2023年7月20日

帝人
熊谷組と耐火建築物に利用可能な高機能繊維強化集成材の開発に着手

帝人(内川哲茂社長)は、熊谷組(櫻野泰則社長)と耐火建築物に利用可能な高機能繊維強化集成材の開発に着手した。同集成材は、帝人が保有する高機能繊維強化集成材「LIVELY WOOD(ライブリーウッド)」と、熊谷組が保有する木質耐火部材「環境配慮型λ―WOODⅡ(ラムダウッドツー)」の技術を融合して実現を目指すもの。両社は同集成材を通して中大規模木造建築物の普及を促進し、持続可能な社会の実現を目指す。

近年、環境配慮や国産材活用などの観点から、戸建て住宅以外の住宅や非住宅でも木造が選択されるようになってきており、木造の大スパン化や高層化などが期待されることで、木造建築を構成する部材に求められる性能が高まっている。また、建築基準法により一定の規模以上の建築物は耐火建築物とする必要があり、定められた耐火性能を有した木質部材を使用する必要がある。

帝人のLIVELY WOODは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を集成材の間に挟むことで、木材が持つ軽量性、断熱性といった長所を維持したまま、高い剛性や強度を実現した木質複合材料で、木造建築物の用途の拡大に寄与する。しかしながら、耐火性能を有しておらず、耐火性能が必要な木造建築物に用いることができなかった。熊谷組の環境配慮型λ―WOODⅡは芯材を木材として、周囲に耐火被覆層を施すことで耐火性能を確保した木質耐火部材の技術で、耐火建築物を木造で実現できる。その一方で、芯材の木材は既存の集成材等を基本としており、建築物の大スパン化には木材の部材性能が不足する場合があった。今回両社は、帝人のLIVELY WOODと熊谷組の環境配慮型λ―WOODⅡを掛け合わせ、互いの得手不得手を補うことにより、耐火建築物にも利用可能な新しい高機能繊維強化集成材の開発に着手した。

なお同技術は、建材試験センターではりの耐火試験を行い、はりの2時間耐火性能(耐火建築物の最上階から数えて10以上14以内の階のはりに求められる耐火性能。今回、荷重を加えながら2時間の火災を模擬した加熱を与え、火災が自然に鎮火するまでの間に、加熱を受けても構造安全性が確保されていること、荷重支持部が炭化しないことなどを確認した)を有することを確認した。

今後両社は、同集成材の実用化に向けて検討を重ね、同集成材の実物件採用と多様な木造建築物の実現を目指すとともに、木材の有効利用を通じた持続可能な社会の実現のために、さらなる研究開発を進めていく。