東レ
感光性導電材料開発
新たにナノカーボン適用
東レ(大矢光雄社長)は、電子部品、タッチセンサーなどといった配線材料として事業展開している感光性導電材料「RAYBRID(レイブリッド)」に新たにナノカーボンを適用することにより、微小な電子部品を既存技術対比30度以上、半分以下の低温・低圧条件で高信頼に接合できる新規接合材料の開発に成功した。同社では、2025年初ごろの量産目標を立てている。
RAYBRIDは、金属などといった導電性粒子、ガラス・セラミックスなどの絶縁性粒子を分散した感光性機能材料で、一般的な接合材料であるハンダなどの合金材料は、バンプと呼ばれる接合部の微細化が困難。実装時に高温・高圧が必要となるため、高速実装に対応できないという課題があり、特に次世代ディスプレイとして期待されるマイクロLEDディスプレイは、10~20㍃㍍といった非常に微小なLEDチップを、大量、高速に実装する必要があることから、大きな量産課題となっていた。東レでは、長年培ってきた銀などの金属粒子を含む感光性導電ペーストの技術をベースに、独自のナノカーボン分散技術を融合させて、感光性カーボンペーストを開発。カーボンを使用することにより、一段と高い信頼性が得られ、幅広い用途において配線との接合に対応できるようになった。
今回開発された同社の接合材料は、フォトリソプロセスによりφ(ファイ、電磁磁束)5㍃㍍まで微細なバンプの形成が可能。従来材料の限界であったφ30㍃㍍を大幅に更新し、マイクロLEDや半導体の微細実装を可能とした。
従来材料では180度で10㍋Paが必要であった状況に対し、東レ独自の有機設計によって、110度、5㍋Paと大幅な低温化・低圧化を達成。この技術により、マイクロLEDの一括実装を可能にし、生産性が大幅に向上する。
実装後に不点灯が判明した電子部品についてはリペア処理が必要となるが、従来技術では不点灯部位にバンプを再形成することは不可能で、リペア対応も量産課題の一つとして存在。今回の材料は、バンプを別基板へレーザー転写することが可能であることから、リペア箇所へのバンプ再形成を実現した。
大面積一括実装およびリペア技術については、東レエンジニアリング(岩出卓社長)と連携し、東レエンジニアリングが備えた実装設備、レーザー転写設備によって既に検証が行われている。
東レは電子部品、ディスプレイ、タッチセンサー等に20年以上にわたり感光性導電材料を展開し、強固な量産供給体制を確立。今回の新規接合材料により素材の幅を広げ、マイクロLEDや半導体等の新規分野に事業拡大を目指していく。