2022年12月25日

住友ゴム工業
「年末会見」で2022年を総括

売上高1兆円評価
収益性高める必要性痛感

住友ゴム工業(山本悟社長)は12月20日、この時期恒例の「年末会見」を東京都千代田区の大手町サンケイプラザで開催した。会場とオンラインによるハイブリッドで行われ、2022年を振り返りながら、これから本格化するEVタイヤ開発、センシングコアビジネスへの取り組みなどについて解説した。会場で山本社長は、コロナ禍における事業環境の厳しさを思い起こしながら、今期の売上高において、初の1兆円の大台に乗せることのできる見通しを、全社的な取り組みの成果として評価。その一方で、原材料価格や運送費の高騰などといった外部環境要因によって利益率が低下し、減益に陥った状況を深刻に受け止め「非常にショックを受けており、売り上げ面は成長軌道に乗っているが、収益性を高めるための必要性を痛感した。そのためのアクションプランを含めた内容で次期中期経営計画を策定していきたい」と、来期以降に向けた決意を述べた。

22年の振り返りでは、同社を取り巻く環境として、半導体不足による自動車生産台数の減少、原材料価格高騰による影響の継続、最重要市場である米国・中国における市況低迷をマイナス要因として挙げた。その結果、外的要因による不可抗力とは言え、通期見通しにおいて「下方修正をせざるを得なかったことに、トップとして非常に大きな責任を感じている」(山本社長)と表情を曇らせた。収益率改善に向けた対応としては、地域ごとの状況に応じた価格の見直しを行い、高付加価値商品の拡販による構成改善を実施する。低採算サイズを削減し、構成改善と生産効率向上に取り組み、グローバルにおけるきめ細かな生産アロケーション(配分)によってコスト改善、海上輸送コストの抑制を図りながら、好調な市場にタイムリーにタイヤを供給・販売できる体制を固める。

次期中計に関しては「もっと早い段階で発表する方向性で策定を進めていたが、事業環境を取り巻く変化はあまりにも大きく、瞬く間に移り変わっている市場動向を鑑みて一段と深堀りを行う目的から、来年(決算発表時)の発表に向けて現在策定に取り組んでいる。当社が将来的に、持続的に成長を遂げていくための足取りを明確に描いていきたい」(同)と、述べた。

EVタイヤ開発においては、中国においては同社初の市販用EVタイヤDUNLOP「e.SPORT MAXX」を発売しており、中国系EVメーカー13モデルに採用が決定するなど、出だしは好調。来年には欧州向けにFALKEN「e.ZIEX」の発売を予定している。同社ではまず、中国においてEVタイヤの浸透プロセスを見定める意味も持たせてリプレイス用から投入。タイヤを購入したドライバーの評価の広がりによって、新車用としての採用度を拡大している。EVの特長としては、従来車と比較して、重量とトルクが大きいことから摩耗・偏摩耗に対応する性能向上が要求案件。低燃費化が必須条件であると同時に、駆動音が静かであることから、タイヤの静粛さという特長も、これまで以上に際立ってくる。これらのEVにおける要求性能は一般車両からも求められおり、同社ではEV用タイヤの技術開発はタイヤ全体の性能向上につながる取り組みであると認識。欧州へのEV用タイヤの投入は、あらゆるタイヤの拡販を強化する上で、現地の評価をくみ上げながら、現地でのタイヤ事業の強化を目指す。

センシングコアビジネスの取り組みについては、4月に「センシングコア技術の将来構想発表会」を開催。空気圧、荷重、路面状態、摩耗検知に加えて車輪脱落予兆検知機能の概要について説明した。自動車メーカー複数社と政府機関との実証実験をスタートさせており、路面状態検知機能と車輪脱落予兆検知機能については、24年に自動車メーカーへの初めての導入が決定。車載OSを搭載した次世代EVを中心に開発とライセンス販売を進める計画も立てており、本年1月には中国で、専門組織を設置した。来年1月には欧州においてもセンシングコア導入に向けた専門組織を立ち上げる予定で「現時点では、EV用タイヤとセンシングコアビジネスは個別に動いているが、セットにすることによる顧客価値に反映される度合いを調べながらビジネスの拡大に努めていきたい」(同)。センシングコア技術は、将来的には同社の柱となる事業として想定されており、車輪脱落予兆検知機能などはトラック・バス用においても有益。路面状態に関するセンシング機能については全車両において安心・安全に貢献できることから、幅広い視野で事業の展開を推し進めていく。

23年度の社長方針として、まずは将来の飛躍に向けた変革を実行し、収益力の向上を図る。「収益面では非常に厳しい環境にあり、カーボンニュートラルをはじめとする持続可能性を追求したビジネスの推進に向けても収益を確保する必要がある。新中計では、収益力向上に向けた種まきを行う施策を織り込み、来年はその足元を固める年度として考えている」(同)。さらにはイノベーションを推進し、新たな価値の創出を加速させる。「各事業部門において独自開発の技術によって市場に貢献しているが、ますます新たな技術を創出することによって貢献力を高められるよう、技術開発力の増強を図る」(同)。そして、多様な力を結集し、常に変化を乗り越えていく会社を目指す。「世界のグループ企業において共通の目標を目指し、ダイバーシティーによって、当社と当社グループ全体が全力を発揮できるような体制を作り上げることで、価値ある企業としての姿を確固たるものとする」(同)と、力強く抱負を語った。