2022年9月15日

住友ゴム工業
電池用「硫黄」の可視化に成功

世界初の高精度計測技術
タイヤ研究にも応用

住友ゴム工業(山本悟社長)は、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの高橋幸生教授、理化学研究所(五神真理事長)、高輝度光科学研究センターの為則雄祐室長らと共同で、世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設であるSPring―8(兵庫県佐用郡佐用町)を活用して、物質の構造と化学結合状態をナノレベルで計測可能な技術(テンダーX線ナノスコープ)を世界で初めて確立し、リチウム硫黄電池材料に用いる硫黄化合物の可視化に成功した。この技術を応用することによって、現在開発が進められているリチウム硫黄電池での反応・劣化メカニズム解明による性能向上が期待できるとしている。将来的にはタイヤ研究にも応用することで、より高性能なタイヤの開発につなげていく。

住友ゴム工業は、従来からタイヤの基本性能および性能持続性に大きく関与する硫黄について研究を行ってきた。タイヤ研究で培った知見は他の分野にも応用されており、硫黄においては2011年から産業技術総合研究所(石村和彦理事長)と共同で、リチウム硫黄電池に関する開発を進めてきた。

リチウム硫黄電池は、リチウムイオン電池の6~7倍の理論容量が期待でき、軽量かつ安全性に優れているものの、充放電のサイクル寿命が課題となっている。サイクル寿命を向上させるためには硫黄化合物を高精度で計測する必要がある。そこで本研究グループは、X線の波がそろっているテンダーX線を利用できるSPring―8を活用することで、テンダーX線ナノスコープを初めて確立。この計測技術により、硫黄化合物をナノレベルで可視化することに成功した。

今後、本計測技術を24年から運用開始予定である次世代放射光施設のNanoTerasu(ナノテラス)でも活用し、リチウム硫黄電池の動作環境下での計測および材料開発の早期実用化に取り組んでいく。また、タイヤ研究においてゴムと硫黄が結合した架橋構造のさらなる分析への応用が期待できることから、住友ゴム工業が掲げるタイヤ開発および周辺サービス展開のコンセプト「SMART TYRE CONCEPT」の主要技術の一つである「性能持続技術」の開発につなげていく。

なお、本研究成果は8月11日付け(現地時間)でアメリカ化学会の学術誌である「The Journal of Physical Chemistry C」に掲載されている(公開URLhttps://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpcc.2c02795)。