2023年9月10日

住友ゴム工業
「センシングコア」実証実験

モータースポーツ向けで初公開
タイヤのグリップを見える化

住友ゴム工業(山本悟社長)は8月15日、静岡県小山町の富士スピードウェイで開催された「K4―GP FUJI10時間耐久レース」において、独自のタイヤセンシング技術「センシングコア」の実証実験を行い、この取り組みのもようをメディアに初公開した。

センシングコアは、同社が1997年に実用化したタイヤの空気圧低下を検知してドライバーに知らせるタイヤ空気圧警報装置「DWS(Deflation Warning System)」の解析技術を基盤に発展させたもので、タイヤ空気圧、路面状態、タイヤ荷重、タイヤ摩耗などを検知することができるソフトウェア。同社では今年1月に開催された軽自動車の耐久レース「K4GP」を皮切りに、これまで複数回にわたって走行データの取得・解析に着手しており、約半年間の期間を要してタイヤのグリップ状態の“見える化”を実現。今回の実証実験では、これまでセンシングコアの開発に協力してきた「D―SPORT Racing Team」の参戦車両(ダイハツ ミライース)にモニターを搭載。ドライバーおよびピットのスタッフがレース中のタイヤのグリップ状態を可視化・共有できるシステムを構築して走行に臨んだ。

ドライバーおよびチームスタッフが取得できる情報としては、走行中のタイヤのグリップ状態を青・黄・赤の3色の色分けで助手席側に装置されたモニターに表示(わき見防止など安全のためにコーナーでは非表示)。余力が残っている場合は青色、限界に近い状態では黄色、限界を超えている状況では赤色で表示される。また、ピットに向けては、走行時のタイヤグリップ状態をモニターのコース上に3色の軌跡で表示。これによってコーナーでのグリップ力の変化の状況や、過去のラップ情報のほか、ホームストレートにおけるグリップ状態も時系列で確認することを可能にした。

現状のタイヤの状態を3色で表示するシステムについては、「暫定的に設定した手法であり、今後の開発の中でさらに精度を高め、ユーザーの声を取り入れながら2024年の販売開始に向けて改良を重ねていく」(同社)。

実証実験に協力したD―SPORTレーシングチームを率いる殿村裕一監督は「ドライバーとスタッフがリアルタイムかつ明快にタイヤの状態を把握できることは非常にメリットが高い。走行時のタイヤの変化に伴って負担をかけないよう慎重に走ったり、一方でこの局面では積極的に攻めようなど、状況に応じた走りを実現するための大きな力となった。また、今回は耐久レースでの活用であったが、ラリーなどでは路面の状況が刻々と変化するため、一層シーンに合った走りをするための情報を得ることができる有能なツールとなる」と、センシングコアへの強い信頼感をにじませていた。