2022年2月15日

クラレ
新中計「PASSION2026」発表

期間中に取り組む3つの挑戦設定

クラレ(川原仁社長)は2月9日、オンラインで2022年から同社が創業100周年を迎える26年までの5カ年を実行期間とした中期経営計画「PASSION2026」を発表した。川原社長は「コロナ禍でやや閉じ気味となっていた思考と行動からの転換を図り、クラレグループの社員一人ひとりが〝情熱〟を持ち、思いを一つにしてビジョンの実現を目指す」と前置きした。同社ではありたい姿を示した長期ビジョン「Kuraray Vision2026」を描き、それに向けた中期経営計画を掲げているが、その第2ステージとしてPASSION2026を策定し、スタートさせた。新中計の遂行にあたっては長期ビジョンにふくらみを持たせ、幅広いステークホルダーに貢献していく姿勢を明確にする目的から、長期ビジョンに新たに〝顧客、社会、地球に貢献する〟のメッセージを導入。新たな要素を取り込み、顧客、社会、地球に貢献し、持続的に成長するスペシャリティ化学企業を目指す。

中計期間中に取り組む挑戦として3つの項目を設定。一つ目はサステナビリティを機会としてとらえ、グループ一丸となって推進する〝機会としてのサステナビリティ〟、二つ目は社内外を問わず、人間や技術同士をつなげることで、新たな成長ドライバーを生み出す〝ネットワーキングから始めるイノベーション〟、三つ目がデジタルでプロセスを変化させ、多様性で発想の幅を広げることによって人間と組織に変革をもたらす〝人と組織のトランスフォーメーション〟への挑戦としている。

最初の挑戦では、未来のサステナブルな社会の実現への寄与をコミットするため策定した「サステナビリティ長期ビジョン」の実現に向け26年までの「サステナビリティ中期計画」を策定。マテリアリティにおける進むべき方向性をPlanet、Product、Peopleという3つのPで定義し、地球環境の改善、持続可能な製品によるイノベーションの追求、働きやすい職場づくりによって社会の繁栄という結果に行き付く。ネットワーキングから始めるイノベーションについては社内外の有機的な連携によってイノベーションの創出を加速させ、社会的問題を解決。成長戦略、サステナビリティに貢献する開発を推進させる目的達成に向け、研究開発費として5年間で1500億円を投じる。この挑戦により5つのターゲット領域の社会的課題を解決し、自然環境と生活環境の向上に貢献する。人と組織のトランスフォーメーションに向けては、新たに「DXビジョン」を策定。デジタルを経営に取り込み、高い競争力で常に進化し世の中に貢献する。デジタルトランスフォーメーションを経営レベルで推進し、DXビジョンを実現するために今年1月にグローバルデジタルトランスフォーメーション推進室を新設。データを基に考えて意思決定を行っていくデータドリブン組織の実現と全社員のデジタルリテラシーを高めていく。

中計における定量目標としては前期(21年12月期)の売上高実績6294億円、営業利益723億円に対し、24年度の計画として売上高6800億円、営業利益800億円、計画到達時の目標値として売上高7500億円、営業利益1000億円を目指す。5年間の営業キャッシュフロー6000億円(プラス資金調達)に対して、設備投資額として3800億円を計画。温室効果ガス(GHG)排出削減投資として300億円を割り振っているが、27年以降の投資についても技術開発動向も踏まえ可能な限り前倒しして実施する。「M&Aの資金としては1000億円を想定。高機能プラスチック、歯科材料、炭素材料などの資源配分を重点的に行う事業周辺での事業拡大を検討していく」(川原社長)。

事業戦略別ではビニルアセテートについては、グローバルな供給体制の強化や顧客価値の拡大、収益拡大を図り、定量目標として26年度に売上高3500億円、営業利益770億円を計画。イソプレンについては、顧客価値の高いオンリーワン製品の販売拡大と新規開発推進により、売上高900億円、営業利益100億円を目指す。機能材料では社会・環境価値の高い製品・サービスを提供し、生活の質的向上に貢献することで売上高1750億円、営業利益180億円を目指す。繊維事業においては、独自原料・製法における高付加価値製品へのシフトにより収益力を強化。売上高650億円、営業利益70億円と設定。トレーディングについては独自製品や加工ビジネス拡大で高付加価値化を推進、定量目標として売上高700億円、営業利益60億円としている。