2022年12月5日

デンカ
次期経営計画策定

新たなビジョンとともに戦略実行

デンカ(今井俊夫社長)は、新たなビジョンならびに2023~30年度までの8年間を実行期間とした次期経営計画「Mission2030」を策定した。人財・経営価値を高め、スペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素を備えた事業価値創造に集中するとともに、財務・非財務の双方に重点を置いた戦略を実行し、Mission2030で掲げた目標の実現を目指す。

大きな変革期を迎えている現代において、同社ではMission2030策定にあたり、長期的な視点でデンカの存在意義を明確にする目的から、さまざまな未来に関する指標を分析。地球温暖化、海洋プラ問題、大気・水・土壌汚染などに関するサステナビリティ、DX、AI、遺伝子組み換えなどに代表される〝進化するテクノロジー〟、パンデミックや食糧・水資源の不足を引き起こす〝世界的な人口増加〟、貧富の格差や地政学的リスクを伴う〝揺らぐ秩序〟の4つの未来世界を想定した。

この4つの未来世界を踏まえ、事業機会を生み出すメガトレンドを再生可能エネルギー、モビリティー大変革、半導体の需要拡大が見込まれる〝ICT&Energy〟、医療ニーズ高度化、革新的な医療技術が期待される〝Healthcare〟、食糧・水資源、インフラ需要が増大する〝Sustainable Living〟の3分野に特定。4つの未来世界と3つのメガトレンドを基に、今後同社の中核となっていく若手社員の忌たんのない意見に経営陣の想いを加え、新たなビジョンを創出した。デンカのDNAであるコアバリューを土台とし、デンカを導く北極星となるパーパス、2030年に成し遂げたい務めとしてのミッションを重ねた構成とすることによって文字の域を超え、全従業員が〝自分ごと化〟できる新しいデンカのビジョン(未来像)を表した。

ビジョンにおけるミッション達成に向けては、Mission2030において事業、人財、経営の3つの価値創造を推進、企業価値向上につなげていく。

30年までにスペシャリティ、メガトレンド、サステナビリティの3要素を備えた〝3つ星事業〟を100%にしていくロードマップを描いており、3つ星事業への転換が困難な事業については、売却や撤退を含めたポートフォリオ変革を推進。そのために、8年間合計で戦略投資3600億円、研究開発費1800億円をかけて、30年に営業利益1000億円以上を目指す。ROEは15%以上を目標としており、総還元性向は50%水準を見込んでいる。

メガトレンドとして特定したICT&Energy、Healthcare、Sustainable Livingの3つの注力分野において、各々の分野別方針と同社保有の技術、戦略により、事業価値を創造していく。

ICT&Energy分野における方針については最先端素材を供給し、より良い社会実現に貢献。分野別技術・戦略については、次世代高速通信から呼び起こされるニーズであるエネルギーロス、放熱については、同社の精密球状化、高温制御、精密成膜、配位重合技術を駆使して取り組み、球状シリカ、球状アルミナ、電子包材、放熱材料、LCPフィルム、超低誘電材料などの製品によって満たすことでトップシェアを確立することでこたえていく。xEV・再生可能エネルギーにおいて呼び起こされる導電性、超高純度、耐久性といったニーズについては、同社のナノ粒子、不純物制御、高温焼成技術を駆使することによって打ち出されるアセチレンブラック、窒化珪素、電子回路基板、次世代導電材料などといった製品において、市場でのデファクト(業界での標準)化という位置付けの実現を果たすことでこたえる。8年間合計で800億円の戦略投資、400億円の研究開発費をかけ、30年の営業利益450億円を目指す。

Healthcare分野の方針においては、予防・診断・治療の領域で世界の人々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)向上に貢献。感染症予防というニーズに対しては、培養・組み換えタンパクといった技術を駆使し、mRNAなどの新規ワクチンを開発。インフルエンザワクチンの新製品などを通じてこたえる。体外診断薬の高度化に向けては、多様な抗体作出、同時多項目測定技術によって、次世代診断薬と遺伝子検査領域へ参入、自動分析装置用試薬、抗原検査キット、新製品を通じてニーズにこたえる。治療についてはがん治療に関して、ウイルス培養、精製製剤化技術を用い、製造能力増強とCDMO(医薬品製造開発受託事業)領域への展開を図り、ウイルス製剤、新製品という結果でニーズにこたえる。8年間合計で800億円の戦略投資、700億円の研究開発費をかけ、30年に営業利益400億円を目指す。

Sustainable Living分野の方針については、安全・安心・快適な日々の暮らしの実現に貢献。食料需要というニーズに対しては、同社の高温焼成、腐植酸調整技術を海外にまで押し広げ、バイオスティミュラント、環境対応肥料といった製品によってこたえていく。インフラにおける自然災害の影響緩和、環境負荷低減といったニーズに関しては、高密度・ち密化、急硬化、CO2固定化技術によって、インフラ需要高度化に適応した技術を開発、それによって生み出された特殊混和材、LEAFといった製品をグローバルに拡大することによってこたえていく。生活用品分野によってもたらされるサーキュラーエコノミーといったニーズに対しては、ケミカルリサイクル、バイオ由来樹脂の技術開発を推し進め、新技術の早期確立と社会実装を地域・他社との協業を図りながら実施。高機能スチレン系樹脂、バイオプラスチックといった次世代樹脂を普及させることでこたえていく。8年間合計で300億円の戦略投資、200億円の研究開発費をかけ、30年の営業利益150億円を目指す。