2022年5月10日

住友ゴム工業
センシングコア技術の将来構想発表

実用化に向け新たな取り組み説明
デモ走行通じて実用性体感

住友ゴム工業(山本悟社長)は4月22日、茨城県東茨城郡の日本自動車研究所(JARI)城里テストセンターにおいて「センシングコア技術の将来構想発表会」を開催した。発表会では、同社独自のセンシングコア技術の実用化に向けた新たな取り組みや今後の機能拡張について説明、今後のビジネス構想についても解説した。当日は説明会に加えて見学会を実施し、デモ走行から得られる車両からのデータと、そのモニタリングの様子を見学することで実際の効果の一端を認識した。

発表会には山本社長、西口豪一取締役専務執行役員、大川直記取締役常務執行役員をはじめ、松井博司執行役員オートモーティブシステム事業部長らが出席。冒頭、あいさつに立った山本社長は「モビリティ社会を取り巻く環境はCASEやMaaSの発展により、大きな変革の時を迎えている。事故のない安心・安全の枠組みに守られた健全なモビリティ社会の実現が求められている一方、カーボンニュートラルなどといった環境面への取り組みが命題として一段と大きく取り上げられ、EVなどに向けた技術開発も大きなテーマとなっている。当社も初の市販用EVタイヤとして〝e.スポーツマックス〟を中国で4月から発売した。サイレントコア技術を搭載しており、当社史上最高レベルの低燃費(電費)性能を実現している。センシングコア技術は、先進の商品を提供するだけでなく、タイヤそのものの在り方を進化させるものであり、この技術によって未来のモビリティ社会の発展に貢献していきたい」と述べた。

引き続き松井執行役員が、センシングコア技術の将来展望について説明。センシングコア技術は、タイヤ開発で培ったタイヤの動的挙動に関する知見と、タイヤの回転により発生する車輪速信号を解析するデジタルフィルタリング技術を融合。タイヤの空気圧、摩耗状態、荷重や滑りやすさをはじめとする路面状態を検知する同社独自のセンシング技術で、現在は空気圧の低下を検知してドライバーにアラートする技術を実用化し、既に多くの車両に搭載。タイヤだけでなく路面状態も含めたデータがその車両の制御に活用されるとともに、クラウド経由で街、社会の情報に統合されビッグデータとして解析される。そのデータは車両にフィードバックされ、タイヤや路面に起因する危険を事前に察知し、回避することまで可能となり、タイヤそのものをセンサーとして利用することから、タイヤへの付加的なセンサーの追加を必要とすることなく、メンテナンスフリーという大きな利点も備えている。

同社では、既にセンシングコア技術の実装に向けて4本の矢を放っており、①タイヤ空気圧の検知によってCO2排出量可視化、タイヤ点検の自動化、パンクトラブル防止、燃費・電費性能向上を実現②タイヤ荷重の検知によって過積載・偏積載の防止、横転事故の防止に貢献③前方の滑りやすい路面を検知して警告④タイヤ摩耗の検知によってタイヤ点検の自動化を促し、タイヤメンテナンス時期管理、タイヤライフ向上、リトレッド促進の効果も引き出す。第5の矢として、車輪脱落予兆検知の技術開発にも着手。第6、第7の矢も拡張機能として構想が進んでおり、高性能車・スポーツカー、CASEへの対応、タイヤ損傷の把握(重いEVへ対応)などを視野に入れている。

センシングコアによるビジネス構想としては車載OSを搭載した次世代EV車を中心に、国内自動車メーカー、中国系新興EVメーカー、欧米系自動車メーカーをターゲットに開発とライセンス販売を実施。加えて欧米系自動車メーカーや国内自動車メーカーをターゲットに、自動車メーカーのクラウドにインストールする形によるライセンス販売も行う。EVタイヤ、サイレントコア対応IMSと併せて、CASEに対応する技術として開発と販売を進めていく。

タイヤ検知システムについて同社では「2024年には実用化し、メーカーに提案していきたい。将来的にはEV対応のトップシェアを目指しており、30年には100億円規模の事業にまで育てる目標を立てている」(松井執行役員)。センシングコア技術は、ソフトがインストールされ、OSによって制御されるEVにおいて強みを発揮。タイヤに導入されたセンシング技術と相まって、自動運転の実用化の段階で大きな役割を担う。「滑りやすい路面ではスピードを落とし、空気圧を監視してパンクを検知すると安全に停車させるセンシングコア技術による恩恵は大きく、交通事故のない安全なモビリティ社会の実現の一翼を担う」(同)。今後の展開として、23年以降に摩耗管理サービス、25年以降にはさまざまな協業先とも連携した循環型トータルソリューションの提供を目指す。

センシングビジネスは、既に中国市場で話が進んでおり、同社では欧州など世界各地にタイヤを納めている実績からグローバルに展開。EV化は中国市場が一歩先んじていることから、同社では専門部署を組織して取り組み、まずは中国市場において足場を固める。「センシングコア事業はソリューションビジネスが中核にあり、今後の自動車やサービスの進化、ユーザーニーズにも的確に対応していく。あらゆる要求に対してさまざまな角度で対応できることから、可能性はまだまだ広がっており、自動車メーカー、関連企業、インフラ設備分野などとリンクしながら、社会に役立てられるように進化させていく」(同)。

技術説明に続き、会場を移してセンシングコア技術の体験会を実施。センシングコア搭載車両が走行する様子をモニターを通じて見学(写真)、滑りやすい路面を検知する状況を観察し、センシングコアが検知した情報が後続車のモニターに映し出され、後続車が路面を警戒して走行するまでの一連の流れを映像解説した。そのほか、タイヤ点検の自動化、CO2排出量の可視化、車輪脱落予兆検知についての様子も画面を通じて紹介された。参加者は新たに発表された取り組みや機能について実際にセンシングコアが路面の検知を行う様子を試走によって感じ取った。