を進めていく。また、製造においても次世代エネルギーである水素を活用することを視野に入れており、実証実験に向けた取り組みをスタートさせた。

【ソリューションサービスの現状について】
これまで新出光と同社グループ会社のイデックスオート・ジャパンに加えて数10社と空気圧、温度管理サービスの実証実験を重ねてきたが、その結果さまざまな提供価値を確認し、サービスの向上を図ることが可能になった。提供価値としてはタイヤトラブルの未然防止、点検作業の効率化・工数削減、燃費の改善への貢献などで、トラブルの未然防止についてはタイヤに装着したTPMSから取得した空気圧情報をクラウドに蓄積、その推移をモニタリングすることによってスローパンクを早期発見できることが分かった。点検作業の効率化や工数削減の効果としては、デジタルツールの活用で一台当たりの点検時間を90%近く削減することができる。燃費の改善効果としては適正な空気圧の管理で転がり抵抗を抑制し、燃費の改善につなげていく。当社では顧客の車両保有台数、運行ルート、駐車場の立地状況など個別事情に合わせたサービスを提供するため、ハンディ式、運転者通知式、駐車時管理式、テレマティクス式といった4種類のサービスを用意している。そのうちツールを容易に取り付け可能な運転者通知式は、一般乗用車を対象に福岡県のタイヤセレクト2店舗でサービスの提供を開始した。事業者向けのサービスについては今年からの販売開始に向けて現在準備を進めている。

【今年の展望と方針を】
これまで推し進めてきた変革をしっかりと定着させて、さらなる成果へと結び付けていきたい。社会環境とお客様のニーズの変化に対応し、想定を上回る成果を出していくことを目指して3つの社長方針を掲げた。

第一の方針は「常にOur Philosophyを意識し、事業活動の中で実践しよう」と定めた。当社の企業理念体系「Our Philosophy」では、企業としての存在意義を〝未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。〟としている。全社員がOur Philosophyを意識し、一人ひとりの仕事において日々実践しながら正々堂々とした事業活動にまい進していきたい。

第二の方針は「中期計画の利益目標達成を目指し、グローバル体制の成果を最大化しよう」とした。生産面では、フル生産で高機能商品をより多く生産できる改善に取り組み、販売面では市場ニーズを的確にとらえ、商品開発にフィードバックすることで顧客満足度の向上につなげていく。

第三の方針は「社会課題への取り組みを加速し、持続可能な社会の実現に貢献しよう」とした。住友事業精神には〝住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない〟という考え方が基盤にある。社会課題の解決に着目した事業活動を全社で進めるためにサステナビリティ長期方針を策定したが、今年はその目標達成に向けたアクションをさらに加速させていきたい。