2022年8月5日

三洋化成工業
絶縁性ウレタン放熱ギャップフィラー開発

高い熱伝導性と流動性を両立

三洋化成工業(樋口章憲社長)は、高い熱伝導性と流動性を両立した熱伝導性材料(サーマル・インターフェース・マテリアル、以下、TIM)として絶縁性ウレタン放熱ギャップフィラーを開発した。今回の新製品は二液混合によって室温で硬化するウレタン系の熱伝導性材料で、微細な凹凸表面にも追従し、効率良く熱を伝えることができることから小型化、高性能化、高機能化が進む電子機器の熱対策に貢献する。

電子機器に使用されている半導体やコンデンサーなどの電子部品は熱に弱いことから、電子機器の誤作動や損傷を防ぎ、品質や信頼性を向上させるために熱対策は非常に重要。その対策の一つとして、TIMを発熱体である電子部品とヒートシンクの間に挿入し、効率良く熱を伝えて放熱させている。近年、電子部品の高性能化、高機能化に伴い、デバイスから発生する熱量は増加。一方で、電子部品の小型化、高密度実装が進み、放熱面積や放熱経路が縮小するなど、冷却条件は厳しくなっている。このため、従来の方策では対応しきれないケースが増えてきており、これまで以上に高度な熱対策が求められている。

TIMにはシートやグリースのほか、硬化型の放熱ギャップフィラーがあり、中でも自動実装の導入が容易で、近年では自由な設計を可能にする放熱ギャップフィラーの需要が拡大。通常、放熱ギャップフィラー中の熱伝導性フィラーの量を多くするにつれて熱伝導性が高くなる一方、粘度が高くなり、流動性が悪くなるという課題があった。粘度が高くなることで取り扱いが難しくなるだけでなく、表面の凹凸に追従できないことから、放熱効率が低下。高熱伝導性と高流動性(低粘度)の両立が求められていた。

同社では、独自の界面制御技術と長年培ったウレタン樹脂物性の制御技術を組み合わせ、これらを両立。独自の特徴を備えた放熱ギャップフィラーを設計・開発した。独自の界面制御技術によって熱伝導フィラーを高濃度に含有していることから、高い熱伝導率を発揮。硬化前に基板表面の微細な凹凸に追従して空隙をなくし、電子部品といった発熱体から発生する熱を効率良くヒートシンクへ伝えることができるため高い放熱特性を実現した。ハンドリング性に優れ、放熱材料実装の自動化に対応することが可能で、生産の効率化に貢献。圧縮時に電子部品とヒートシンクのたわみを軽減することによって低粘度で高い流動性が備わっている。

二液室温硬化タイプであることから、硬化前はペースト状で任意の厚みに塗布が可能。加熱を嫌う用途にも使用でき、硬化によるポンプアウトも生じない。非シリコーン設計のため、低分子シロキサンによる導通不良などといった懸念が払しょくされ、さまざまな電子機器に応用が可能。振動ではがれることがなく、車載用途などに適用が可能で、ビス止め不要なことから工数削減につながる。基材への密着性が高く、絶縁性が求められる電子部品にも適用可能となっている。

同社のコア技術である”界面制御技術術”と”ウレタン樹脂物性制御技術”を生かして、高い熱伝導性と流動性(低粘度)の両立に成功。今回の新製品は基板表面の微細な凹凸への追従性が高く、効率良く熱を伝えるため、同程度の熱伝導率を備えた放熱シートとの比較でも、放熱効果が高いことが実証されている。

今後、さまざまな分野でIoT化が進む状況にあって車載、電源・エネルギー、通信モジュールといったさまざまな電子機器の小型化、高性能化、高機能化が進展。熱対策に対する要求性能もますます高まっていることから、同社ではこれらのニーズにこたえるソリューションとして、ウレタン放熱ギャップフィラーの実用化を目指すとともに、長年培った界面制御技術やウレタン設計技術を生かして、今後もさまざまなニーズに合わせた製品を開発していく。