2022年1月25日

新春トップインタビュー
広島化成

高い目標掲げ努力
〝変化に挑戦、繋がる未来〟

【社長就任から約8カ月が経過しましたが】
社内での立ち位置が変わったことで、仕事への向き合い方にも変化が生じたが、何よりも世の中の変化の激しさが大きく感じ取れたことで、そのスピードへの対応の重要性を切実に認識した。SDGsへの対応や健康経営宣言に沿った取り組みは着実に推し進めており、IT化に向けたイノベーションも引き続き推進しているが、最近ではカーボンニュートラルなどといった企業としての新たな責務が増大しており、社会貢献に力を注ぐための体制づくりに一段と軸足を置いている。当社では、かねてより企業活動が環境に及ぼす影響を最小限に抑える国際的な環境標準規格であるISO14001の認証を取得しており、事業を通じた環境面への対応には早い時期から取り組んできたが、施策の一層の充実を図ることでさらに高い成果を引き出す。ISO14001については、これまでは組織を限定した部分的な認証であったが、全社的な取り組みへと領域の拡大を図り、SDGsを推進するツールとして活用していく。従来は事業部レベルで練っていた施策を管理部門にまで広げることで、一段と高い成果を引き出していきたい。企業としては事業を通じた利益の追求も重要な活動ではあるものの、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みも企業にとっての重要な責務と考えている。

【昨年を振り返って】
昨年はコロナ禍での事業環境にあって、想定外の局面に置かれたこともあり、不自由感にさいなまされた。当社が本社を置く広島県も、年明け早々に、政府によるまん延防止等重点措置の対象地区に指定されるなど、コロナ禍による脅威は現在も続いている。感染拡大も落ち着き、収束に向かっている気配をうかがわせていた昨年末辺りから、アフターコロナの到来を期待していたが、今の時点では、ウィズコロナを前提とした事業体制を組み立てていく必要があると考えている。健康経営において、従業員の健康を第一に考えた企業運営は絶対条件であり、従業員が健全に勤務をこなせてこそ、企業としての成長を望むことができる。従業員を第一に考えながら、環境対応にも力強く取り組むことで企業価値を高め、エクセレントカンパニーとしての存在感を発揮していきたい。

業績については、大きく落ち込んだ2020年度から比較的順調に回復し、2021年12月期の売上高は127億円強となった。上期においては厳しい環境が続いていたことから、シューズ事業がBtoBが主力であるだけに、流通面で苦戦を強いられた。その一方でECの売り上げが大きな伸びを見せており、ウェブ展開としてはクラウドファンディングといった新たな取り組みにもチャレンジした。シューズ事業については、販売方法の開拓を行いながらハウスブランドの充実を図る。昨年には厚生労働省が定める医療機器認証を取得し、医療用途で効果が得られる医療用商品の展開に対するお墨付きを得た。消費者などに対し、外反母趾への対応をうたったシューズの展開を行い、効能など、説得力のある商品を展開していく。化成品事業についてはコロナ禍による影響を大きく受けなかったことで売上高、収益ともに計画通りに推移した。工業用品事業は、主要需要先である自動車の生産調整の局面において影響を受けたほか、海外への渡航制限という状況もあって営業活動にも支障を来たした。当社では、自動車用のシーリング材でフランスのハッチンソン社との協業を行っており、合弁会社を設立して事業の拡大に向けて取り組んでいるが、直近においてはインドネシア市場における展開を強化していく。昨年においては、現地で新型車による新たな受注を受けるなど、自動車部品の需要が回復から成長基調に戻りつつあることから、敷地面積で1・5倍へと現地工場の拡張に踏み切った。2023年に稼働させる計画で、現地でも猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症による災禍を乗り越え、新たな市場展開に向けての準備にまい進している。

【サステナブルへの取り組みについて】
リサイクルについては長期スパンで取り組んでおり、これまではゴムのリサイクルをメインに行ってきたが、最近ではPVC製品やTPE製品にまで広げて取り組んでいる。製造工程で発生した本来であれば廃棄物として処理されていたものを、リサイクルすることによって製品として復活させる。廃棄物を出さない循環型社会の形成に貢献するとともに脱炭素にも力点を置き、エネルギーなどを見直すことで収益の向上にもつなげていきたい。カーボンニュートラルに向け、老朽化設備については環境目線で更新を進める。企業姿勢だけでなく、従業員一人ひとりの意識の持ち方が大きな要素を占めており、全員でSDGsに向けた認識を共有し、投資が必要な案件であってもサステナブルな取り組みを収益に結び付けることで、ビジネスチャンスとしてポジティブにとらえられるような社風を醸成していきたい。

【今後の課題と展望について】
モノづくりの根幹を成す原材料費の高騰が続いており、事業の先行きが見えてこない現実がある。海運費も上昇しており、当社のシューズ事業は全体の約8割をベトナムから輸入していることから深刻度は大きく、納期の不安定さも事業展開における大きな懸念材料となっている。コスト削減努力に懸命に取り組んでいるものの、努力で賄えない水準にまで達している場合は、価格に反映せざるを得ない。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対する対応にも引き続き迫られており、海外渡航や営業活動に対する制限が掛かった場合は、リモートを活用するなど臨機応変に粘り強く業務を推し進めていく。昨年のコロナ禍における業務活動の推進で得られた成果としては、コミュニケーション能力が磨かれ、会議や情報発信をウェブで行うなど、リモートにおけるノウハウも身に付いた。最近ではウェブ経由での引き合いも増えており、ウィズコロナのビジネススタイルの一環として掘り下げていく。業績面では2021年に幾分回復したが、引き続き外部環境においては、今年度何が起こるか分からない不透明さが増していく状況であるが、前期比113%の143億円の売り上げ計画を立てており、コロナ禍前の状態を取り戻すだけでなく、さらにその水準を上回るより高い目標を掲げて努力を続けている。さまざまな困難が待ち受けていると思うが、当社は自動車部品メーカーとしてはティア1(自動車メーカーに部品を直接納入する企業)の位置付けにあり、その誇りを持って工夫を重ねて乗り越えていく。当社ではかねてより〝変化への対応と基本の徹底〟という認識の下で本年度スローガンとしては〝変化に挑戦、繋がる未来〟を設定している。変化(コロナ)を乗り越え、DX、ITを採り入れながら全員で対応することによって将来の成長につなげる。企業真理である〝企業は人なり〟という言葉を常に意識の中に持ち続けながら、目標数値の達成に向けての努力についても絶やすことなく継続していく。