2020年5月10日

TOYO TIRE
MI用いた技術を開発

開発製品のさらなる価値向上を

TOYO TIRE(清水隆史社長)は、同社独自のナノバランステクノロジーの一環として、新たにマテリアルズ・インフォマティクス(以下、MI)を利用したゴム材料の特性予測技術ならびに材料構造の最適化技術を開発した。ナノバランステクノロジーは、社会が求める高性能なタイヤの開発を実現する同社独自のゴム材料開発基盤技術で、時代が求めるニーズに伴って継続的に技術革新を誘起。今回、テクノロジーの一環としてMIを採り入れることで、人工知能(AI)などが効果的に生かされ、新たな材料や代替材料の探索などが従来の手法と比べて効率良く行うことを可能にした。

これまでは、技術者の経験値、そして繰り返し行われる実験による試行錯誤によって、新素材へのアプローチが行われてきたことから、開発に要する時間の長さが相当量に上り、開発面の大きな課題の一つになっていた。近年になって材料開発のプロセスにおいて、AIや機械学習などが用いられ始めており、MI技術の登場によってその領域における潮流に変化が到来。同社では、資産としてストックした既存データをベースに、2018年よりMI技術を用いた配合と物性の予測技術の検証を本格的に行ってきた。技術の精度を向上させ、昨年には外部情報とのひも付けといった対象データの拡大適用も検証。今後、保有データをフルに有効活用できる環境を整備するとともに、従来にない視点での解析方法や予測データを用い、開発を高度に最適化するMI技術を駆使した新素材の実現を進め、〝高性能な製品開発〟と〝開発時間短縮・コスト低減〟の両立を図っていく。

ゴム材料は主要原料であるポリマーに補強剤、各種薬剤が添加された複合材料で、いずれの薬剤も製品特性に直接作用することから、その種類や量、加工方法の調整による複雑な制御が必要。今回、MI技術を導入することによって特性や配合の推測値を高精度に出力するシステムを構築したことにより、最小限のテストで効率的な材料開発を可能にした。システムには、予測に使用する変数間の非線形な関係を関数としてモデル化した非線形推定モデルを実装しており、データベースに外部情報を取り込むことによってこれまでの知見を超えた拡張予測を実施し、高性能材料の開発にも活用していく。

同社では、ナノバランステクノロジーの〝分析〟の領域において、多様なツールを活用しながら、材料特性の要素を階層別に構造分析あるいは評価することで、開発上の課題を抽出。取得した材料構造や化学構造はデータの次元が異なることから、これまでは主に間接的に特性を推測するための情報として活用してきた。今回開発したMI技術を採用したことで、これら構造情報から材料特性の推測値を算出することに成功。”目標とする特性値から構造を最適化する〟という逆問題にも応用できることから、新材料の開発領域にも適用・拡大を進めていく。

これらの技術は、革新的ソフトウェアやサービスを通じ、幅広い産業にAIテクノロジーの活用や高度なIoTソリューションの導入を進めているアナリティクスのリーディング・カンパニーであるSASインステュートジャパン(堀田徹哉社長)との協業で実現可能となった。

TOYO TIREでは、独自のゴム材料基盤技術であるナノバランステクノロジーとタイヤ設計基盤技術「T―MODE」の両輪を基軸として確立し、双方を連携させて高性能・高品質な製品の開発を推進。タイヤそのものをセンシングデバイスとして活用していく可能性を追求し、将来のモビリティ社会に貢献できる付加価値の高い製品を創出していく考え。

今後、TOYO TIREではゴム材料開発プロセスにおいてMI技術をフルに生かし、開発製品のさらなる価値の向上を図っていく。