2022年5月15日

2022年3月期「決算説明会」を開催
日本触媒

利益すべてV字回復
減損解消や販売増で黒字化

日本触媒(五嶋祐治朗社長)は5月12日、大阪市中央区の大阪朝日生命会館において「決算発表記者会見」を開催した。それによると売上収益は前期比35・2%増の3692億9300万円となり、大きく増収した。収益面は、前期の全項目で損失となった状況からV字回復。黒字化を果たした。営業利益については、前期に比べて449億8200万円増の290億6200万円、税引前利益は、同466億100万円増の336億7500万円、当期利益は同346億1900万円増の237億2000万円となった。売上収益は、原料価格の上昇や製品海外市況の上昇に伴う販売価格の上昇と販売数量増加により増収。前年度に計上したニッポンショクバイ・ヨーロッパ(以下、NSE)の固定資産に対する減損損失119億300万円およびシラスに関するのれんおよび技術関連資産などに対する減損損失92億8200万円、三洋化成工業との経営統合の中止に伴う関連費用17億円がなくなったことにより、利益面の額面の伸び幅が拡大した。

営業利益における増減要因は減損解消により212億円、統合関連で17億円、スプレッドで112億円、販売数量の伸びによって105億円、加工費の削減75億円(うち在庫評価差79億円)のプラス要因があり、販管費増による70億円のほか収益費用1億円のマイナス要因を大きくしのいだ。前期の好調な業績を反映して1株当たりの配当額も前期比90円増の180円に倍増、過去最高に並ぶ配当を予定している。

セグメント別では、基礎化学品事業の売上収益は前期比44・1%増の1588億9600万円。営業利益は同364・0%増の210億4200万円。アクリル酸およびアクリル酸エステルは、原料価格の上昇や製品海外市況の上昇などにより販売価格が上昇、販売数量も増加したことにより増収。酸化エチレンは、原料価格の上昇により販売価格が上昇したことや、販売数量が増加したことで売上収益を伸ばした。エチレングリコールは、販売数量が減少したものの、製品海外市況の上昇による販売価格の上昇などによって増収。セカンダリーアルコールエトキシレートは、販売数量の増加や、原料価格の上昇などによって販売価格が上昇したことにより売上収益を伸ばした。利益面は、製品海外市況の上昇によるスプレッドの拡大、生産・販売数量の増加、原料価格上昇による在庫評価差額の影響などが増益要因となった。

機能性化学品事業の売上収益は同28・8%増の2000億400万円。営業利益は、前期に比べて277億8800万円増の86億6900万円。高吸水性樹脂は、原料価格や製品海外市況の上昇に伴って販売価格が上昇、販売数量も増加したことなどにより増収となった。特殊エステルは、製品海外市況の上昇などに伴い販売価格が上昇、販売数量の増加もあって売上収益が伸びた。コンクリート混和剤用ポリマー、洗剤原料などの水溶性ポリマー、エチレンイミン誘導品および塗料用樹脂は、販売数量が増加したことなどにより増収。無水マレイン酸は、原料価格の上昇などに伴い販売価格が上昇したことにより売上収益が伸びた。ヨウ素化合物は、製品販売構成や販売数量が増加したことにより増収。樹脂改質剤、電子情報材料および粘着加工品は、販売数量が減少したことで伸び悩んだ。利益面については、海上輸送費の高騰などにより販売費および一般管理費が増加したものの、生産・販売数量の増加や、原料価格上昇による在庫評価差額の影響などが増益要因となった。

環境・触媒事業の売上収益は同36・2%増の103億9300万円、営業利益は9億4100万円の損失(前期は2億300万円の利益)となった。プロセス触媒、脱硝触媒および燃料電池材料は、販売数量が増加したことによって増収。リチウム電池材料は、販売価格が下落したものの販売数量が増加したことにより売上収益が伸びた。湿式酸化触媒は、販売数量が減少したことで伸び悩んだ。利益面は、在庫評価差額の影響や、販売費および一般管理費の増加などが減益要因となった。

今期については、売上収益を前期比20・5%増の4450億円、営業利益は同31・2%減の200億円、税引前利益は同31・7%減の230億円、当期利益は同34・7%減の155億円を見込んでいる。売上収益は、原料価格の上昇による販売価格の上昇、販売数量増加により増収。利益面については、スプレッド拡大や販売生産数量の増加が見込まれるものの、海上輸送費の高騰などによる販売費や一般管理費の増加、在庫評価差額などの加工費の増加により前期実績を下回るものとみている。同社では「今期(23年3月期)を各分野における基盤づくりの年として定めており、変革に向けたさまざまな取り組みをスタートさせる」(五嶋社長)。今期より外部発表セグメントも変更。新セグメント「マテリアルズ(アクリル酸、アクリル酸エステル、高吸水性樹脂、酸化エチレン、エチレングリコール、特殊エステル、プロセス触媒等)」「ソリューションズ(電子情報材料、セカンダリーアルコールエトキシレート、粘接着剤・塗料用樹脂、脱硝触媒、ダイオキシン類分解触媒、燃料電池材料等)」における前期の実績は、マテリアルズの売上収益は2629億円、営業利益は209億円。今期はマテリアルズの売上収益を前期比21・7%増の3200億円、営業利益118億円、ソリューションズの売上収益を同17・5%増の1250億円、営業利益77億円を見込んでいる。