2022年11月5日

日本ゼオン
2023年3月期第2四半期決算説明会

四半期売上高は過去最高を更新

日本ゼオン(田中公章社長)は10月31日、オンラインで「2023年3月期第2四半期決算説明会」を行った。会見には取締役常務執行役員の松浦一慶基盤事業本部長、曽根芳之管理本部長、取締役執行役員の小西裕一郎高機能事業本部長が出席。説明後は、質疑応答の時間も設けられた。

それによると当期の売上高は前年同期比10・2%増の1974億1700万円、営業利益は同19・1%減の201億8400万円、経常利益は同8・2%減の244億円、四半期純利益は同5・3%減の174億1900万円となり、増収減益となった。当期および当四半期(7―9月、998億円)の売上高は過去最高を更新したものの、原料価格の影響や、海上運賃上昇などといった要因が収益を圧迫した。「上期予想に対して、中国におけるロックダウンなど、想定外の事態が生じたことで、売上高は前年同期の実績を上回ったものの、計画値には届かなかった」(松浦本部長)。そうした状況もあって、通期については直近公表の業績予想の修正を行っている。

セグメント別では、エラストマー素材事業部門の売上高は前年同期比12・7%増の1114億1200万円、営業利益は同13・9%減の93億3100万円。営業利益における増減要因は、原価差(原料価格影響・エネルギー価格高騰等)によって181億円、販管費差(海上運賃上昇・間接部門費用配賦増等)で45億円、数量差(出荷量減)による16億円の利益圧迫要因があり、価格差(販売価格改定)による166億円、為替差益61億円の増益要因を上回った。合成ゴム関連では、自動車減産の影響を一部受けたものの、全体としては底堅い需要に支えられたことで国内販売、輸出販売、海外子会社いずれも堅調に推移。原料高騰分の価格転嫁が進んだことから、全体の売上高、営業利益ともに前年同期の実績を上回った。合成ラテックス関連では、医療・衛生用手袋の流通在庫が引き続き過剰で需給が緩んだ要因に加え、原料高騰の影響も重なり、売上高、営業利益ともに大きく伸び悩んだ。化成品関連では、原料および物流費上昇分の価格転嫁を進めたことから売上高は前年同期比で増収。しかしながら反動による数量減や燃料高騰の影響などといった影響を受け、営業利益は前年同期の実績下回った。

高機能材料事業部門の売上高は同4・6%増の565億6200万円、営業利益は同17・0%減の116億3600万円。営業利益における増減要因は、販売価格改定による価格差で18億円、為替差益で16億円の増益要因があったものの、原価差(原料価格による影響・棚卸資産関連費用等)で36億円、数量差(光学フィルム出荷量減)で12億円、販管費差(海上運賃上昇・新規開発費用増等)で9億円といったマイナス要因が上回った。高機能樹脂関連では医療用途向けの需要は堅調であったものの、大型テレビ向け等で顧客の在庫調整が発生し、光学フィルムの販売が振るわなかった。光学フィルムの状況(出荷量)は全体では前年同期比74%。中小型向けはスマホ向けが堅調ながら、インセル化影響などによりタッチセンサー用フィルムの出荷量が減少、タブレット・ノートPC向けは緩やかながら需要一服感を見せたことで同93%、大型向けはTVメーカー部材調達停止により出荷量が減少したことで同68%となったものの、第4四半期での需要回復を見込んでいる。電池材料関連では、市場は総じて回復に向かっているものの、民生向け需要に一服感が見られたことに加え、LIB原料の調達難や価格高騰による顧客の稼働率低下などといった影響を受け、出荷は前年同期並みで推移、売上高は前年同期を上回ったが、原料および燃料高騰の影響や新製品開発費用の増加などにより、営業利益は前年同期並みとなった。電池材料の状況(出荷量)については全体では同110%。需要分野別では、EV向けはLIB原料価格高騰による電池メーカー稼働率低下などといった影響を受けたものの前年同期比133%と大きく伸びた。民生他向けは家電およびモバイル端末向けの需要が一巡。世界的な買い換え需要停滞長期化による一服感が継続したことで同52%と伸び悩んだ。化学品関連では、合成香料、特殊溶剤用途ともに需要が堅調に推移、為替円安の影響ならびに原料および物流費高騰分の価格転嫁を進めたことで、売上高、営業利益ともに前年同期の実績を上回った。電子材料関連では半導体メーカーが高稼働を継続し需要は堅調に推移したものの、一部製品において外部委託先の供給能力不足による出荷減が発生、その影響もあって売上高、営業利益とも前年同期の実績を下回った。トナー関連では、需要に一服感が見られたものの、為替円安の影響により売上高は上昇したが、原料の高騰や棚卸資産の評価損などにより、営業利益は前年同期の実績を下回った。

その他の事業部門の売上高は同14・5%増の316億1100万円、営業利益は同44・5%減の7億1900万円。子会社の商事部門等の売上高が前年同期を上回った。

通期については、エラストマー素材事業部門で為替の円安傾向、原料価格高騰分を価格転嫁によって適正価格に戻したことから、売上高は当初予想を上回るものの、高機能材料事業部門においては市場環境の影響などによって需要が減少。利益面については当初予想を下回る見込みであることから業績予想を修正。売上高を前期比13・9%増の4120億円(前回予想値4000億円)、営業利益を同11・1%減の395億円(同455億円)、経常利益は同10・0%減の445億円(同480億円)、当期純利益は同4・2%減の320億円(同345億円)を見込んでいる。