2020年11月25日

日本ゴム工業会
「第21回幹事会」開催

生産・輸出入動向 新型コロナの影響鮮明に

日本ゴム工業会(池田育嗣会長)は10月29日、東京都千代田区の経団連会館において「第21回幹事会」を開催した。同工業会は本年7月20日に「創立70周年」を迎えたことで、このタイミングに合わせて「70周年記念行事」を実施する予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の状況において、式典の実施は不可能と判断。池田会長は当日に発表したコメントにおいて「今回はコロナ禍により、70周年記念行事を断念せざるを得なかったのは痛恨の極み」とした上で「ピンチはチャンスでもある」と前向きの気持ちを示した。

池田会長が、ピンチをチャンスにとらえる考え方として「テレワーク、会議のやり方、紙資料の廃止など、今までは当たり前と考えていたことが、実は不要や無駄であったと気づかされたことも多々あった。こういうときこそ工業会が中心となって会員の情報交換を促進することで、ゴム産業がさらに強いモノづくりの事業になるべく取り組んでいきたい。来年5月の総会時には、仕切り直して70周年記念行事を開催する予定であり、そのときには皆さんと笑顔でこの輝かしい歴史をともにお祝いできるよう願っている。先行きが全く見えない状況となっているが、歩みを止めることなく進んでいきたい」としている。記念行事の開催予定は、来年5月21日に幹事会終了後に実施される予定ながら、日程が変更する可能性もある。

当日の幹事会で発表された本年1―8月の「ゴム製品の生産・輸出入概況」によると、ほとんどの品目の生産実績が3―4月を境に大きな角度で失速、新型コロナウイルス感染症拡大の影響がこれ以上にないほどに鮮明に表れている。最も影響が少なかったと思われるゴムベルトでさえ、3月の前年同月比3・8%減から緩やかな降下角度で、7月の同20・8%減で底を打ち、8月には同6・3%増と回復。自動車タイヤは3月の同9・3%減から5月に同47・9%減、6月には同52・1%減となり、ようやく底を打った。それでも8月は同15・0%減にとどまり前年同月の実績を割り込んでいる。ゴムホースも3月の同8・0%減から5月の同45・1%減と急降下、V字回復を果たしたものの8月は同20・6%減となり、完全な回復を果たせていない。工業用品は3月の同6・6%減から5月の同49・8%減と前年同月比で半分近くまで落ち込んだ後、勢いを取り戻し始めたが8月の時点で同18・5%減と前年同月よりも大きく減少した。

自動車タイヤが最も顕著にダメージを受けているが、品目別の分類別ではベルトではVベルト・その他が最も下落率が高く、底となった5月の生産量は同42・5%減。ゴムホースについても、自動車用ホースが群を抜いており、底となった5月には同53・0%減となり、前年同月の実績の半分以下となっている。自動車の生産減が各業界に大きなダメージを与えたことが明確になっており、実際に自動車の生産動向を見ても、底を打った5月には同61・1%マイナス、バス用タイヤはさらに厳しく同77・2%減と最低水準にまで落ち込んでいる。4月7日~5月6日まで政府による非常事態宣言が発令されていた期間は、経済活動や国民生活がほぼこう着していたことから、その影響が5月に最も色濃く出ている。しかしながら現状では、自動車生産に回復傾向が見られ、それに伴ってタイヤ、ベルト、ホース全般に回復ムードをうかがわせている。

同工業会が発表した中小企業会員の景況調査でも、当期において直面している経営上の問題点として「新型コロナウイルス感染拡大への対応」が「需要の停滞」「生産設備の不足・老朽化」に次いで3番目に挙げられており、対応すべき課題の内容についても多彩。「航空貨物運賃が高騰している(前年比7~10倍)」「アクリル板や消毒アルコールなどの購入代金が大きく増加」「顧客とのコミュニケーション不足」「営業部門、特に海外営業ができない。海外赴任者交代、海外出張の打ち合わせが困難になっている」「訪問営業ができず新規受注が難しい」「出張制限、来客制限、事業内ソリューションの確保(別室確保)、工場間移動制限」などが挙げられている。