2023年4月20日

【ホース・チューブ・継手特集】
クラレプラスチックス

クラファインダクト
周辺部材の強化を図る

クラレプラスチックスの2022年12月期のホース事業の業績は、増収ながら減益で着地した。昨年は原材料費をはじめ、あらゆるコストが高騰する中、自助努力の限界を超えたことで製品の安定供給と品質確保のためにも価格改定を実施。上期と下期に順次実施した値上げが浸透したことで全体の売上高を押し上げたものの、価格転嫁の交渉に相応の時間を要したことと、原材料だけではなく搬送費、ユーティリティコストの高止まりが響いて利益面においてはわずかに前年水準に及ばなかった。

前期では収益面において急激な事業環境の変化による影響が残ったものの、需要業界の市況については引き続き回復基調に乗っている。今期に入ってからは、土木関連は河川工事などの公共工事の需要が例年より低調である一方も、国策である国土強靱計画の推進によってインフラ補修工事での需要が徐々に増えつつある。建築分野も引き続き好調を維持しており、近年のEC市場規模の拡大を背景とする物流施設の建設工事にかかわる引き合いが増大。工業用途では半導体不足による稼働率の低下や設備投資を控える動きが徐々に快方に向かい汎用品の需要が活性化している。同社ではそういった需要の着実な取り込みに向け、拡販活動に余念がない状況だ。最近ではコロナ禍による顧客への訪問自粛といった営業活動の規制もほぼ無くなっており、ここ数年で構築してきたウェブを活用した打ち合わせよりも対面営業を軸として営業活動を推進。リモートでの対応は効率面でのメリットはあるものの、顧客のニーズをくみ取って新たな商機へと結び付けていくためには訪問営業がやはり肝要。同社としては従来通りのユーザーにダイレクトに訴求する営業スタイルで拡販活動に臨んでいる。

今年1月からは、需要の掘り起こしのスピードアップに向けて「新規市場開拓部」を設置。昨年4月からはクラレグループ全体で原則禁止であった海外出張も可能となっており、東南アジアにおける水処理に関する市場など、コロナ禍で中断を余儀なくされていた海外展開にも改めて取り組んでいく。また国内市場についても、さらに新たな用途開拓と需要先の開拓を念頭に推進。顧客ニーズを開発に落とし込んだ特長のある製品を幅広いラインアップで訴求しながら、新規採用と評価を獲得していく方針だ。

これまで以上に注力する製品としては、高断熱性の空調ダクトホース「クラファインダクト」は、ダクトに付随する周辺部材の強化を図りながらさらなる底上げを狙う。空調ダクト分野は新築戸建て住宅の新省エネ基準に適合するZEH(ゼロエネルギー)住宅への適合義務化も追い風となっており、同社では成長分野と位置付けて推進。専任の営業チームを昨年1月に立ち上げて空調システムメーカーや住宅メーカーへの拡販活動を強化している。また、耐摩耗性を向上させた圧送ホースの新製品で、ゴムから樹脂ホースへの代替を見据えてさらに軽量化を図った「ネオ・ホーマー CFライト」は、これまでターゲットに定めてきた土木・産廃・製鉄市場だけではなく、今後は食品関係や水産業など幅広い分野での用途展開を目指す。軽量で低温下でも柔軟性を保持、焼却処理においても有害ガスが発生しないなどの特長をアピールしながら新規ユーザー獲得に向けた取り組みを加速させていく。

一方、製造面での取り組みとしては、伊吹工場の業務棚卸を実施して門題点を可視化。もう一段の効率化を目指すことで急激に立ち上がった需要や、工場スタッフの不慮の欠員にも対応できる体制づくりを推し進めている。ほかにも不良品検査工程を目視から自動化にシフトするなど、コロナ禍においても計画に沿った設備投資を継続。さらに現任から有志を募って多能工化も進めており、こうした製販一体となった取り組みを基盤に同社では今期の計画達成に向けてまい進する。