2022年6月5日

バルカー
新中計「NF2023」発表

新たな価値創造力の獲得を図る

バルカー(本坊吉博社長)は5月26日、決算説明会に合わせて2023年3月期と24年3月期を実行期間とした新中期経営計画「New Frontier 2023(NF2023)」を発表した。過去最高の連結業績を記録し、利益目標値を1期前倒しで達成した前期実績を踏まえてNF2022を一段と深化、創業100周年を迎える27年3月期の長期経営目標を確実に達成させるために見直した。新中計では既存事業の強化と、新たな価値創造力の獲得を図る。

今期(23年3月期)を最終年度として進めてきた前中計NF2022では、売上高550億円、営業利益55億円、純利益37億円、営業利益率10・0%、ROE10・0%以上を定量目標として設定。当日、決算説明会が行われた前期(22年3月期、詳報5面)実績で売上高以外の数値が目標値を上回ったことから内容をアップデートさせた新中計を策定、新たなステージへと移行した。数値だけでなく主要戦略も順調に進ちょく、製品競争力の向上、供給能力の拡大による先端産業市場向け戦略製品の強化、戦略製品への経営資源集中、組織のスリム化による機能樹脂製品事業の構造改革の推進、国内外販売体制の見直し、新生産技術の導入といった施策を計画通りに進めている。

前中計の〝計画ステージ〟に対して、NF2023では〝整備・投資ステージ〟として設定。以降のステージで拡大・回収ステージに入り、着地期である27年3月期に仕上げを行う。仕上げの長期経営目標として売上高800億円、ROE15%以上を設定している。

整備・投資ステージであるNF2023では、将来の持続的な利益成長に向けて大胆な投資を実行し、新たな価値を創造し続ける企業を目指す。2カ年における投資額として総額150億円を計画、M&A投資枠として80億円程度を見積もっている。具体的には大胆なM&Aや業務提携の加速による新素材・新市場・新事業への参入を実施、地政学リスクの増大に対応したサプライチェーン改革を断行、継続的な顧客価値を生み出すAI/ITソリューションの事業確立を目指す。新たなビジネス領域へ展開するための研究開発と人材育成を加速、既存事業を一段と強化するための設備投資の増強と販売チャネルの拡充を図る。

先端産業市場における業容拡大によって同市場での売上高を22年3月期の223億円に対して24年3月期には310億円に拡大。施策としては、高機能シール製品の生・販・技の機能強化を目指し、製造面では生産拠点の能力向上(国内・韓国)、販売面では人員の増強(国内・米国)、拠点の新設(米国)、技術面においてはR&D拠点の能力拡充を図る(米国)。ふっ素樹脂特殊タンク製品の拡充に向けては供給能力の再増強に加え、寿命診断・メンテナンスサービスを拡充する。H(ハード)&S(サービス)事業および新事業の売上高を22年3月期の2億円に対して、24年3月期には10億円以上に引き上げる。ウェブプラットフォームによる製品の販売などにより、限界コストゼロによる顧客層の拡大、AIソリューションの展開によるH&S案件の事業化に取り組む。AIベンチャー企業であるRidge―ⅰとの資本業務提携を起点とした開発の加速(バルカーの知見とAIとの融合)など、AIソリューションの展開によるH&S案件の事業化を推進する。

NF2023の定量目標としては24年3月期の売上高を700億円、営業利益75億円、純利益50億円、営業利益率10・7%、ROE12・0%に設定。営業利益における変動要因として計画の初年度である23年3月期までは、既存事業の拡大による利益増で13億円、マイナス要因として原材料価格変動による影響で7億円、DX含むR&D体制の拡充およびCXの推進費用で9億円、既存事業の収益性改善策の実行費用で1億7200万円の減益要因を想定しており、トータルでの営業利益目標65億円。最終年度である2年目の24年3月期では、この時点から既存事業の拡大による利益増で7億円、M&A案件等による利益貢献で8億円の増益を想定、マイナス要因として、DX含むR&D体制の拡充およびCXの推進費用で2億円、先端産業市場向けの人員増強の費用で2億円、既存事業の収益性改善策の実行費用で1億円の減益要因を想定しており、営業利益75億円の定量目標に到達する。

セグメント別では24年3月期でシール製品事業の売上高427億円、セグメント利益60億円、機能樹脂製品事業の売上高168億円、セグメント利益14億円、SWR事業他の売上高105億円、セグメント利益1億円。市場別では先端産業市場の売上高310億円、機器市場の売上高228億円、プラント市場で158億円。地域別においては、国内の売上高469億円、海外231億円、海外売上高比率を33・0%としている。