アシックス
新技術用いた新製品を発表
知的技術、3Dプリント技術活用
アシックス(廣田康人社長)は7月19日、東京都江東区のアシックスジャパン東京本社において、「新技術を用いた新製品説明会」を、配信とのハイブリッドのスタイルで開催した。新製品は、アシックススポーツ工学研究所がこれまで培ってきた知的技術と、3Dプリンタによる新たな製造方法を融合して開発。競技やトレーニング後の身体をリラックスさせるなど、次のパフォーマンスへの準備に適したアイテムとなっている。同社では、第18回世界陸上競技選手権大会の会場であるオレゴンにおいて、開会日の翌日である現地時間の16日、競技場に隣接した同社の活動拠点「ASICS HALL(アシックスホール)」で、メディアイベントを実施。国内においても現地のイベント映像とともに、同社のアフターパフォーマンス領域への取り組みや、同社のモノづくりの一つでもあるパーソナライゼーションの考えに基づいた最新の研究開発の成果、最新技術情報を新製品とともに発信した。
今回発表された新製品の「ACTIBREEZE 3D SANDAL(アクティブリーズ スリーディ サンダル)」はパラメータを設定して数値を変えることで、膨大なデザインのバリエーションを生み出すことができる設計手法〝パラメトリックデザイン手法〟ならびにLuxcreo(ラックスクレオ)社が持つ、弾性に優れた素材の3Dプリント技術を採用。先進的な構造となっており、立体的で厚みのある格子構造を重ね合わせることで、優れた通気性と柔らかさを持たせながら、部位に応じて硬さを変えるなど、足の負担軽減を図る機能性が追求されている。複数のサンダルやシューズにおける温湿度の比較試験においても、アクティブリーズ3Dサンダルは足裏の湿度と温度をとても低く保つことができるという通気性に優れた結果が出ている。靴底の横幅を広くしていることで、安定性も兼ね備えるなど、競技やトレーニング後のアスリートの快適な履き心地や歩きやすさにこだわって開発された。素材は合成樹脂。
このサンダルは同大会において、高橋英輝選手やスペインのモハメド・カティル選手などが着用した。数量限定で7月20日からアシックスオンラインストアで発売されており、カラーはブラック×ブラックで、サイズ(目安サイズ)はS(23・5~25・0㌢)、M(25・5~26・5㌢)、L(27・0~28・0㌢)、XL(28・5~30・0㌢)、メーカー希望小売価格は9900円。
オレゴンのイベント会場において、英語であいさつを行った廣田社長のメッセージが映像で紹介され「アクティブリーズ3Dサンダルの展開は、サスティナブルな製造方法およびそれに向けたサプライチェーンの再構築にとってとても重要な一歩となる。3Dスキャニング、3Dプリンティング、デジタル3Dデザイン管理システムを導入し、将来的には長距離輸送と在庫管理の必要性をなくしていく。これらのテクノロジーを使いこなすことで、利用者の目の前で、その場で商品を〝出力〟できるようになる。このキオスク型の〝スマート・ファクトリー〟と呼ぶべき製造ステーションを、世界中の店舗に組み込むために現在、研究開発を進めている。真のサスティナビリティを達成するためにも、来年も新しい発表をしていく予定を立てており、このサンダルも重要な節目であると考えている。
最後にワールドアスレチックスのパートナーとして、2025年の世界陸上で皆さんを東京でお迎えできることを楽しみにしている」と述べている様子が映し出された。
同社のパフォーマンスランニングフットウエア統括部プロダクトマネジメント部のAJアンドラーシ部長は「スポーツ用シューズの進化は、競技やトレーニングの際にアスリートが着用するものだけにとどまらない。アクティブリーズ3Dサンダルはそんなわれわれの考えを具現化した製品であり、今後もアスリートのレース後の回復や心身の健康をさらに増進させる製品、サービス、環境を提供することでアフターパフォーマンス領域の拡大を図るなど、広い視野で人々の心と身体の健康を実現する」と、開発における今後の展望を強調。アシックススポーツ工学研究所の主任研究員を務める波多野元貴氏は「このサンダルは、従来のものとは異なる性能や履き心地を提供する。開発においてはデジタル設計と3Dプリントの利点を生かし、高速に数多くのバリエーションを試作するなど、これまでと異なる新たな取り組みに挑戦した。また、数式とパラメータの制御により、形状を自由に変化させて複雑な三次元構造を設計するパラメトリックデザインという手法を用いている。その結果、通気性と弾力性を兼ね備え、適度な柔らかさと安定性を持つ先進的なサンダルが完成した。この設計や製造手法の確立は、着用する一人ひとりの足形データやニーズなどに合わせてシューズの形状などをパーソナライズ化するという、アシックスが掲げる未来の実現にも近づいたと考えている」と、技術の先進性とその効果についてコメントしている。