2023年4月25日

出光興産
ケミカルリサイクル・ジャパン設立

廃プラ原料の商業生産に設備投資

出光興産(木藤俊一社長)は、同社が千葉県市原市で稼働させている千葉事業所(秋谷博志所長)の隣接エリアに置く、使用済みプラスチックを原料とした油化ケミカルリサイクル商業生産設備(年間の使用済みプラスチック処理能力2万㌧)への投資を決定した。2025年度の商業運転開始を目指す。併せて、共同で油化装置の技術確立に取り組んできた環境エネルギー(本社・広島県福山市、野田修嗣社長)と、使用済みプラスチックを原料とした生成油の生産を行う合弁会社「ケミカルリサイクル・ジャパン」を今月設立する。今回の事業を通じて、2050年カーボンニュートラルおよび循環型社会の実現に向けて取り組んでいく。

近年、海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応が推進されていることに加え、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されるなど、プラスチックの資源循環を一層促進する重要性や社会的ニーズへの注目度が上昇。国内では、年間約820万㌧の使用済みプラスチックのうち、再生品への利用は約2割にとどまっており、構想している5割以上の使用済みプラスチックは再生利用が困難であることから、サーマルリサイクルとして焼却。大量のCO2が排出されている。この課題へのソリューションの一つとして、従来にない革新的なケミカルリサイクル技術が求められている。

同事業では、回収した使用済みプラスチックから、新たに設立するケミカルリサイクル・ジャパンが独自技術を用いて生成油を生産、原油に替わる原料として、同社の既存設備である石油精製装置および石油化学装置で精製・分解・重合することで「リニューアブル化学品」を生産する。最終的にはこのリニューアブル化学品を原料とし、新たなプラスチック製品がプラスチック製品製造会社などで生産される。

従来はごみとして焼却されていたプラスチックを再び貴重な資源として再利用することによって、循環型社会の実現とCO2削減に貢献することが同事業の目的で、同事業は、長年化石燃料を取り扱い、化石資源由来のプラスチック製造に深くかかわってきた出光興産が責任をもって取り組むべき事業であるとともに、石油精製と石油化学の両事業を展開してきた同社ならではの強みを生かすことができる事業として考えている。

千葉事業所エリアにおける同事業モデルの確立後は、国内各地の同社グループ製油所・事業所において油化装置の設置を行い、全国の使用済みプラスチックを対象としたより大規模な事業展開を進めていく。

出光興産は2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、2030年ビジョン〝責任ある変革者〟、2050年ビジョン〝変革をカタチに〟を掲げている。昨年11月に発表された対象年度23~25年度の中期経営計画では、「人々の暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たしていく3つの事業領域への社会実装を表明している。