2022年3月25日

【ホース・チューブ・継手特集】十川ゴム
コロナ禍以前に回復

新製品で高付加価値化推進

十川ゴムが手掛けるゴム・樹脂ホース事業における2022年3月期の業績見込みは、前期比2ケタ以上の増収となり、コロナ禍前の19年度の水準近くまで回復する見通しとなっている。

需要業界別では、自動車産業用は前年度の落ち込みが大きかった背景もあって、前期比で30%以上、油圧機器産業用においても20%以上の伸びとなっている。特に土木・建設機械産業用のうち、建機燃料用が中国市場の好調もあって50%以上、食品産業用はシリコーンブレードホースの好調などで20%以上、農業産業用は樹脂スプレーホースの伸びによって2ケタ増を果たすなど、好調に推移している。

ゴム・樹脂ホース市場を取り巻く事業課題としては、この数年間はガス産業用、設備装置産業用、一般機械産業用が低調に推移。汎用品のウエートが大きく、顕著な設備投資の動きが見えてこない状況に加え、半導体不足などの問題もあって、設備入荷自体に遅延が発生している。そうした状況から汎用ホース類の動きにも影響が出ている。しかしながら、国内の市況は着実に上向いており、同社としてはこうした製品分野においても、従来の技術を利用した新製品開発を積極的に推進。汎用品が主体の状況から、より付加価値の高い製品群へと転換を図る方向で事業展開を進めている。

現在もコロナ禍に見舞われている状況にあって、今後の展望として、同社ではウィズコロナにおける事業環境も視野に入れた業務体制を構築。リモートでもスムーズに仕事が進められるようハード面を整え、利用方法習得の推進やルール整備なども完了させた。社内外にかかわらず、リアルとリモートでの仕事の進め方の違いを十分に認識し、補てんする資料作成および新たなアプリの導入なども含めて機能的に推進。結果として時間の有効活用という効果も引き出され、今まで以上に活動の幅も広がった。一方、工場の稼働においてはリアルな人的活動が必須であることから、工場の操業が停止する事態が起こらないよう万全の体制を整えている。同社では「今日のわが社があるのは、長きにわたって支えて頂いたすべての関係者の方々のお陰であると感謝している。リモートでの面談環境においても〝三方よし〟の経営理念を忘れることなく、人づくりを大切にし、真の全員の幸福の実現に向けて今後とも努めていきたい」としている。

現在、深刻化の度合いを増している課題としては、世界的な各種原材料不足という事態があり、価格も右肩上がりに高騰。同社では原材料の安定調達に力を注ぎ、価格面についても自助努力を続けているが、自社での吸収が困難な状況に陥った品目については「大変申し訳ないことではあるが、高騰水準に応じてお客様に価格改定のお願いを進めている」という。しかしながら原材料の価格改定はこれまでに見られなかった高い改定率・頻度で行われている。加えて、通知後に即改定という商習慣に置かれているのが実情。加工メーカーにとっては、自社が打ち出した価格改定が実施されるまでの期間、その差額分を負担しなければならない厳しい状況に悩まされている。原材料メーカーや薬品メーカーなどによっては生産中止品目も数多く打ち出されており、こうした品目に関しては早急に代替材料の検討を開始。顧客に対しては、材料変更における承認申請作業を進める必要があり、手順が増えることによって一段と収益が圧迫されている。経済が復調している状況にありながらも、原材料価格高騰、原材料不足、原材料製造中止、ユーティリティコストのアップ、物流費高騰などといった課題が山積。モノづくりという業務を進めていく上で、大きな障害が数多く立ちはだかっているが、同社では顧客の生産に問題の出ないよう、社内全部門が協力し、素早い対応に努めている。

新製品の開発については、シリコーンブレードホースを主軸とした新規グレードの開発を推進。シリコーンゴム製品群の拡充や新規開発に向けて取り組んでいく方針で、新規設備導入も積極的に進めていく。他社との共同開発も進めており、ユーザーとの共同開発をはじめ、金属加工会社・樹脂製造会社・ゴム製造会社など協力会社との間で互いの得意分野における技術を供出し合い、共同開発を行うことによって作業の分担、開発の短期化、新規設備投資の抑制などの効果を生み出している。今後もこうした得意分野を持った会社との共同開発を推進し、他社から必要とされる基礎技術の熟成に努めていく。

今後のホース市場展望としては、自動車産業ではEV化が進んでおり、EVには燃料系配管が不要になることからゴムホース類の需要は減少傾向となる。一方で、EV開発に対しては巨大な開発予算が必要とされ、国内自動車メーカーでは各社ごとの開発ではなく、各部品の共有化を図ることによって部分的な共同開発を推進。開発コストの低減を目指す方針を示しており、同社としては、こうした各社共通の耐電・耐熱性能を持つゴム部品についての参入にも積極的に取り組む。世界的にカーボンニュートラルに向けた取り組みが推し進められているが、EV化の推進はその一端。脱炭素化に向けては水素エネルギーの活用が有望な手法として脚光を浴びており、水素を通した社会・生活への変化の度合いも視野に入れられている。そのため、内燃機関の進化に一層磨きをかける方向性も残されている。こうした流れから同社では、自動車産業に一段と大きな役割を果たす姿勢を保ちながら、新たな内燃機関に対応するホースの開発を推進している。自動車メーカーだけでなくガス事業者なども含めた動きに注目・協調しながら新たな開発に取り組んでいく。一方、建機関係ではバイオ燃料への移行はあるものの、当面は内燃機関の利用が続く見方もあることから、同社では建機関係についても引き続き注力していく。

同社では23年3月期におけるホース事業において、自動車産業の復調および新車種向けの受注増、建機燃料用については国内外ともに好調を維持する予測から、全体として2ケタの増加を見込んでいる。

各生産部門では自動車産業用、油圧機器産業用、土木・建設機械産業用、設備装置産業用に向けた増産体制を構築し、新規開発を進めており、これに伴う新たな設備投資を順次進めていく方針。