2022年11月5日

ブリヂストン
救急車・指揮車用パンク対応タイヤ研究開発

パンクしても走行可能

ブリヂストン(石橋秀一Global CEO)は、総務省消防庁消防大学校消防研究センター(所在地・東京都調布市、鈴木康幸所長、以下、消防研究センター)とともに、パンクしても走行を続けることができる「救急車・指揮車用パンク対応タイヤ」を共同で研究開発し、実証実験を踏まえて社会実装可能な技術であることを確認した。今回の共同研究は、全国消防長会から「平成28年熊本地震に関する緊急要望」を受け、救急車消防研究センターが共同研究先を公募、ブリヂストンが採択された。共同研究期間は、2020年3月~本年9月。

これまでの救急車や指揮車(以下、救急車等)のタイヤは、災害時などにおいて荒れた路面を走行してパンクした場合、タイヤがつぶれて走行を続けることができなかった。今回、研究開発を行った「パンク対応タイヤ」は、ブリヂストンが保有する、タイヤのサイド部分を補強することなどによって空気圧がゼロになっても所定のスピードで一定距離の走行を可能とする技術(以下、ランフラットテクノロジー)を、救急車等用に応用することで、パンク後でも一定程度の走行を続けることが可能となる。

ランフラットテクノロジーを採用したタイヤは、これまで主に乗用車向けの偏平率が低いタイヤ(偏平率40、50など)で実用化。しかしながら、車両重量が重い救急車等に使用される偏平率が高いタイヤ(偏平率80)に既存のランフラットテクノロジーをそのまま採用するだけでは、タイヤがパンクした状態のたわみが大きく、走行時のタイヤの温度が高温となることからタイヤが破壊されて走行が困難となる。

そこで、救急車等がパンクした場合でも傷病者を病院にまで搬送することができる範囲、タイヤ交換を行うことができる場所まで走行が可能である条件を考慮し、時速40㌔㍍、走行距離50㌔㍍を必要性能として設定。その上で、最新のサイド補強ゴム技術やタイヤサイド部の冷却技術を採用し、タイヤ形状やパターン、部材配置などの最適化を図ることによって、パンクしても走行を続けることができる救急車・指揮車用パンク対応タイヤを開発した。

今回採用した最新のサイド補強ゴムは、パンク走行時の発熱を抑制し、高温でも壊れにくい特性を保有。従来の補強ゴムと比較してパンク走行時の耐久性を維持したまま、補強ゴムを薄くすることが可能となる。パンク走行時の荷重を支える目的から、硬い特性を備えた補強ゴムを薄くすることができ、通常走行時の温度域では軟らかい特性を備えていることから、通常走行時の乗り心地も向上している。

タイヤのサイド部の冷却技術として、表面に特殊な形状の突起を設けることで、空気の乱流を促進してタイヤを冷却する技術〝クーリングフィン〟を採用。突起の形状を最適化した最新のクーリングフィンを搭載することによって、より効率的にタイヤを冷却することが可能となり、パンク走行時のサイド部の温度上昇を抑制、耐久性の向上を実現している。

テストコースにおいて、このタイヤの走行性能を確認。北は北海道から南は沖縄まで計5カ所の消防本部において、積雪、凍結、台風時といったさまざまな路面状況や、都市部と山間地における異なる運行状況における実際の救急活動で実証実験を行い、パンク対応タイヤへの評価を実施(全国5カ所の消防本部の救急車・指揮車、計21台において実施。総走行距離25万㌔㍍)、十分に社会実装可能な技術であることを確認した。

今後、同技術は災害現場対応の救急車等のタイヤに活用されることが期待されている。