2023年4月10日

住友化学
次世代環境配慮デバイス開発へ

新物理現象用い産学連携で推進

住友化学(岩田圭一社長)は、東京大学大学院工学系研究科(研究科長・染谷隆夫氏、以下、東京大学)とともに、対称性の低下した物質における新しい物理現象の開拓および同現象を利用した環境配慮デバイスの開発を研究テーマとする社会連携講座「新しい物理現象を用いた次世代環境配慮デバイスの開発」を4月1日に開設した。この社会連携講座は、公益性の高い研究課題について、東京大学と企業などが共同研究を行うもので、東京大学と企業などとの契約に基づき、企業などが負担する共同研究経費によって運営。社会連携講座というシステムによって、包括的な社会課題テーマの下、これまで自然発生的であった企業と各研究者との共同研究では限界のあった異分野の研究者との連携や、複数の研究者とチーム結成が可能になる。

新たに開設された講座は、東京大学の卓越した学術的知見・技術と、住友化学の無機材料機能設計やデバイス設計などにおける広範なコア技術という互いの強みを組み合わせて行う共同研究で、技術分野における相互の知的・人的・物的資源の交流、共同研究開発活動の推進による新しい価値の創造に取り組む。連携を通じて、対称性の低下した物質における電子同士の強い相互関係に着目した新奇な物理現象の開拓・検証に取り組むことにより、これまでにない原理で駆動する次世代環境配慮デバイス(具体的には、熱電変換・環境発電デバイスや、超低消費電力誘電メモリ)の実証、将来の実用化に向けた研究開発を推進する。

現在、結晶性物質の空間反転対称性や時間反転対称性を低下させることによって、これまでにない新しい物理現象が発現することが近年の研究により確認。特に、電子同士で強い相互作用を生じている「強相関電子材料」と呼ばれるような物質群では、これらの対称性と強く結びついた現象がより顕著に発現することが明らかとなっている。このような新奇な物理現象においては、電気的・磁気的な応答が通常の金属や半導体などといった物質とは質的に異なる挙動を示すことから、現在のエレクトロニクス分野の主流であるシリコンテクノロジーの理論的限界を超越できる技術として、産業応用の面からも興味深い学術領域として注目度が上昇。同講座では、結晶対称性の低下がもたらす新奇な応答現象を開拓し、これまでにない原理で動作する環境配慮型のデバイスの開発ならびに実用化を目指す。

同講座の設置期間は今月1日~2026年3月31日の3年間で、代表教員は東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授の齊藤英治氏が、同社会連携講座の特任教授を兼務する。

研究内容は、対称性の低下した物質において生じる非線形・非相反現象の研究を通じ、現象の理解を深めて材料系の設計・創出を推進、同現象を利用した熱電変換・環境発電の実証および実用化を目指す。強的性質の相関効果により発現される新奇な応答現象の研究を行い、超低消費電力で駆動可能な電流型誘電メモリの実証およびデバイス実用化を目指す。

新しい原理に基づく熱電変換デバイスおよび超低消費電力で駆動可能な電流型誘電メモリの開発・実用化を通じ、創エネルギー・省エネルギーの双方の側面から、持続可能な社会の形成に貢献。新しい物理現象にまつわる研究開発を通じ、同分野での学術領域と応用開発の双方をカバーできる人材の育成・輩出を目指す。