2022年2月15日

2022年3月期第3四半期決算説明会
JSR

累計実績は計画並み
対前年では高い伸び率達成

JSR(エリック・ジョンソンCEO)は1月31日、オンライン形式による「決算説明会」を開催した。当期までの累計実績は、ほぼ計画並みに進ちょく、対前年で高い伸び率を達成しており、売上収益は前年同期比14・7%増の2565億9400万円、コア営業利益は同45・0%増の422億8900万円、四半期利益は同430・0%増の353億7200万円となった。第3四半期単体のコア営業利益にはInpria Corporation(以下、インプリア社)の完全子会社化による評価益75億円を含んでいる。

同社のエラストマー事業をENEOSに譲渡することから、第1四半期連結会計期間より、エラストマー事業は非継続事業として分類されている。この結果、当第3四半期連結累計期間の表示形式に合わせ、前第3四半期連結累計期間の損益計算書および関連する四半期連結財務諸表注記については一部組み替えて表示されている。

セグメント別では、デジタルソリューション事業部門の売上収益は同9・9%増の1232億8900万円、コア営業利益は同36・2%増の363億3400万円。半導体材料は、好調な半導体市場を背景に販売を伸ばし、売り上げは同17%増、EUVレジストについてもほぼ倍増を達成した。前期比でも9%増となり、各製品とも順調に販売を伸ばしている。ディスプレイ材料は中国での拡販を進め、売上収益は前年同期の水準を上回った。コア営業利益は、半導体材料の売上収益の増加に伴う利益の増加およびインプリア社の株式の追加取得による再評価益により、前年同期を上回った。半導体材料需要は引き続き堅調を見込んでおり、来期に向けても市場を上回る成長を達成する。「インプリア社の統合作業を開始させており、今期の業績から一部シナジー効果を見込んでいる」(宮崎秀樹取締役常務執行役員)。コア営業利益における増減要因は、半導体材料の販売増ならびにディスプレイ材料の販売(構成差)により78億円、加えて半導体材料・ディスプレイ材料・エッジにおける固定費増による55億円の減益に見舞われたものの、インプリア社における評価益で75億円の増収要因があり、トータルで20億円のプラスとなった。製品別では、半導体分野でArF(液浸フッ化アルゴン)が同約5%増、多層材料が同約15%増、その他リソグラフィ材料が同約35%増、CMP(高性能LSI製造に必要な化学的機械的研磨)材料が同約10%、洗浄剤が同約15%増、実装材料が同約15%増。ディスプレイ分野については配向膜が同約5%増、絶縁膜が同約20%増、着色レジストが同約25%減、その他LCD(液晶ディスプレイ)材料が前年同期比ほぼ横ばいとなった。エッジコンピューティング分野については、耐熱透明樹脂「ARTON(アートン)」の売上高が同5%減で推移した。

ライフサイエンス事業部門の売上収益は同32・1%増の533億2000万円、コア営業利益は同30・4%増の38億4000万円。主にCDMO(バイオ医薬品の開発・製造受託)事業、CRO(医薬品の開発受託)事業およびバイオプロセス材料の販売拡大により売上収益は前年同期を上回った。コア営業利益は、成長投資による費用の増加はあったものの、売上収益の増加により増益となった。コア営業利益における売上収益の製品別状況はCDMOが同約25%減、CROが同約45%増、BPM(業務プロセスマネジメント)が同約150%増、IVD(体外診断薬)が同約20%増。コア営業収益についても、CDMOを除いて増益となった。

合成樹脂事業部門の売上収益は同28・4%増の706億6400万円、コア営業利益は同102・1%増の50億5000万円。昨年度低迷していた自動車生産の回復を背景に、販売数量を大きく伸ばしたことで、売上収益は前年同期を上回った。コア営業利益は、売上収益の増加に伴う利益の増加によって増益となった。コア営業利益における増減要因は、販売増によって15億円の増益、売買スプレッドの縮小による収益圧迫要因はあったものの、在庫受払差(変動費)によって解消されて2億円のプラス、子会社その他による8億円の収益が増益に貢献した。

本年4月1日のクロージングに向け、移管プロセスを進行させているエラストマー事業については、21年度第3四半期累計においては、タイヤ市場の回復により、SSBRが伸長、販売数量効果によって前年同期比で20%拡大している。コア営業利益(相当)についても、数量効果に加え、スプレッドの改善、コスト削減により増加傾向をたどっている。現時点では、非継続事業の当期利益見通しとしては、一旦ゼロで置いているが、22年度前半には、本年4月1日のエラストマー事業売却に伴う売却代金の収入が発生する見通し。

通期については、昨年11月に公表した業績予想からの変更はなく、売上収益を前期比11・1%増の3465億円、コア営業利益が同38・5%増の525億円、当期利益については355億円を見通している。