2020年11月15日

日本ゼオン
中期経営計画「SZ-20PhaseⅡ」進捗状況を報告

上半期を経て報告
高機能材料事業に手ごたえ

日本ゼオン(田中公章社長)は10月30日、音声ライブ配信によって「2021年3月期第2四半期決算」の説明会(本紙既報)を行い、同時に中期経営計画の「SZ―20PhaseⅢ進捗状況」の報告も実施した。実行期間における同社の取り組みと成果について、田中社長自ら説明を行った。

SZ―20PhaseⅡでは、2020年のありたい姿として〝化学の力で未来を今日にするZEON〟を掲げ「わたしたちゼオンは、一人ひとりの成長を通じて、お客様の夢と快適な社会の実現に貢献し続けます」の事業姿勢の下、定量目標として20年度連結売上高5000億円以上を旗頭に出帆。「顧客に商品を購入してもらい、売上高を伸ばすことこそが社会への貢献」という意識の下、21年3月期第2四半期まで航海を続けてきた。セグメント別では、エラストマー事業については、成長市場へのグローバルな対応とコスト競争力強化によって、強みを発揮できる事業をさらに深化。蓄積してきた市場からの信頼と顧客との関係を生かし、新たな可能性を探索して成長につなげる。高機能材料事業については、重点的なリソース投入と外部との連携強化により、市場成長と技術発展のスピードに対応して事業を拡大する。これらを目指した事業戦略の結果、米中貿易摩擦、新型コロナウィルスによる世界経済悪化の影響に見舞われたことから、21年3月期第2四半期は減収減益となり、エラストマー素材についても、自動車産業、一般工業用などが弱含んだことで減収減益となった。しかしながら高機能材料は、化学品、光学フィルムが堅調に推移し、前年同期比、当年第1四半期比ともに増収増益を達成、21年3月期第2四半期は過去最高の売上高・営業利益を実現した。株主還元の状況としては、ROEが低下気味にあるが、配当は基本方針通り維持。「財務状態は良くなっており、リーマンショック以上と言われた新型コロナウイルス感染症拡大のショックによる影響によるダメージも少ない」(同)。

投資の進ちょく状況については「コロナ禍にかかわらず成長に向けた投資は継続する」(同)。ただしエラストマー素材におけるタイのアクリルゴム製造工場(年産5000㌧)については、今年5月に完工しているものの、新型コロナウイルスによる入国制限などの影響もあって足止め状態。ただし来年4月には販売が開始できる状態にまでもっていく予定。高機能樹脂については、敦賀の大型TV用光学フィルム新ライン建設(年産5000万平方㍍)は、既に今年の4月に稼働しており、10月から販売を開始する。水島の光学樹脂の生産能力増強(年産4600㌧)については来年7月完工予定。

同社としては、世界市場での自動車生産動向として、20年以降EV化が加速するが、内燃機関搭載車の生産台数が27年ごろに19年レベルに回復するが、その後は漸減すると予測。内燃機関搭載車は、引き続き主流を維持することから、重要部品に対する市場の要求に対して、同社では特殊ゴム製品と技術サポートによってニーズにこたえていく。PV/PHV市場は、20年はコロナ禍で年前半は苦戦すると見られているものの、年間では前年を上回る見込み。中国・欧州の急成長が大きなカギを握っており、中国市場では、新型コロナの影響からの着実な回復傾向に向かっており、ガソリン車にも補助金適用が決定、EU市場では、新型コロナの影響が残るものの政府の補助金の効果もあって、販売台数は年間で前年を上回る状況で、同社では今後伸びていくとみられる欧州・中国に重点的に販売強化を図っていく。

高機能樹脂については、光学フィルム市場動向と同社の今後の対応としては、TVの大型化、高画質化ニーズに向けては敦賀工場の2500㍉㍍幅ラインによって大型化に対応。スマートフォン市場での台数回復は2年後と見ており、5Gによる買い替え需要に期待。OLED用タッチセンサー、反射防止、位相差フィルムなどで顧客満足度を高める。タブレットに対しては、在宅/教育用での拡大見通しを立てており、今後は安定した需要への対応に努める。