2020年11月5日

日本ゼオン
2021年2月期第2四半期決算

高機能樹脂事業好調
四半期決算では過去最高

日本ゼオン(田中公章社長)は30日、音声ライブ配信によって「2021年3月期第2四半期決算」の説明会を行った。同時に中期経営計画の「SZ―20PhaseⅢ進捗状況」の報告も行われ、実行期間における同社の取り組みと成果についても解説した(詳報次号)。会見には田中社長のほか、松浦一慶取締役執行役員も出席し、質疑応答にも対応した。

当期の同社の売上高は前年同期比15・9%減の1374億1500万円、営業利益は同34・0%減の99億1300万円、経常利益は同31・8%減の109億3900万円、四半期純利益は同29・2%減の81億8200万円となった。長引く米中貿易摩擦、感染の拡大が続く新型コロナウイルスによる世界経済悪化の影響を強く受けた。第1四半期からの流れで見れば、エラストマー事業で1億円の損失から9億円の利益へと黒字化、高機能材料事業でも1億円の増益となっており、トータルで12億円の改善が図られている。特に高機能材料は前年比、第1四半期と比べて増収増益となっており、四半期決算としては過去最高益を達成。高機能樹脂関連では光学フィルムが堅調に推移しており、中大型用途向けともに前年同期の出荷量を上回った。今後の見通しもテレビは大型化が進む傾向にあり、タブレット端末も教育現場での浸透が期待されるなど、明るい材料が見通せる。高機能樹脂事業に関して、同社では「かねてより投資を重ね、育ててきた事業分野が大きく育ち、柱として確立できる手ごたえを感じている」(田中社長)。

セグメント別では、エラストマー素材事業部門の売上高は同22・5%減の712億7100万円、営業利益は同86・1%減の8億2900万円。合成ゴム関連では、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済悪化の影響が継続して響いた。主要市場である自動車産業向けをはじめ、一般工業品用途向けの大幅な落ち込みからの回復の足取りも重く、国内・輸出・海外子会社とも低調に推移した。合成ラテックス関連では、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に医療・衛生用手袋向けの販売は堅調に推移。化粧品材料や一般工業品用途などの需要減に加え、原料動向に連動した価格下落により、売上高・営業利益ともに前年同期に及ばなかった。化成品関連では、欧米需要は底堅く販売数量は前年同期を上回るなど好調。原料市況の下落に伴い製品市況も下落し、売上高は前年同期を下回ったものの、営業利益では前年同期を上回った。同事業の営業利益における前年同期との要因別利益差異は、原料価格の影響などで43億円、販管費差で10億円のプラス要因があった一方、コロナ禍の影響による出荷減の数量差で23億円、原料価格連動、市況価格の影響などによる価格差で44億円、為替差損で16億円のマイナス要因に見舞われた。原材料価格の下落などにより、第1四半期の損失から、第2四半期単体(7~9月)は黒字化しており、「取り巻く環境はこのまま上向くと見ており、下期での回復を見込んでいる」(同)。要因としては、自動車生産の回復とともに、タイヤ需要が戻り始めており、部品についてもサプライチェーンによるタイムラグはあるものの、いずれはコロナ禍以前の状態に戻ると読んでいる。

高機能材料事業部門全体の売上高は同2・3%増の465億500万円、営業利益は同6・1%増の97億4700万円。高機能樹脂関連では、光学フィルムが堅調に推移した。その結果、高機能樹脂全体では売上高、営業利益ともに前年同期の実績を上回った。高機能ケミカル関連では、トナーおよび電池材料、化学品および電子材料は伸び悩んだ。同事業の営業利益における前年同期との要因別利益差異は、出荷量増による数量差で4億円、工場稼働率上昇、原料価格の影響などによる効果により13億円増がプラス要因として強く働き、価格差による6億円、販管費増による3億円のマイナス要因をはねのけた。販管費の増加要因は試作品の製作コスト、出荷量増に伴う運賃や包装費の上昇などが含まれており、実質的にはもっと良好な水準にある。

その他の事業部門全体の売上高は同23・8%減の205億8500万円、営業利益は同60・8%減の4億5900万円。子会社の商事部門などの売上高が伸び悩んだ。

通期については、直近公表の業績予想からの修正はなく、売上高2750億円、営業利益160億円、経常利益190億円、当期純利益は1130億円を見込んでいる。