2022年1月15日

日本触媒
新規コーティング材料開発

ヒトコロナウイルスの不活化確認

日本触媒(五嶋祐治朗社長)と、大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻の宇山浩教授のグループは、さまざまな素材表面に抗菌および抗ウイルス効果を有するコーティング材料を共同で開発した。本コーティング材料はフタロシアニン金属錯体による抗菌抗ウイルス効果、酢酸セルロースによる接着機能を持ち、ヒトコロナウイルスを99・9%以上不活化。今後、衛生対策が必要な幅広い用途への利用が期待される。

日本触媒が2017年4月に大阪大学大学院工学研究科に設置した日本触媒協働研究所で新たに開発されたコーティング材料は、フタロシアニン金属錯体(4つのフタル酸イミドが窒素原子で架橋された構造を持つ環状化合物。これに金属イオンと錯形成したもの)および酢酸セルロースからなり、フタロシアニン金属錯体により抗菌および抗ウイルス効果、酢酸セルロースによって種々の材料への接着機能を発現する。

さまざまな細菌・真菌・ウイルスを不活化することが可能な一重項酸素を発生する光増感剤(自らが光を吸収して得たエネルギーを他の物質に渡すことで、反応や発光のプロセスを助ける役割を果たす物質)に着目し、既存の光増感剤を比較評価したところ、一重項酸素放出能およびその安定性の観点で、フタロシアニン金属錯体が最適であることを見いだした。さらに、日本触媒でこれまで培った赤外線カットフィルター用などの色素の設計技術を駆使してフタロシアニンの構造を最適化することで、酢酸セルロースへの分散性が高く、かつ長期間にわたり一重項酸素を生成可能なフタロシアニン金属錯体を新たに開発した。

酢酸セルロースは植物由来のセルロースを酢酸で修飾したポリマーで、当該ポリマー溶液を塗工し、乾燥することでガラスやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂)などの種々の素材表面に酢酸セルロース層を形成することが可能。

本開発品をコーティングしたPMMA(アクリル樹脂)板のヒトコロナウイルス(Human coronaⅴirus OC43)への抗ウイルス性能をISO21702に規定する試験方法で評価したところ、ヒトコロナウイルスの99・9%以上が不活化されたことを確認した。

日本触媒では「今後も日本触媒協働研究所において、大阪大学大学院工学研究科の最先端の学術的な知見や情報技術基盤と日本触媒の触媒、有機合成、高分子合成などの保有技術の融合を図り、さらにデータサイエンスを活用することで、革新技術の創出、事業創出、そして研究人材の育成を推進していく」としている。