2023年1月10日

新年トップインタビュー
横浜ゴム

念願の売上収益1兆円へ
ESG全重要課題取り組む

【2022年を振り返って】
第1四半期(12月期決算、1―3月)においては、日本でのスタッドレスタイヤの需要につながる降雪という要因があったものの、原材料価格やオーシャンフレート(海上運賃)などといった物流費の高騰が大きく影響し、収益的には厳しい環境に立たされた。第2四半期に入ってからも原材料、物流費高騰の勢いは衰えを見せず、第3四半期に差し掛かるとオーシャンフレートは下落傾向と落ち着く気配を見せたものの、高騰前の水準には戻ることなく高止まりの状況が続き、インフレによるエネルギー価格の高騰や、欧米を中心とした各国の大幅利上げにより、急激に景況感が悪化した。こうした状況によって、経営環境を覆う下落ムードが強まり、第4四半期においても、インフレの継続や景況感のさらなる悪化などといった要因が影響し、厳しい経営環境に立たされた。

当社の業績においては、第3四半期までのタイヤ事業は、原材料や物流費などの高騰に対してMIX改善や値上げ、増販効果によって売上収益、事業利益ともに過去最高を達成することができた。新車用タイヤについては、半導体不足による自動車メーカーの生産調整による影響を受けたが、北米や中国市場における自動車生産の回復や、新規車種における受注獲得といったプラス要因により、売上収益は前年同期の実績を上回った。市販用タイヤは、マーケティング活動に力を注ぎ、高付加価値商品の拡販に努めた結果、日本や北米、中国などで販売を伸ばした。

マルチプルビジネス(MB)事業の売上収益は前年同期を上回ったが、事業利益は前年の実績を下回った。ホース配管事業は、北米において自動車向けホース販売が回復したものの、原材料価格やエネルギー費の高騰などにより増収減益となった。

工業資材事業は、コンベヤベルトの国内販売は約5割までシェアを伸ばし、航空部品も民間航空機向けの需要が回復したことによって売り上げが伸長したが、利益面については前年実績に届かなかった。

Yokohama Off―Highway Tires(YOHT)については、原材料や海上運賃の高騰による影響を受けたものの、農機向けを中心に販売が堅調に推移したことによって、売上収益、事業利益とも前年同期の実績を上回り、過去最高となった。

当社は、2021年から2023年の3カ年を実行期間とした中期経営計画「YOKOHAMA Transformation 2023(YX2023)」を推進している。われわれが強みとして持っている既存事業の〝深化〟と、100年に一度の大変革期といわれる市場変化における新たな取り込みを行うための〝探索〟を同時に推進することによって過去最高の業績達成を目指す。タイヤ消費財では、プレミアムカーへの新車装着に力を注ぎ、市販用では、2022年を〝ヨコハマ夏の陣〟と位置付け、ADVANブランドの販売強化に努めた。これらの結果、昨年11月までのADVAN、GEOLANDAR、ウィンタータイヤの販売本数比率は、前年の40%に対して41%まで引き上げることができ、18㌅以上のハイインチタイヤについても、19%から21%まで伸ばすことができた。

【新たな取り組みと施策について】
タイヤ生産財では、YX2023において〝更なる成長ドライバー〟と位置付けているオフハイウェイタイヤ事業の拡大に向けて、スウェーデンに本社を置くTrelleborg Wheel Systems(TWS)の事業買収を3月に発表した。タイヤの世界市場と当社の足元の現状を見ると、世界市場は消費財と生産財の構成比が、一般的に1対1の事業体制である状況ながら、当社では3対2となっており、消費財に偏った構成になっている。今回の買収により、全体構成の適正化に向けた体制づくりを行う。昨年8月には、YOHTの生産能力増強に向け、インドにおいて建設を進めてきたヴィシャカパトナム工場における生産を、前倒しして実施している。MB事業では、ホース配管事業の強化の一環として、米国およびメキシコの生産体制を再編し、競争力のある生産体制を構築している。加えて3月に、航空部品事業部を工業資材事業部へと統合した。MB事業の強みであるホース配管事業と工業資材事業にリソースを集中し、〝成長性・安定性の高いポートフォリオへの変革〟を進めている。ESGにおいては、主力工場である新城南工場をカーボンニュートラルのモデル工場として位置付け、再生エネルギー電力の活用や太陽光発電の導入、水素などといった脱炭素燃料への転換などによる取り組みをスタートさせている。サーキュラーエコノミーでは、「全日本スーパーフォーミュラ選手権」にワンメイク供給するサステナブル素材を活用したADVANレーシングタイヤの開発を進めた。社会への取り組みについては、人権方針を策定し、人権デューデリジェンスの実施、苦情処理メカニズムの構築を行った。

【2023年の取り組みについて】
YX2023の最終年となる本年は、世界的な景気後退懸念、半導体不足による自動車生産の混乱、原材料価格・海上運賃の高止まり、ウクライナ情勢などといった、より一層厳しい経営環境に立たされるものと警戒感を強めている。タイヤ事業においては、高付加価値品の販売強化に努め、ADVAN、GEOLANDAR、ウィンタータイヤの構成比率をさらに拡大していく。MB事業では、ホース配管事業および工業資材事業での生産能力増強を進め、収益を伴った成長を目指す。ESGでは〝未来への思いやり〟というスローガンの下、〝地球環境のために〟〝製品を通して〟など5つのマテリアリティを、より具体的な事業戦略に結び付け、基本理念の実現を目指す。カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーについては、それぞれのロードマップにのっとり、活動を着実に進めるとともに人権尊重、コーポレートガバナンスなどESGすべての重要課題に取り組み、これらを持続的な企業価値向上につなげていく。TWSについては、クロージングに向けた手続きを進めており、事業買収の完了後には、GD100で成し得なかった売上収益1兆円を達成し、次の成長に向けてのステップアップを図る。

当社は、本年年初より本社機能を神奈川県平塚市の平塚製造所へと移転した。これを機に社員一同が決意を新たにし、周囲の期待にこたえられるように一層励んでいくことで企業としてのさらなる飛躍を遂げる。