2023年1月10日

新年トップインタビュー
十川ゴム

人の成長が原動力
全社員の結束で飛躍遂げる

【2022年を振り返って】
長引くコロナ禍とロシアのウクライナ侵攻に起因する外部環境の変化への対応など、難しい経営の舵取りを強いられた一年だった。一昨年から継続して原材料価格、物流費、ユーティリティコストは軒並み高騰しており、原材料のグレードによっては供給量でさえ不足している状況は、安定した生産活動を阻みかねない大きな懸念事項として付きまとった。中でも最も対応に苦労した問題は、調達先の材料グレードの統廃合である。代替原材料の検証に取りかかったものの、品質の維持という絶対条件を満たすためには適合する材料の選定が難しく、慎重に進めている。各種コストが続騰している状況においては、これまで出来うる限りの原価低減努力を続けてきたが、自助努力による吸収は限界を既に超えていたことで、お客様への価格改定のお願いをせざるを得ない局面を迎えた。継続的な価格改定を余儀なくされ当社としてもかつて経験したことがないような事態であったが、幾多の課題を残しながらも事業活動を遂行できていることは、お客様のご理解とご協力があればこそと深く感謝している。

そのような厳しい情勢下ではあったが、社内的には新型コロナの感染予防策を励行しながら、無事に乗り越えて来られたことが何よりだった。従業員の感染事例は皆無ではないものの、幸い大事には至らず、健康の維持に努めながら業務にあたった全従業員に敬意を表したい。

【今期(2023年3月期)の状況について】
今期も既に第4四半期へと差し掛かっているが、第3四半期までの実績としては売上高は前年同期比1ケタ増となっている。第1四半期までは前年同期並みの水準で推移したが、アップダウンを繰り返しながらも計画通りに推進できている。しかしながら、当社が事業を展開する多岐にわたる需要分野を見渡すと、業界によって好不調の明暗が分かれている印象だ。コロナ禍、国際情勢、半導体をはじめとする部品不足など、さまざまな影響によって先行き不透明な状況が継続していることは否めない。当社においても、そのような逆風にさらされたことで新型コロナ拡大以降は需要が大きく冷え込んだが、2021年度と2022年度の2年間で(コロナ禍以前の)2019年度の水準まで業績を戻していくという目標は、現状の復調ペースでいけば達成できると見通している。ただ、各種コストが高止まりしていることから利益面については2019年度の水準を取り戻しているとは到底言えず、依然、収益を圧迫する大きな要因として立ちはだかっている。来期2023年度の計画については、今期において売上高を回復できた基盤をベースに、そこからさらに2㌽程度アップの計画で臨みたい。利益面においても、少しでも2019年度の実績に近付けていくことを念頭に推進する。

【中国の子会社の現状について】
紹興十川橡胶の前期(2022年12月期)の状況としては昨年4~5月の上海のロックダウンや、年度終盤に各地にわたって決行されたロックダウンによって営業活動はもちろん物流面でもかなりの支障をきたした。一方、需要環境については日本向けの金型成形品は比較的堅調であったが、中国国内向け建設機械用ホースの動きが鈍化したことが販売の足かせとなるとともに、円安の進行で利益面においても大きな影響を受けた。前期の業績については2021年が好調であっただけに、売上高は前年比25%程度の減少を見込んでいる。ただ、年度末に向けてはゼロコロナ政策もかなり緩和されてきたので、今年度は事業環境の好転に伴って巻き返しを図りたい。

【今後の取り組みと方針について】
事業活動の効率化に向けては、営業部門や管理部門でのデジタルツールを使用したオンライン化を推進してきた。今後は製造現場においてもIoTを導入し、稼働状況のデータを現場と共有しながら改善につなげていく。また、ここ数年は感染予防対策の観点から積極的とは言えなかった部門間のコミュニケーションの活性化を今一度図っていきたい。互いが刺激を受けて高め合っていけるような交流の場を設け、強固なつながりを醸成する職場環境づくりにも努める。昨年後半からそういった試みを再スタートさせており、各工場では現場における困りごとを相談したり、改善の成功事例などを報告する「情報交流会」を実施した。ほかにも、11月には工場において全国の営業店長が集まる会議を開催した。これにより営業にも製造ラインを見てもらい、工場と営業双方のスタッフが現場の活動について意見を交わし合った。こういった取り組みを逐次行っていくことで、生産サイドも新しい気付きがあり、改めて奮い立つような機会となることを期待している。人の成長こそが事業推進の原動力である。人材育成には従来にも増して力を入れたいと考えており、一人ひとりの成長をうねりに変えて組織の大きな活力へと高めていってほしい。

【今後の開発の方向性について】
自動車は近年の世界的な意識の高まりもあって脱炭素社会の実現に向けたEV化の流れが国内でも進んでいくだろう。それに伴って燃料ホースなど、従来までの製品は徐々に縮小していくため、既存の製品に置き換わる製品の開発に力を注いでいる。そのような環境保全の一翼を担う製品を展開していくことで、社会に貢献を果たしたい。

【今年の抱負と意気込みを】
当社は2025年の5月、創立100周年を迎える。この企業としての大きな節目を迎えるにあたっては、すべての従業員が幸せになっていてほしいという強い思いを抱いており、その“夢”を実現していくためにも今年も全従業員が力を合わせてさらなる飛躍を遂げていく年にしていきたい。