2023年3月30日

【ホース・チューブ・継手特集】
ユーシー産業

NDHアイテム拡大
自社運営ネット販売開始へ

ユーシー産業の2022年度12月期の業績は、売上高は前期比107%と前期の実績を上回ったが、利益面は下回った。販売量に大きな変化はなかったものの、値上げの効果が売上高を押し上げた。今期(23年度12月期)に入ってからは、2月末の時点で前期比110%を超えており、予算もクリア。現状の伸びは、昨年度末に実施した2度目の値上げによる効果が要因になっていると見ている。

ウィズコロナのムードが定着するにつれ、社会生活や生活環境も通常の状態に戻りつつあることから、同社でも従来型の対面での営業活動が復活傾向にあるものの、リモートによる面談も積極的に活用。特に工場スタッフの参加がリモートによって容易にできることから、複合型での対応が定着してきている。展示会についても、各ユーザー(商社)によって昨年以上に各地で開催が予定されていることから、同社としては積極的に参加し、展示会を通して発売予定の新製品などの知名度向上に努めていく。

新製品として新たに導入した「断熱ドレンホースNDH型用接続パーツ」については、市場からの要望によって製品化され、各販売店による協力もあって認知度も向上。予定していた一定量の売り上げを果たしたものの、NDH自体の販売量は前年同期比105%となり、新製品の投入効果として手ごたえを得るまでには至らなかった。「NDHタイプドレンアップホース」についても、「EDUドレンアップホース」の廉価版として発売を予定していたが、工事店インフルエンサーの声も採り入れ、さらにバージョンアップした上で〝NDHの各部品をあらかじめ工場で接着加工した製品〟として展開し、商品アイテムを拡大して今期の販売開始を予定している。

空調機器関連については、コロナ禍によって大きく成長した市場が急激にシュリンクすることなく、現状レベルで維持すると見ている。メーカーについても、2年前までは1社のみでの展開であったものが、今期は参入メーカーによって4社にまで拡大。消費者の選択肢も増えることで好調さは維持される見通し。エネルギー価格の高騰という取り巻く環境もあって、各機器メーカーの省エネに対する取り組みは一段と積極性を増すものと見られており、同社としてもユーザーが求める〝省エネ効果〟に貢献する製品開発を積極的に推し進めていく。フリーパイプの「エバフリー」関連も安定成長を継続、インフラ再整備のほか、公共工事の活性化もあって幅広く使用されており、前年比120%と伸びをみせている。同社としては今後もさらに多岐にわたる需要に対応する目的から、新たなバリエーションの追加も検討している。

開発面においては、数年前より新商品の開発に向けた開発専任チーム「先行開発部」を発足させており、主に合理化設備の製作を中心に活動を実施。協業ロボットを駆使し、「自動接着装置」「自動リークテスター」「自動梱包機」などの製作を行い、現場に随時投入することで大きな成果を上げている。22年度末には試作専用設備も投入しており、今後の新製品開発に活用。既に開発予定製品も複数において上がっており、今期より計画的に開発に取り組む。

公式アンバサダー「エア魂女子」の就任効果としては、工事店との交流が深まり、多くの情報がダイレクトに伝わることによって商品開発面で大きく役立っている。今期発売予定の「NDH型部品接着シリーズ」にも反映させていく意向で、インスタグラムによる情報開示は既に実施、ユーチューバー工事店との交流を通じて情報発信においても大きな役割を果たしている。工事店との交流によって「ユーシー産業の製品を購入したいが、自社の購買店には在庫がなく、購入できない」という声が数多く聞かれたことから、この春から自社運営によるネット販売を開始する予定。空調部材関連からスタートし、将来的にはエバフリーを含む多くの製品で対応していく計画。エア魂女子の協力による効果としては、同社製品に〝エア魂女子ご愛用〟という写真入りシールを貼付、多くの販売店の店頭における吊り下げPOPの効果もあって、多くの工事店から新規購入という状況が得られた。

原材料や搬送費、ユーティリティなどの大幅な高騰が継続的に続いており、世界的な各種材料不足による需給問題も深刻化。同社では、昨年春と年度末に2度の値上げを実施したが、多くの顧客の理解を得ることができたことでスムーズに価格修正が進んだ。エネルギーや人件費も高騰していることから、今後の値上げも余儀なくされる状況を視野に入れながら、今期の値上げは慎重に対応。全社的な合理化やコスト削減に取り組み、6年目を迎えた「改善提案ポイント制度」の運営を一段と活性化させることによってコストアップ要因の緩和に努める。

製品の国産化推進の現況としては、同社鳥取工場の生産比率が22年度で79%にまで上昇。現行輸入品については、国内生産に向けた新たな製品開発を進めており、2~3年以内にユーザー認定を取得し、鳥取工場での生産に移行させていく方針。同一製品の生産移転という展開ではなく、ユーザーへのメリットを配慮し、新規開発によって相互メリットを引き出す。提案品は今期中に完成する見込みで、採用確定後は、新規製造設備の導入も必要となることから、新設備を含めた工場レイアウトの検討も進める。鳥取工場の新規倉庫も完成しており、今月3日に竣工式を挙行。順次、本格的な運用を開始し、物流の合理化に努める。新倉庫の活用によって工場スペースに余裕ができたことで、国産化に向けた取り組みも加速、3年以内の完全国産化を目指す。