2023年5月30日

積水化学工業
新中計「Driⅴe2・0」策定

〝持続的成長〞〝仕込み充実〞図る

積水化学工業(加藤敬太社長)は、2020年度にスタートさせた長期ビジョン「Vision2030」の実現に向けて最初の中期経営計画「Driⅴe2022」に取り組んできたが、新たに23~25年度の3年間を実行期間とする中期経営計画「Driⅴe2・0」を策定。5月23日に会場とオンラインの併用で、加藤社長をはじめとする同社首脳陣出席の下、説明会を開催した。冒頭、加藤社長は「当社が2030年時点でのありたい姿を示した長期ビジョン実現に向け、非常に重要なセカンドステップ、中核となる中期計画であるとの位置付けで策定した」と述べた。

Driⅴe2・0の方針としては〝持続的成長〟と〝仕込み充実〟により、長期ビジョンVision2030の実現を目指す。基本戦略は企業価値向上への3つの取り組みとして①戦略的創造(成長加速)で新事業領域の創出を目指した仕込みの具体化②現有事業強化(利益効率)で現有事業の着実な成長とポートフォリオの磨き上げ③ESG経営基盤強化(信頼性)で持続的成長と仕込み充実に資するESGマネジメント強化を図る。戦略的創造では「革新領域」において7つの主要テーマ(ペロブスカイト太陽電池、バイオリファイナリー、航空機分野展開、次世代通信部材、スマートシティ戦略、インフラ材海外展開、医薬CDMO新領域)を選定。コア技術をベースに社内外との融合やM&Aも活用し、事業化フェーズへ進行。新事業基盤の早期確立、業績貢献を目指す。

現有事業強化については、ポートフォリオマネジメント強化による成長ドライバー事業を拡大・加速。現有事業(全33業種)を収益性(営業利益率)、資本効率性(ROIC)、成長性(売上高成長率)、戦略上の位置付け、業界ポジション、将来性、ESG観点での競争力など複数の観点から分析、評価。各事業の役割を明確化し「成長牽引事業」(高機能中間膜、放熱材、半導体・ディスプレイ材料、管路更生、耐火・不燃材料、建築・プラント配管材、鉄道枕木、海外検査システム等)と「成長期待事業」(まちづくり、買取再販などの不動産、成型品・センシング、医療(CDMO)等)に経営資源を重点的に配分。中期計画では、成長牽引事業、成長期待事業で利益増分(EBITDA)の90%以上の創出を図る。

ESG経営基盤強化では、ステークホルダーおよび同社グループの経営にとって重要性が高い課題を設定。ESG経営をさらに強化し、全社の持続的な成長へより貢献する取り組みを実施する。特に重要と位置付けて活動するのは環境への取り組み(気候変動対策、資源循環、水リスク、これらの環境への取り組みに30年まで総額400億円の投資を想定)、人的資本への投資(最適人材の発掘と抜粋、多様な人材の獲得と定着、事業を支える挑戦人材の育成)、人権への取り組み(人権尊重の風土醸成・浸透、人権デュデリジェンスの実装とリスク低減、苦情処理メカニズムの実装)の3点。

事業目標値としては、最終年度となる25年度に売上高1兆4100億円、営業利益1150億円、ROIC8・5%、ROE11・0%を計画。主要KPI(重要業績評価指標)では「社会のサステナビリティ向上」と「同社の持続的な成長」をけん引する製品・事業の拡大により、サステナビリティ貢献製品売上高1兆円超、メリハリのある資源配分と役割に応じたポートフォリオマネジメントによって各事業の強化を図り営業利益率8%超、過去の投資からのリターン最大化と将来の収益を生み出す仕込みの充実によりEBITDA1750億円、全員が挑戦したくなる活力あふれるいい会社となるため挑戦行動を起こす従業員割合60%を目指す。

投資・財務戦略については投資バランスを意識しつつ、必要に応じて負債も活用して積極的に成長を志向。リターン確度を見極めて投資を行い、中長期でROICを向上。前中期計画ではCOVID―19の影響長期化によって構造改革を優先したこともあり、成長投資は一部にとどまるも、放熱材料や医薬品原薬の生産能力増強など成長領域への投資は着実に実施。Driⅴe2・0では、3000億円のM&A枠を含め、戦略投資枠を4500億円へと拡大する。

加えて配当性向についても40%以上へ引き上げ、引き続き安定的かつ積極的な株主還元を実施する。