島津製作所
「LCMSー2050」国内で先行発売
小型LC―MS市場に参入
販売台数倍増目指す
島津製作所(上田輝久社長)は3月3日から、高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS―2050」を国内で先行発売している。〝使いやすさ〟〝基本性能の高さ〟〝コンパクトさ〟をすべて実現したシングル四重極液体クロマトグラフ質量分析計で、同社では新製品を通じて快適な分析環境と信頼性の高い分析結果を提供。希望販売価格は1035万円(税別)からで、液体クロマトグラフ質量分析計(LC―MS)を初めて扱うユーザーを幅広く獲得し、22年度に200台の販売目標を計画、販売台数倍増を目指す。
LC―MSは、製薬や化学、食品などの分野において研究開発・品質管理などにおいて使用。特にシングル四重極LC―MSは、製薬・化学分野での不純物の有無の判定、合成品の確認(定性分析)や、食品中の成分含有量の測定(定量分析)などに使われている。同社は1997年からシングル四重極LC―MSの市場に参入しているトップメーカーで、トリプル四重極LC―MSに比べて安価で使いやすいことから根強い需要があり、世界市場も年率5%以上で成長している。
近年「従来液体クロマトグラフ(LC)で行っていた分析をLC―MSでより正確・精密に行いたい」という需要からLC―MSの市場が拡大、ユーザーのすそ野が広がっている。しかしながら、LC―MSには〝LCに比べて分析前に設定すべき項目が多い〟〝高感度化と小型化の両立が難しく装置が大きくて設置場所を確保しにくい〟といった課題があった。
LCMS―2050は経験の浅いユーザーでも使いやすいよう、ユーザビリティにおいて高い評価を得ている同社の分析ソフトウェア「LabSolutions」による簡便な装置制御を採用、LCと同様の操作性を実現した。真空排気系やイオン光学系といった部品設計を見直したことによって、同社従来機と比較して装置の面積、高さとも抑えて、装置体積で従来比66%減の小型化に成功した。同社LC「Nexeraシリーズ」と同じ幅に設計されており、既設LCに増設する場合でも新たな増設スペースを不要にしている。従来機から起動時間を3倍以上高速化し、わずか6分での起動が可能。消費電力も43%削減するなど、ラボにかかるランニングコスト削減に貢献し、省スペース・省エネ・省力化により効率的なラボ運営を実現する。
一回の分析で出てくるLCによる分析結果とMSによる分析結果を自動的に重ね書きする機能「Mass―it」を新たに開発して搭載。機能としてはLC―MSによる分析経験の浅いユーザーが、MS分析データでしか表れない差異を見落とす危険性や、分析データを見比べる手間を低減し、質の高い分析結果の提供に貢献する。
また同社が培ってきた開発・製造技術により、広い質量範囲、高速の正負イオン化切り替えなど優れた基本性能を実現している。分析できる質量の範囲は2~2000と広範囲で、イオン化方法として、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)と大気圧化学イオン化法(APCI)の2種類の特長を併せ持つ加熱型DUIS(Dual Ion Source)を採用、幅広い性質の化合物を一度に分析できる。正負イオン化切り替え時間は、同社従来機であるシングル四重極LC―MS「LCMS―2020」でも業界トップクラスの15㍉秒(㍉秒=1000分の1秒)を実現していたが、10㍉秒とさらに高速化。正負イオン化切り替え時間の高速化に伴い、一定時間内に得られる情報量が多くなり、より正確で信頼性の高い分析データが入手できる。