2022年11月5日

ダイセル
「ナノひっつき虫」開発

半導体基板保護材料

ダイセル(小河義美社長)は、半導体製造工程で多用されるフッ酸などのエッチング液から、半導体基板を保護する材料の開発に成功し、その成果をアメリカ・アリゾナ州フェニックスで開催された半導体ウェットプロセスに関する著名な国際学会「THE SURFACE PREPARATION AND CLEANING CONFERENCE(ザ・サーフェス・プレパレイション・アンド・クリーニング・コンファレンス)2022」において発表した。

半導体製造プロセスには、さまざまな膜をフッ酸などのエッチング液に溶解させ、目的の形を作り上げるウエットエッチングと呼ばれる工程が存在。ウエットエッチングでは、できるだけ短時間で、溶かしたい膜だけを溶解する作業が求められる。溶かしたい膜と溶かしたくない膜の溶解速度の比を選択比といい、できるだけ選択比を高くすることが微細加工技術のカギと言われている。

エッチングの選択比を改良する手法として、目的の場所に選択的に膜を形成する領域選択的成膜「Area Selective Deposition(エリア・セレクティブ・デポジション」(以下、ASD法)という方法による注目度が上昇。ASD法によって、溶かしたくない膜の上に選択的に保護膜を形成することによって、エッチング液への溶解を抑制することがきる。しかしながらASD法は、一般に高真空下で極めて高価なガスに基板を暴露する必要があり、コスト、生産性に課題があった。

同社では、エッチング液に対する保護液剤として同社オリジナルの樹脂を含有する液剤を開発。同社オリジナルの樹脂はシリコン窒化膜に対し強く吸着する作用を持つことから、この液剤でウェハを処理することによってシリコン窒化膜上に選択的に保護膜を形成し、フッ酸への溶解を抑制する。その一方で、シリコン酸化膜のエッチング速度への悪影響は皆無。この吸着力の強さから、同社は保護液剤に含有する同社オリジナル樹脂を「ナノひっつき虫」と名付けた。

同社の保護液剤は、生産性はそのままにエッチング選択比を向上させ、低コストでエッチングすることが可能。半導体製造工場で使用されているエッチング液を、そのまま使用できることも利点となっている。

ナノひっつき虫は、12月14~16日にかけて東京ビッグサイトにおいて開催される「SEMICON Japan(セミコン・ジャパン)2022」の同社の出展ブースおよび出展社セミナーでも紹介される。