2022年1月15日

新春トップインタビュー
住友理工

筋肉質な体質フルに生かし
反転攻勢をかける

【昨年を振り返って】
目まぐるしい市場環境の変化に直面し、情勢の変化への適切な対応が求められた一年であった。2022年3月期上期の業績については、第1四半期は自動車生産の復調に伴い売上高、利益面とも前年同期の実績を上回ったものの、第2四半期において半導体不足に起因する自動車減産の影響を受け、当社の自動車用部品の販売も伸び悩んだ。しかしながら産業用ホース製品など一般産業用品は引き続き好調に推移したことで、上期トータルでは前年同期比で増収となり、事業利益は前年同期と一転して黒字で折り返した。上期の決算は前年同期との比較で好転したとは言え、自動車の増産を見込んだ部材の購買コストや鋼材を中心とする原材料高騰は利益面に大きな影響を及ぼした。また、自動車分野においては販売価格への転嫁が後追いとなることも収益面の足かせとなった。下期がスタートしてからは自動車メーカーが抱える受注残を背景に、想定を超えるオーダーが入った場合の受け入れ体制のチェックを急いでいる。当初は今年3月までの需要を見通して作り込みを行っていたが、現在はより長期視点で、今後の自動車生産増加を視野に入れた人員の補強と生産現場の改善活動に取り組んでいる。需要環境を見渡すと今なお不透明感が漂っていることに違いはないが、内部的に果たすべき取り組みをしっかりとやり切った上で、来たる需要変動の波に備えたい。

【一般産業用品の現状と今後の体制づくりについて】
建設機械向けの高圧ホースは非常に好調で近年では国内における輸出量も増加している。また中国においては、ローカルメーカーの需要が拡大している。また、建機以外の産業機械での需要が取り込めていることも産業用ホース製品全体の底上げに一役買っている。一方、化成品関連ではテレワークの導入などでオフィスのプリンター部品の需要落ち込みが見られた。現在は、コロナ禍以前の水準には戻っていないものの、徐々に回復傾向がうかがえる。昨年、化成品事業は富士裾野製作所の生産機能の一部を住理工大分AEとタイ工場の2拠点に集約した。同製作所の自動車用防振ゴム事業についても小牧製作所、住理工九州、住理工山形の3拠点を中心に移管を進めている。そういった事業構造改革の効果は今後、本格的に現れてくると見込んでいる。生産や物流にかかわるコスト低減はもちろんだが、人材リソースや生産設備などの経営資源を適正配置していくことで一層の効率化を図っていきたい。

【中期経営ビジョン「2022V」の進ちょく状況について】
中計の数値目標に掲げる売上高5300億円については、2017年度の策定時点では2017~2022年にかけて世界の自動車生産台数が8000万台~1億台を超えていくという見通しに基づくものだった。当然ながら、コロナによる影響は想定していなかった。しかしながら、現在の自動車生産が伸び悩んでいる状況を鑑みると、定量目標としては今年の市場動向に見合った達成率にとどまるのではないかと見通している。ただ、今後の自動車の増産次第でさらに目標に近づくことを見据えている。これまで打ち立てた多くの施策と体制の効果も含めて、基本的には描いた軌道に乗っている。

【研究・開発体制について】
2020年に産業技術総合研究所と共同で「住友理工―産総研 先進高分子デバイス連携研究室」を設立した。昨年10月、共同研究において使用するテストコースの一部を改修し、新たに6種類の特殊路面を設置して車両の走行性能を詳細に評価する実験を行っている。各路面に凸凹や素材・表面形状の違いを施して振動・騒音・ハーシュネスなど乗り心地にかかわるポイントの計測・評価をしている。今後はセンシングデバイスを実装した車両の実験も行って次世代自動車の快適な車内空間の実現につなげていきたい。テストコースの一つでは(小牧本社・製作所が所在する)愛知県小牧市の市街地の路面も再現しており、これまでに取得したデータも活用できることで、より信頼性の高い研究結果が得られると考えている。産総研との新たな取り組みにおいて良かったことは研究施設だけではなく、その道の権威の知見をお借りできることだ。自動車分野はもちろん、一般産業向けの開発でも大きなメリットがあると期待を寄せている。

【注力する新製品は】
柔軟で通電性を有する独自のSR(スマートラバー)を活用した「ステアリングタッチセンサー」は日産のEV車への採用が決まっている。ゴムを使った部材としては非常に薄く、近年、普及が進むハンドルヒーターなどで重視される熱の電導率に優れていることも高い評価につながっている。そのほか薄膜高断熱材「ファインシュライト」も元来は自動車向けに開発された製品だが、高い断熱効果を発揮するため、フードデリバリーにおける保温用途やワクチンの配送・保管ボックスなどでも活用されている。直近では、あるアルミ部品製造会社がアルミを溶解する炉の外周に用いて熱の拡散を抑え、ガス使用量の削減を実現した事例もある。こういった取り組みはCO2排出の抑制に有効であり、施工上の手間も掛からないことから、カーボンニュートラルに取り組む製造現場での展開にも力を入れる。

【社内コミュニケーションの活性化について】
昨年11月から、個人のスマートフォンなどから各種情報を閲覧できるツールの第2弾としてWEB社内報「みつくみ2」をスタートさせた。タイトルの〝みつくみ〟は1958年から発行している社内報の愛称を受け継いでおり、当社で働くすべての人材が会社の情報を共有できることに主眼を置いている。双方向のコミュニケーションによって従業員同士や組織間の交流が活性化することに期待している。意見を交わし合いながら自社のビジョンへの理解が深まり、それぞれの業務の改善にもつながっていけば良いと思う。

【新年の抱負を】
昨年のスローガンは『過去の概念にとらわれずに、変化に柔軟に対応する風土づくり』と掲げた。まだまだ風土として発展途上の段階だと感じている。引き続きこれを今年の指標とし、企業風土として根付かせたい。この打ち出しの本義は、決して過去を否定するのではなく、時代の変遷に伴って新しい学識に基づいた判断と行動をしていこうという意味を込めている。この2年間はコロナ禍によるさまざまな影響を受けながらも、その間にやるべき内部固めに着手することができた。これまでつくり上げてきた筋肉質な体質をフルに生かして反転攻勢をかける年にしていきたい。