新春トップインタビュー2024
横浜ゴム
新たな中計を策定
次世代に一層の成長機会を
【前年度の振り返りと新たな取り組みについて】
第1四半期(2023年1月~3月)については、前年から引き続き原材料、物流費、エネルギーコストの高騰といった逆風にさらされ、中国においては日系自動車メーカーの販売台数が不振に陥るなど厳しい環境に置かれた。しかしながら、海外市場を中心に販売が伸びを見せ、日本国内における降雪や円安に伴う為替面によるプラス要因に押し上げられ、MB事業においても売上収益は過去最高を達成することができた。第2四半期においては、国内市販用タイヤにおいて値上げによる反動減があったものの、海外市販用タイヤが引き続き堅調に推移し、MB事業における値上げなどといった改善効果が成果を引き出した結果、売上収益は過去最高を遂げた。第3四半期では強力なインフレや景気減速に伴う環境悪化に見舞われたものの、北米などにおける販売が伸びを見せ、原材料高騰や物流費のコスト要因も改善された状況によって、売上収益に加えて事業利益や当期利益も過去最高を達成することができた。通期においても過去最高に向けて事業展開に拍車を掛けている。
前期における取り組みについては、昨年3月に本社所在地を東京の新橋から神奈川県の平塚に移転し、生産・販売・技術・物流機能を1カ所に集中させ、一体化によるスピーディーな意思決定が果たせる陣容によって、変化の激しい環境に勝ち抜くための体制作りを行った。さらには品川事務所を新設したことで、リモートによる業務効率化やサテライトオフィスの導入などによる働き方改革を推し進めている。
昨年5月には、農業機械用・産業車両用タイヤなどの生産販売を行っているスウェーデン企業のトレルボルグ・ホイール・システムズ(TWS)の買収を完了させ、新たに「Y―TWS」としてスタートさせた。製品面では、当社のグローバルフラッグシップブランドである「アドバン」、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「ジオランダー」、ウィンタータイヤにおける高付加価値の新商品の拡販に努め、北米や中国、インドなどのアジア地区で堅調に推移したこともあって、全体では前年同期の販売本数を上回った。Y―TWSではブランド力を生かした結果、需要以上の販売を確保することができた。MB事業においては、ホース配管事業が米系の自動車メーカーにおけるストライキの影響を受けたが、日系自動車メーカー向けが堅調に推移し、工業資材事業についてはコンベヤベルトが国内、海外ともに大きく販売を伸ばしたほか、海洋商品も好調に推移した。航空部品も民間航空機向け補修用品販売が好調であったことから、事業全体では売上収益、事業利益ともに前年同期の実績を上回った。
【ヨコハマ・トランスフォーメーション2023(YX2023)の進ちょく状況については】
タイヤ消費財では市販用タイヤでは当社初のEV用市販タイヤ「アドバン・スポーツEV」を市場に投入した。ジオランダーでは2023年の販売テーマを〝泥試合〟と設定し、オールテレーンタイヤ「ジオランダーA/T XD」、オールシーズンタイヤ「ジオランダーCV 4S」の2品種を新商品として発売するなど、高付加価値商品の拡充に努めた。
タイヤ生産財については、OHT事業でTWSの買収により、農業機械用および産業車両用分野で、ティア・ワンからスリーまで全ブランドのラインアップが整ったことで、市場競争力を格段に高めることができた。市況変動に対する高い耐性を実現できたほか、当社全体の消費財と生産財の構成比が1対1と適正化され、生産財ではOHTが2、TBR(トラックバス用)が1となったことで、市場に対しても収益力の高い構成比が構築できた。TBR事業においては、米国のミシシッピ工場において推し進めていた改善が進んだことによって、年間で過去最高の生産本数を達成する見込みを立てている。
MB事業では、4月からマネジメント体制を変更して、事業再建のための「100日プラン」を策定して実行しており、意思決定の迅速化や組織、適材適所の人材配置等の事業運営の見直しを行うことで、全社一丸となって計画の達成に向けて突き進んでいる。サステナビリティ経営に向けては、環境分野では新城南工場の太陽光発電設備を稼働させたほか、三島工場のモータースポーツ用タイヤ生産ラインにおいて、再生可能エネルギー由来の電力への切り替えを行った。コーポレートガバナンス面では、3月から監査等委員会設置会社へと移行するとともに、政策保有株式縮減をさらに進めたことで資本効率の向上を図った。
【今後の見通しと、抱負について】
タイヤ事業では、引き続いて〝高付加価値品比率最大化〟を目指して、ブランド価値向上と拡販を着実に推進するとともに、今後もプレミアム商品に対するお客様の期待にこたえていく。成長ドライバーとして位置付けているOHT事業においては、Y―TWS買収後のシナジー効果の刈り取りにグループ全体で取り組むことで、さらなる収益率の改善を目指す。MB事業では、茨城工場の油圧ホース、平塚製造所のコンベヤベルトの増産設備の稼働を本格化させ、需要の取り込みに努めることで収益を伴った成長を目指す。サステナビリティ経営に対しては、事業を強化する実際的な事業戦略の一つとしてとらえており「環境」「社会」「ガバナンス」の観点からさまざまな活動を通じて持続的な企業価値向上につなげることによって、社会の持続可能性に貢献する取り組みが企業の責務と考えており、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーなどに向けた活動をそれぞれのロードマップにのっとって着実に進めていく。コーポレートガバナンスにおいては、すべてのステークホルダーから〝ゆるぎない信頼〟を得ることができる経営を目指すことで、引き続き健全で透明性と公平性を備えた経営に努める。
自動車産業は、100年に一度の大変革期を迎えようとしている。乗用車の電動化がさらに進むことが予想され、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといったサステナビリティ課題も、もはや与件として取り組むべき時期に差し掛かっている。そうした環境にあって、当社では新たな中期経営計画を2024年に策定し〝収益を伴った成長〟を引き続き目指す。ポスト「YX2023」となる新たな中計では〝深化と探索による変革〟の総仕上げをテーマに、積み残したすべての課題に対処することによって負の遺産の解消を行い、次世代にさらなる成長の機会を提供する。現在、新中期経営計画策定の最終段階に差し掛かっており、当社としてはこの計画を通じて、次の新たな成長を見据えたロードマップを一段と明確化していく。