【ホース・チューブ・継手特集①】東拓工業
「しめTAC」販売強化
23年度の利益水準維持を
東拓工業の2024年3月期の業績は、事業分野ごとで需要の濃淡があったものの、全体的には計画を達成して売上高は前期比2ケタ増で着地する見込み。上期までは前年同期比微増であったが、下期以降は販売の勢いが加速した。一方、利益面においては、ここ数年は原材料をはじめとする製造コストの高騰や物流、梱包資材など、あらゆるユーティリティコスト上昇で収益は大きく圧迫されていた。
主力需要分野の動向としては工業用ホースは、半導体関連の停滞が同社の販売にも大きく影響を及ぼしたが、土木ホースが好調を維持したことに加え、民間企業の渇水対策向けの需要などをタイムリーに取り込めたことなどで減少分をカバーした。一方、電設資材は半導体関連企業の工場建設における需要が活性化。ほかにも各地都市開発における需要や無電柱化事業の案件が継続しており、関西圏のビッグプロジェクトにかかわるインフラ整備需要も売り上げに貢献した。また橋りょう関係においては、東海環状自動車道や新名神高速道路の施工で同社のポリエチレン製シースが採用されており、全国的に顕在化している橋りょう改修工事の需要拡大も販売を後押しした。
現状ではコロナ禍による行動制限も緩和されたことで、従来通りの顧客を訪問しての対面営業活動を推進。ユーザーの使用メリットが高い新製品を投入するなど、製・販の協業によって日々の営業活動に円滑かつ効率的に取り組んでいる。同社では、コロナ禍で進展したオンラインによるコミュニケーションと対面による営業をケースバイケースで使い分けながら、営業活動を行う方針だ。
ユーザーニーズを的確に開発へと落とし込んだ新たな展開としては、大口径サクションホース用において、オリジナル金具「しめTAC」の販売を強化。新たにφ125、φ150を追加した。取り付け作業はボルトを締めるだけで現場で簡単にできることがユーザーの高い評価につながっている。また、このほかにホース製品では摩耗によって色が変化し、交換時期の目安が分かる製品の上市も予定。同社ではこういった顧客ニーズに対応した製品の拡充で、差別化の源泉としていく。
これまで進めてきた働き方改革の取り組みについては残業時間の削減を念頭に、製造スタッフの増員を実施。工場の共有部分の改装や夏場の暑さ対策として遮熱塗装の施工、以前の2倍近い空調機器の増設などを行っており、スタッフが働きやすく、やりがいを覚えるような労働環境の整備に一層力を入れている。昨年実施したエンゲージメントサーベイにおいては、一昨年の調査よりスコアが向上しており、同社ではこうした取り組みが奏功して従業員同士の連携がさらに緊密となり、業績面でも大きくプラスの効果が表れたと確信している。
事業推進のかなめである人材の育成については、親会社の長瀬産業における各種の教育プログラムに参加。同グループにおけるさまざまな製造業のネットワークの中で、安全・環境・品質などの項目で協業による改善活動を進めている。長瀬産業はグループ全体でグローバルに事業を展開しており、同社においても今後は国内事業だけではなく、改めて海外展開への検討を進めていく考え。
来期の計画については、売上高は2023年度の実績に対して5%アップの計画で臨む。工業用ホースでは半導体製造装置向けの回復を見込んでおり、土木資材についても安定した需要が継続していることから、一層の拡販を目指していく。しかしながら、人員拡充に伴う労務費の上昇と原材料価格・エネルギーコスト・物流の2024年問題における影響で、厳しい状況が継続する見通しであり、23年度の利益水準を維持することを目標に推進していく。