業界の新型コロナ関連の動向
島津製作所
新型コロナウイルス検出試薬キット発売
検査時間約1時間に短縮
島津製作所(上田輝久社長)は、かねてより開発を進めていた「2019新型コロナウイルス検出試薬キット」を4月20日に発売する。価格(税別)は22万5000円(100検体分/キット)で、月間生産量は10万検体分。当面は国内のみの販売となるが、5月以降の海外輸出も視野に入れて準備を進めていく。
現状の遺伝子増幅法(PCR法)による新型コロナウイルス(SARS―CoV―2)の検出では、鼻咽頭拭い液などの試料(検体)からRNAを抽出して精製する煩雑な作業が必要となるため、多数の試料を迅速に検査する際の妨げとなっていた。本キットの使用によりRNAの抽出・精製工程を省くことがでるため、検査に要する人手を大幅に削減でき、かつ2時間以上かかっていたPCR検査の試薬および試料の調製、前処理(加熱)、反応、検出という全工程を従来の半分である約1時間に短縮できる。96検体用PCR装置を用いて、96検体を検査した場合でも1時間半以内(処理液の混合に15分、加熱処理に5分、PCRに65分で計85分)で行える。また手作業を行わずに済むため、人為的なミスの防止にもつながる。さらに誤操作などで、陽性にもかかわらず遺伝子増幅が起きなかった場合に誤って陰性と判断しないよう、本キットの反応液には増幅工程が正しく進んだことを確認するための参照成分を添加。これにより、偽陰性が生じる可能性を低減し、検査結果の精度向上が期待される。
「新型コロナウイルス検出試薬キット」は、同社独自の「アンプダイレクト技術」をベースに国立感染症研究所のマニュアルに沿って開発された。同技術は「生体試料に含まれるたんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制できるため、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できる」というもの。同社は、これまでに同技術を用いて腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルスなどの病原体検出試薬を開発・販売しており、ここで培った技術を応用して今回の新型コロナウイルス検出試薬の開発を行った。