2023年4月25日

東海カーボン・積水化学工業
CCUS実用化ヘパートナーシップ

炭素素材・製品の関連技術で締結

積水化学工業(加藤敬太社長)は、東海カーボン(長坂一社長)とともに、CO2を一酸化炭素であるCOへと高効率で変換する技術(以下、ケミカルルーピング反応技術)によって生成されたCOを用いた、各種炭素素材・製品の製造技術(以下、CCU)およびCO2を固体炭素として回収・貯留する技術(以下、CCS)の実用化を目指し、4月18日にパートナーシップを締結した。この技術が実現すれば、化石資源への依存度を低減し、各種炭素製品生産時の脱炭素化に貢献、CCSの新たな手法の一つとなることが期待されている。

気候変動課題が深刻化し、世界中で温室効果ガスであるCO2を大幅に削減することが不可欠な課題としてひっ迫。そのような中で、CO2を燃料や化学製品に変換して活用するCCUやCO2を回収・貯留するCCSがCO2の大気中への放出を削減する技術として注目されている。

炭素製品は、自動車や建築、機械、電子部品などさまざまな用途で使われており、生活を豊かにしている素材である一方、原料の多くは化石由来の物質であることから、製造工程におけるCO2排出量も連動して増加。グリーン化が大きな課題となっている。CO2を炭素に直接変換する技術は既にあるものの、変換効率が低く、CCU実現のためにはさらなる技術開発が求められている。

現在のCCSはCO2を地中や海底に直接貯留する方法が一般的ながら、その貯蔵方法では圧力が必要となり、貯留施設の立地に制約が発生。今後拡大するCCSの需要に鑑みると、固体炭素としての貯留のような、立地の制約を受けず、圧力に依らない貯留形式の開発が望まれている。

現在、積水化学工業はケミカルルーピング反応技術において、独自開発した触媒と反応プロセスによって、CO2を90%という高い転化率でCOに変換する革新的技術を開発。東海カーボンは、100年以上にわたり培ってきた各種炭素素材・製品の製造・評価技術や設備を生かし、各種形態の原料を用いて、これに適した組成配合・製造方法により製品開発を行っている。両社の保有する技術を活用することによって革新的なCCUSプロセスを実現することができると考えている。

ケミカルルーピング反応技術により、炭素製造に由来する排ガス中のCO2を一度COへ変換し、そのCOを炭素へとさらに変換して炭素製品を製造するCCU技術とCO2を直接貯蔵する手法ではなく、個体炭素として貯蔵するCCS技術の実現を目指す。炭素製造時に発生するCO2の削減を目指すと同時に、2段階に変換することによって、CO2を炭素に直接変換する技術よりも高い変換効率を見込み、後者は圧力の利用も不要であることから、貯蔵場所を広げ、化学素材やエネルギーの備蓄につなげる。

今回のパートナーシップにおいて、環境負荷の優位性や経済性が認められた段階において、パイロットプロジェクトへと進展。30年をめどに商用化を目指す。炭素素材・製品製造時のCO2を削減し、CCUによって生活を豊かにする炭素という素材に変えるとともに、炭素製造時の排出CO2に限らず、幅広いCO2源のCCSによってCO2の排出を削減し、世界の脱炭素化と資源循環に貢献する。

東海カーボングループでは、2030年に向けた長期ビジョンとして、〝先端素材とソリューションで持続可能な社会の実現に貢献する〟を掲出。東海カーボングループにとって、CCU/CCSといった技術の実現は悲願とも言える課題であり、同社グループ単独では限界がある取り組みについては、パートナーシップを通じ、ステークホルダーとの〝信頼の絆〟を強め、有意義な共創が可能となるよう取り組む。