2020年5月30日

JSR
東大理物と包括的連携に合意

協創拠点「CURIE」を設置

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(五神真総長、以下、東大理物)とJSR(エリック・ジョンソンCEO)は、包括的連携に合意し、先月1日から共同研究を開始した。東大理物は包括連携を通して社会に深く浸透したさまざまな材料の機能の理解を深め、その探究を通して普遍的真理と新たな学問領域を見いだしていく。また、JSRはその成果としてアカデミアと産業界の融合による新たな高機能材料を社会に導出する。本包括連携にはフェローシップも含まれており、このような取り組みは東大理物130年以上、JSR60年以上の歴史の中で、互いに初めての試みとなる。

具体的な取り組みとしては次の3点が挙げられる。

①東京大学とJSRによる物理と化学を融合させた共同研究拠点の設置=包括連携では東京大学本郷キャンパス理学部1号館に協創オフィスとして「JSR・東京大学協創拠点CURIE」を設置して共同研究を実施する。協創拠点の名称であるCURIEは、物理学賞、化学賞の2度のノーベル賞を受賞したマリ・キュリー氏の名にちなみ、物理と化学の融合による大きな研究開発成果の創出を願い、命名された。加えて研究開発で重要な「好奇心=CURiosity」、「知性=Intelligence」および「感性=Emotion」の意味も含まれている②世界に羽ばたく人材育成―博士課程学生への給付型フェローシップ「JSRフェローシップ」の創設=包括連携において、化学をベースとした実学と物理学との融合を目指した共同研究を推進するとともに、物理学専攻の博士課程学生を対象とした給付型フェローシップであるJSRフェローシップを創設。本フェローシップでは今後ますます重要になる理論、実験に限らず幅広い物理学を通して学術界、産業界を発展させうる人材を支援することを目的としている③サイエンスと産業技術の融合による新技術・新材料の創出=本包括連携を通じ、JSRは製品の機能発現原理を深く理解し、サイエンスに基づく物理と化学の融合により非常に高い差別化性能を有する製品開発を推進していく。さらに、東大理物はこの連携の中で多様な現象の探究と物理的視点に立った学理追求を行うことで、次世代の科学と応用の基盤となる成果を世界に発信していく。

今回の包括的連携についてJSRの川橋信夫社長は「東大理物は素粒子から光、物性、宇宙、さらには生物まで、あらゆる分野を網羅する日本最大かつ世界でも最大規模の物理学研究の拠点。JSR製品の機能を飛躍的に向上させるサイエンスをともに構築できる最適なパートナーと考えており、今回の包括連携がスタートできたことを大変うれしく思う。化学と物理という未来志向の包括連携となるが、本包括連携の成果として弊社の企業理念であるマテリアルズ・イノベーションを起こし、これまでになく高い性能を持った製品を社会実装する。同時にJSRフェローシップで将来の日本の産業界を発展させる人材を育成することで社会に貢献していく」とコメント。

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻長の常行真司教授は「本包括連携は分野、考え方、目的、手法などが大きく異なる組織間での異文化・異分野連携の象徴的な活動であり、それゆえに従来型の連続的な成果ではなく、全く予想もしていなかったような飛躍的な成果、さらには新しい分野を創出をも可能にしてくれると確信している。また本連携では共同研究だけでなく、博士課程の学生への給付型フェローシップも提供して頂くことになり、大学院学生への支援の新しいモデルケースになることも期待している。本包括連携を通じて材料分野だけでなく、幅広い科学分野で成果を創出し、さらには、基礎研究だけでなく社会の課題解決にも意欲的な人材の育成と輩出を目指す」と、両者はともに期待の言葉を述べている。