2020年11月5日

ソディック
不活性ガス溶解射出成形システム発売

INFILT―V
生分解性プラの生産性向上

ソディック(古川健一社長)は、生分解性プラスチックの生産性向上を目的に「eV―LINE(イー・ブイライン)」電動射出成形機「MSシリーズ」に搭載できる、不活性ガス溶解射出成形システム「INFILT(インフィルト)―Ⅴ」を開発し、11月より発売を開始する。インフィルト―Ⅴは、樹脂材料の粘度を低下させる可塑剤の役割を果たし、従来、薄肉成形が困難であった生分解性プラスチックでも薄肉で深物の成形加工を容易に実現することを可能にする。

近年、廃プラスチック有効利用率の低さや海洋プラスチックなどによる環境汚染が世界的な課題となって深刻化している。これらを解決する材料として、生分解性プラスチックが挙げられるが、自然界の微生物により分解され、地球に還ることから、その利用拡大が期待されている一方、溶融したときの粘度が高く、成形加工が困難という課題があった。そこで同社では、精密成形品の安定性に優位なⅤ―ラインに一層の生産性向上を開発コンセプトとした、同社独自の不活性ガス溶解射出成形システムであるインフィルト―Ⅴの開発に至った。

同社は今回、独自開発・製造の可塑化・射出装置である「V―ライン」を搭載したMSシリーズにインフィルト―Ⅴを搭載し、樹脂材料を金型に充てんする射出プランジャから不活性ガスを直接注入する新しいシステムを開発した。

一般的な射出成形機では、可塑化部と射出部が同軸上に一体構造となる〝インライン方式〟が採用されているが、同社では、可塑化のみを行う方式を採用した。可塑化部と計量・射出を行う射出部を分離した構造となるV―ライン方式を独自に開発し、正確で再現性の高い精密成形を極めることで、可塑化・計量・射出の優れた安定性を実現。V―ライン方式が分離構造であることから、不活性ガスを射出プランジャに直接注入することが可能となり、その高度な制御が精密に行えるようになった。計量された樹脂材料に射出プランジャから不活性ガスを直接注入することで、ガス量を精密に注入することが可能となったことから、不活性ガスを溶解させている樹脂材料を安定して計量・射出することを可能とした。

不活性ガスを射出プランジャに直接注入することにより、ガスを樹脂材料に溶解させ、その粘度が低下する現象を利用することで、従来では困難であった薄肉成形に対して、樹脂材料を安定して充てんできる効果を得ることができる。インフィルト―Ⅴの効果の実証として、樹脂材料に生分解性プラスチックを、不活性ガスに炭酸ガスを使用し、肉厚0・4㍉、全長105㍉のコップ形状も、薄肉で深物の成形事例として生産することができる。

標準成形では充てん不足によるショートショットが発生し、安定成形が困難であったが、インフィルト―Ⅴシステムを使用した場合、流動長が標準対比で18・7%と向上し、射出圧力が48・3%と低減され、ショートショットすることなく、スムーズに樹脂材料を完全に充てんさせることが可能となり、生分解性プラスチックを用いた成形での生産性向上が期待できる。

インフィルト―Ⅴの概要は▽使用可能不活性ガス=CO2、N2▽不活性ガス供給最大流量=10L/min▽不活性ガス供給最大圧力=4MPa▽安全装置=ガス漏れ検知、リリーフバルブ▽最小/最大金型厚さ/ディライト(MS―100搭載時)=200/450/800㎜。

販売価格(税別、付帯する成形機本体は含まず)は、システム装置一式で1650万円から。

同社では今後も持続可能な社会の構築に向け、積極的に地球環境にやさしいバイオマスプラスチックであり、とりわけ生分解性プラスチックの成形加工技術の開発を推し進めていく。