2022年4月15日

帝人フロンティア
ゴム補強用ポリエステルナノファイバー短繊維

高い補強性能実現
環境負荷低減にも貢献

帝人フロンティア(平田恭成社長)は、タイヤ、ホース、ベルトなどに使用される従来のゴム補強材よりも補強性能に優れ、環境負荷低減に貢献するゴム補強用ポリエステルナノファイバー短繊維を開発した。ゴム製品には、繰り返される変形と摩耗に耐える強度などが求められることから、補強効果を高めることを目的に短繊維をゴムの補強材として用いることが一般的。ゴム補強用短繊維の補強効果は、使用する繊維が持つ強度のほかに、長さによって補強効果が高まるとされており、一般的には数ミリ~数十ミリの長さにすることが求められている。しかしながら、繊維が長いほどゴムへの練り込み工程において絡みやもつれの発生頻度が高くなり、繊維の分散性が低下して補強効果が低減することが課題となっていた。

近年の環境配慮への高まりから、温室効果ガス排出削減を目的に、高分子量化や表面処理などの工程削減ニーズが急速に浮上。こうした状況にあって、同社では、ゴム補強用短繊維の断面をポリエステルナノファイバーとポリエチレンの2種類のポリマーを配した海島複合断面(2種類のポリマーを「海」部分と「島」部分に配置した複合断面)とすることで、少量の添加で、従来品と同等以上の補強効果を発現し、環境負荷低減を実現するゴム補強用のポリエステルナノファイバー短繊維を開発した。

今回、開発されたゴム補強用ポリエステルナノファイバーは、島部分に高い補強効果を発揮する直径400㌨㍍または700㌨㍍のポリエステルナノファイバーを配置し、海部分にはゴムと混ざりやすいポリエチレンを配置している。

ポリエチレンがゴムと分子レベルで混合することから、数千倍の本数のナノファイバーがゴムの中で均一に分散。従来品と比べて少量で同等以上の補強効果を発現する。

開発品の繊維の長さは1㍉㍍以下で、非常に短いものの、直径が非常に小さいことから長さと直径の比率であるアスペクト比(アスペクト比が大きければ大きいほど補強効果は高い)が高くなり、補強効果は増大。繊維の長さが短いことから絡みやもつれがなく、ゴムと繊維が均一に分散した複合体を形成することができる。これによって繊維が点状で分散したものではなく、線上や面上に連なる状態である連続相となり、ゴム部分ではなく繊維に応力がかかりやすくなることから優れた補強効果を引き出し、ゴム製品の高い耐久性を実現する。

従来品と比較して高い補強効果を発現することから、繊維の強度を高める高分子化工程を削減することが可能。繊維の長さを短くしたことで、繊維が綿状になる状態を防ぐ表面処理も不要となる。これらの製造プロセスの削減によって環境負荷低減や温室効果ガスの削減に貢献。タイヤの用途においては、高弾性化と転がり抵抗の低減に寄与することから、燃費向上や騒音低減の効果が期待できる。ホースやベルト用途においては、これまで困難であった高弾性率と優れた耐久性の両立が可能となる。

今回開発したゴム補強用短繊維の生産を来年より開始し、ゴム製品を展開する企業に向けて販売を進めていく。2027年度の売り上げとして10億円を目指す。

今後の展開としては、タイヤ、ホース、ベルトをはじめ、多種多様なゴム製品や樹脂製品を幅広く展開していくために、ナノファイバーに用いるポリマーの種類の拡充に向けた開発を推進。環境負荷の一層の低減を目指し、リサイクル原料を活用した製品の開発を進めていく。