2022年1月5日

新春トップインタビュー
十川ゴム

企業努力重ね向上
設備や組織をコンパクト化

【2021年を振り返って】
一昨年に続いて、積極的な姿勢に打って出るムードが希薄な事業環境に置かれ、厳しい現状を切り抜ける努力に終始した一年だった。しかしながら一昨年とは違い、昨年はコロナ禍にさいなまされながらも、事業分野によっては回復の様相を見せた。今年度の上半期(4―9月)の売上高・収益ともに前年同期と比較して、同様の水準で伸長した。しかしながら、回復業種の旗頭であった自動車産業が、半導体不足や東南アジアからの部品調達によってつまずいたことで、思っていたほど反転攻勢に向けたムードは盛り上がらなかった。建設機械向けが好調に推移しているものの、多くの需要業種において回復速度は鈍く、現状ではコロナ禍前の19年度の売り上げ水準には届いていない。下半期においては、コロナ禍の第6波の到来という懸念材料も払しょくし切れず、原材料の高騰や供給不足といった事業環境にあって、通期の売上高は1ケタの伸びにとどまるものと予測している。収益面については、企業努力を重ねながら高めていきたいと考えているが、ガスや電気といったユーティリティコストの上昇などが利益圧迫要因として立ちはだかっており、見通しが難しい状況となっている。

今年は昨年よりは上向いて推移するものと見ているが、自動車メーカーが再び生産調整に入るなど、受注自体が狭窄状態に陥ってしまう局面では営業努力の打ち出しが難しい。ただし次年度(23年度3月期)には、何とか19年度レベルに戻す意気込みで事業の展開を進めている。これまでは自動車産業だけでなく、医療分野も落ち込んでいたが回復の兆候を見せている。建設機械向けは引き続き好調が続いているが、最近では原材料のひっ迫という懸念も持ち上がっており、原材料不足によって供給面に支障が出ないように厳格に管理している。

【中国市場については】
紹興十川橡胶については、型物や建設機械向けのホースアッセンブリー事業が前期の実績を上回っており、同社の21年12月期の売上高は前期比18%増の見込み。地産地消の施策で取り組んでいる生産品についても前期比30%程度の伸びを見せており、結果として中国国内での売上高比率は80%を占めている。ただし、今期については、今年がオリンピックイヤーという背景もあって、中国政府が新型コロナウイルス感染症の発生状況に対して非常に警戒心を抱いており、各地で頻繁にロックダウンが行われるようになっている。こうした状況から、前期は年間を通じて工場がフル操業を維持するなど、好調な状況にあった中国市場であっても、今年は現地需要に若干陰りが出てくる可能性もうかがえる。海運についてもコンテナ不足に伴う物流費高騰の問題が浮上しており、現地事業を取り巻く環境も決して楽観視できない。

【直面している課題について】
物流費の高騰がコロナ禍によって一段と進んでいるが、今は原材料費の高騰、供給不足という局面が最も深刻度を帯びている。原材料の高騰も厳しい課題には違いないが、一部の原材料メーカーにおいては、モノ不足という問題に加え、材料グレードの統廃合という意向を示しており、こうした状況に対して強い危機感を持っている。グレードの変更を余儀なくされることで、品質の維持という絶対条件を譲ることは許されない。原材料不足という市場論理に従って、価格高騰への歯止めも効かず、収益への圧迫の度合いは既にメーカーの努力の領域を超えてしまっている実情から、値上げという決断に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれた。顧客の理解が得られるよう誠実に説明し、検討を進めてもらっているが、窮余の策でもあり、ぜひともご理解願いたい。

人手不足も引き続き深刻な課題として残されており、業務の効率化に向けた取り組みへの重要性が増している。コロナ禍によってオンラインの常とう化が進んだが、対面方式とのハイブリッドで業務の効率化を図る。営業部門だけでなく、管理部門や生産部門でもオンライン会議を実施することで、移動に費やす時間を最小限に抑えることができ、人手不足という問題解消の一助としての効果を引き出す。BCPの観点からも利点があることから、この体制を継続することで定着させていきたい。

【今後の見通しと展望については】
22年は、さらに経営のかじ取りが難しくなってくると見ている。自動車産業においても、サプライチェーンや半導体不足といった問題の解消が復調の糸口となっているものの、それらが完全に克服される状況の見通しを立てるのは容易ではない。これからはカーボンニュートラルなどの対応に向けた新たな施策を立てることが事業者にとっての重要な責務となっており、当社としても生産品目や製造方法などを見直しながら進めていく。生産工程における、設備の更新や新たな設備投資を行う必要性が生じてくるが、全領域にわたっては不可能であることから、効果を見据えながら効率的に実践していく。設備や組織的にもシンプルかつコンパクト化を目指しており、試行錯誤を繰り返しながら施策を前に進める。コロナ禍前の水準に戻すためにも日々の努力を絶やさず、あらゆる局面から内容を見直し、一回りも二回りも成長させることで十川ゴムとして新たな進化へとつなげていきたい。