2023年5月10日

関西ゴム技術研修所
60周年の節目迎える

ゴム産業技術発展に大きく貢献
26日に創立60周年の集い

関西ゴム技術研修所(駒水謙二所長)は4月26日、昭和37年(1962年)3月30日の同所の開設から、昨年3月に60年目の節目を迎えたことから「関西ゴム技術研修所 創立60周年の集い」を大阪市西区の大阪科学技術センターで挙行した。第9代の所長を務め、現在は名誉所長に就いている山口幸一氏が「ゴムと共に60年」の演題で講演を実施。来賓の祝辞、功労者への感謝状の贈呈が行われた後、駒水所長が「ゴム…先人に学ぶ」をテーマに同所の歴史を紹介、役割について説明した。

同所は、昭和30年代(50~60年)のベビーブーム後の集団就職の時代を背景とした事情を通じて萌芽。その発展に向けては技術者の存在が不可欠な分野ながら、関西地区では育成の土壌が整っていなかった。製品生産量の増強・合成ゴム開発の生産現場においては、課題解決などに向けた化工技術改良が不可避であったものの、技術的人材は不足。その解決策として、大阪ゴム工業会の一部事業主と日本ゴム協会関西支部役員が、「ゴム技術者は、われわれゴム業界の手で育てよう」という方針を打ち出し、同研修所が誕生した。

昨年創立60周年の節目を迎えたが、コロナ禍の影響によって延期、今年になって実施可能な状況として判断されたことから祝宴の開催が実現した。山口名誉所長の特別講演の後、あいさつを行った駒水所長は「当研修所は、これまでも10年ごとの区切りで周囲への感謝の気持ちを表してきたが、今回の60年目の節目においても研修生の派遣企業や講師を務めて頂いた方々、当研修所を支えて下さった皆さんに感謝の気持ちを伝えることができたことを非常にうれしく思っている。コロナ禍において、研修生の入学・卒業式や工場見学などといった行事の実施が叶わず、研修自体も実際に顔を合わせることなく、リモートを通じた手法に頼らざることを得なかった事態に対しては非常に大きな心残りを感じている。しかしながら、現状では通常の社会生活が取り戻されようとしており、今後は研修所としての本来の活動も果たせるようになろうとしている。研修所としての役割と存在意義は変わることなく発揮されるものと考えており、今後も引き続きご支援を賜りたい」と述べ、今後の展開に対する意欲を示した。

記念式典には、地元自治体や関係団体の代表者が来賓として出席。それぞれが祝辞を披露した。公務による多忙から、出席が叶わなかった近畿経済産業局の伊吹英明局長、大阪府の吉村洋文知事の代役によって祝いの言葉が伝えられたほか、同研修所開設の立役者としての一翼を担った大阪ゴム工業会からは、やむなく駆け付けることができなかった清水隆史会長(TOYO TIRE社長)の代理で式典に出席した十川利男副会長は「当工業会としては、ともに手を携えて活動の意義を共有してきた研修所が、60周年の節目を迎えられたことを心よりうれしく思う。研修所の創設時は、日本の高度成長期のさなかであり、活気みなぎる時代であったが、現在はあらゆる激動の積み重ねを乗り越えてきた歴史の賜物でもある。先人の尽力には尊敬の念を抱いており、感謝の気持ちを忘れることはない。今の時代は、脱炭素などといった環境問題や少子高齢化など、さまざまな新たな試練が立ちはだかっているが、先人の姿勢にならって乗り越えていきたい。われわれとしては、歴史の中で培われてきた有形無形の財産を大切にしながら新たな時代を築いていく」と述べ、今後に向けての意気込みを示した。

大阪産業技術研究所の小林哲彦理事長の祝辞の後、日本ゴム協会の斎藤拓会長の代理で桜井伸一副会長(京都工芸繊維大学)が登壇。祝辞を代読した後、桜井副会長は「研修所において印象深い内容としては、学術指導の成果だけではなく、研修生同士の交流が深まっているという事実がある。ゴム産業分野の課題でもあった企業間の隔たりを越えて技術者同士が仲間の関係を築いている。ゴム産業技術の発展において、非常に有意義な状況であると感銘した。60年という年月は人間に例えると還暦にあたる。生まれ変わるという意味合いを持っており、研修所におかれても歴史の礎を大切にしながら新しい未来に向けて踏み出していってほしい」と述べ、今後に向けての期待のほどを示した。

祝電披露の後、感謝状の贈呈が行われ、派遣協力企業(10年間で研修生5人以上派遣)24社、見学・実習協力団体9社、永年担当講師(5年以上)37人、永年担当運営委員(同)23人、特別功労者として山口名誉所長、研修の場を提供してきた化学物質評価研究機構・大阪事業所が選ばれ、それぞれ代表者が駒水所長より賞状を受け取った。式典後に行われた記念祝賀会において、派遣協力企業を代表して感謝状を受け取った十川社長は「感謝状を頂いたが、逆に感謝する立場であり、派遣企業としては研修所の発展を心より願っている」と述べ、感謝の気持ちを示していた。

【派遣協力企業一覧(順不同)】
▽岡安ゴム▽大阪ソーダ▽加貫ローラ製作所▽共和▽極東ゴム▽錦城護謨▽三和化工▽シーブロン化成▽シバタ工業▽白石中央研究所▽神栄化工▽住友ゴム工業▽高石工業▽タツタ電線▽TOYO TIRE▽東洋シール▽十川ゴム▽浪華ゴム工業▽ニッタ▽バンドー化学▽三菱電線工業▽三ツ星ベルト▽ヤマウチ▽ユー・エム・アイ