2023年2月20日

ブリヂストン
アセントロボティクスと資本業務提携

ソフトロボティクス事業化へ

ブリヂストン(石橋秀一Global CEO)は2月1日、知能ロボットシステムを開発・販売するアセントロボティクス(久夛良木健CEO)と資本業務提携契約を締結。同社のソフトロボットハンドと、アセントロボティクスのAIシステムを組み合わせたピースピッキングロボットシステム(品物を一つひとつ運び出す作業を行うロボット)を開発し、両社では実用化に向けた取り組みを推進していくことを明らかにした。

同日、東京都小平市のブリヂストンイノベーションパークで開催された「ヒトとロボットの新しい世界を体感する Bridgestone Softrobotics Day」と題された発表会では、ゴム人工筋肉を搭載したソフトロボットハンドを手掛ける同社の社内ベンチャー・ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズの音山哲一CEO兼探索事業開発第1部門長と、アセントロボティクスの久夛良木CEOが今後の展望などについてプレゼンテーションを行った。

音山CEOは、まずソフトロボティクスの事業化に向けてブリヂストン初となる社内ベンチャーを設立した経緯と狙いを説明。「昨年8月に当社が発表した2030年に向けた長期戦略アスピレーション(実現したい姿)においては、2024年1月を目標にソフトロボティクスの事業化を目指すことが盛り込まれていた。しかしながら、昨年9月にソフトロボットハンドを国際物流展に出展したところ来場者からの反響に非常に大きな手ごたえを感じたため、当初の計画を1年前倒しさせて今年1月に『ソフトロボティクスベンチャーズ』を設立し、事業化を加速していくことになった。物流業界では、まだまだ人が介在する作業が多く、近年の労働力不足やCOVIDー19の感染拡大防止の観点から拡大した非接触化ニーズの高まりなど、当社が提供するソリューションによって物流現場の課題の解決に貢献し、ソフトロボティクスが人の暮らしに寄り添って支える新たな社会の実現を目指していきたい」と事業に託した思いを表した。

社内ベンチャーを設立した大きな狙いとしては①スピード感を持った早期の事業化②共創パートナーとの活動を通じた新たな価値の創出③ソフトロボティクスの事業展開による人とロボットが協働する世界の創造の3つを念頭に置いており、同社ではこれまでタイヤやホース製品の開発・生産で培った知見を生かしてゴム人工筋肉(ラバーアクチュエーター)の開発を推進。ゴム人工筋肉が有する柔軟性、耐衝撃性、軽量、高出力といった特長を生かしながら、ロボットの指の部分にゴム人工筋肉を搭載したソフトロボットハンドで、さまざまな形状・硬さ・重さのものを〝いい感じ〟につかむピースピッキングの自動化を目指している。

今回の資本業務提携を通じて開発を進めるピースピッキングロボットシステムは、本体の〝手〟を同社のソフトロボットハンドが担い、目および頭脳をアセントロボティクスのAIソフトウェア群が構成。これによって物流作業の現場でロボットが品物をスピーディーに認識・判別し、状況に応じて多種多様な品物に対しての自律的な作業を行うことを可能としている。同社としてはモビリティ分野以外での出資は初めての試みであり、物流業界に向けてはピースピッキング自動化に向けた実証実験をさらに積み重ねながら、ソフトロボティクスを通じたソリューション提案の早期実現を目指していく。

引き続き登壇した同社の協創パートナーであるアセントロボティクスの久夛良木CEOは「近年の流通・物流分野が抱えている多くの課題を解消していくためには、多種多様な対象物をフレキシブルに扱える、人と協調しながら自律的な作業を可能とするソフトロボティクスの導入が待ち望まれている。ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズが展開するソフトロボットハンドでは、ゴム人工筋肉がしなやかな特性を発揮しながらも〝しっかりとつかむ〟という強みにより、従来は適用が難しかった不定形な生鮮食品や冷蔵・冷凍食品にも対応するソリューションを提供できるなど、当社のAIソリューションの活躍の場がさらに拡大することに期待している」とコメントした。

発表会では同ロボットシステムによるピースピッキング作業の実演も披露。テーブルにランダムに置かれた除菌消臭スプレーやハンドソープなどの容器をAIが形状を判別して棚の所定の位置に戻したり、パック入りの卵や牛乳といった繊細な扱いが必要な品物でも適度な力で確実に持ち上げ、正しい置き位置を判断しながらケースに収納。状況に応じた自律的な動作を行えるソフトロボティクスの能力を確認することができた。