2022年12月20日

TOYO TIRE
「記者懇談会」を開催

本年度の事業内容等を自ら説明

TOYO TIRE(清水隆史社長)は12月2日、オンラインにおいて年末恒例の「記者懇談会」を開催した。同社では2021年に中期経営計画「中計’21」を公表し、その中でサステナビリティ経営の強化を図るとともに、事業戦略と融合を図ることで、事業を通じた社会価値の創出を図ると宣言。こうした基本路線に基づき、〝社会の中に同社が存在する理由〟を示す本年度の同社の事業内容や取り組みについて清水社長自らが説明し、新たな報告も行った。

2023年3月期の第3四半期決算では、売上高は当期単独(7―9月)、累計(1―9月)のいずれも売上高で過去最高を更新、経常利益、純利益についてもそれぞれ過去最高を達成。今年2月にはサステナビリティ経営方針を公表し、マテリアリティを軸にした挑戦(価値創出と課題解決)により、同社が目指す企業像を明確化。グローバル市場に向けては、7月にセルビア工場を稼働させ、8月より北米市場向けに製品の出荷を開始している。「当社としては8年ぶりに新設したタイヤ工場であり、競争力の高い商品の生産供給拠点を起点に北米市場向け供給体制の強化、欧州市場における地産地消メリットの最大化を図っていく」(清水社長)。バックオーダーを抱えている米国市場に優先的に供給しているが、来年には欧州向け供給も開始。「セルビア工場の本格稼働は、当社の将来的なタイヤ生産供給戦略を充実していく重要なキーファクターであり、最新設備の導入も順調に進んでおり、来年度下期には500万本のフル生産体制を予定している」(同)。

今年の事業面における自己採点については、例年は80点という、伸びしろを期待しながらも満足度に関しては上々の印象を周囲に与えていたが、本年度は60~70点程度と採点。その理由として世界経済の動向が同社事業に対する影響への懸念感をあらわにした。グローバルでの生産体制拠点の重要な一画を担う米国工場において、人手不足という状態に直面しており、そうした事態は生産面にも影響。「生産体制の向上やメンテナンス体制の見直しに取り組んでいるが、売り上げへの影響も出てくる」(同)ことから、セルビア工場からの供給によって、米国のおう盛な需要にこたえていく選択肢もあるが、物価の高騰のあおりなどといったマイナス要因も考慮すると楽観視は禁物。来年(来期)においても上半期(1―6月)までは現在の好調な状況は維持されるものと見ているものの、下期の見通しに対しては不透明感にとらわれている状況を示した。

半導体不足による自動車メーカーによる生産調整の今後の展望については、徐々に回復していくと予測。「完全復活するまでには時間を必要とするかもしれないが、当社の販売比率は、リプレイス向けが新車用に対して圧倒的に高いことから、リプレイス向けを伸ばしていくことで業績の好調は維持できる」という見解を述べた。

サステナビリティ経営については7つのマテリアリティを中心に、網羅的なサステナビリティテーマを事業活動に落とし込み、中長期的な視点で常に点検しながら推進。タイヤの転がり抵抗を下げることによってCO2排出削減効果が得られることから、タイヤの低燃費性能向上もその一端として挙げることができるが、その一方で、バイオマス由来の原料やリサイクル素材などといったサステナブル素材を採用する技術開発にも取り組んでおり、そうしたタイヤが来年1月に開催される「ダカールラリー2023」に参戦する車両に装着され、実戦で使用される。「当社ではモータースポーツのような過酷な使用条件において得られる実測データや、さまざまな知見を商品開発にフィードバックし、タイヤの性能、品質の向上へ技術の研さんを重ねている。サステナブル技術についても同様に、こうした特殊条件における検証はタイヤの確かな品質、機能を担保していく上でも有効であり、レースでの好成績獲得とともに魅力と価値の高い開発に貸していく」(同)。同社では、新製品として天然由来のサステナブル素材である新シリカ分散材を使用したプレミアムコンフォートタイヤの新製品「PROXES Comfort Ⅱs」の発売を懇談会当日に発表。「サステナブル素材を新製品に採り入れていくと同時に、従来品においても置き換えを図っていく」(同)。

脱炭素社会の実現に向けては、EV向けタイヤの開発を推進。転がり抵抗低減は重要なテーマであり、CO2削減に向けての目標を定めてカーメーカーと共同で開発を進めている。同社ではSUVやピックアップトラックの車種において強味を持っていることから、そのラインでの実用化を目指しており、空気抵抗を抑制するパターン設計などの研究開発を経て、プロトタイプの段階に差し掛かっている。米国でもEVが増加する傾向にあるが、搭載されているバッテリーは重量が大きく、もとより大型タイヤは高重量であることから新たに開発するEV用タイヤは基本に立ち返って開発していく必要がある。「欧州に対しては、来年において国際基準の適合証明である〝Eマーク〟を取得する予定で、まずは日米を中心に置きながら、基準のレベルが厳しい欧州に対しても慎重に取り組んでいきたい」(同)。

来年については「セルビア工場の本格稼働により、新たなステージへと駆け上がり、中計’21で掲げた成長戦略への実行力を自らが問うターニングポイントと位置付け、2023年は〝転機を掴み、成長へつなげる年〟として取り組んでいく」(同)。