2022年4月5日

【ホース・チューブ・継手特集】十川産業
MEGAサンブレーホース

需要伸長継続見通し

十川産業が手掛けるプラスチックホース・チューブ事業の実績は、前期(2021年3月期)の売上高が前期比109%となり、計画も達成して増収増益で着地した。社会経済全般がコロナ禍によってさいなまされ、あらゆる業種が軒並み業績に大きな影響を被った20年においても、同社の業績は売上高で同97・6%となり、影響は微減にとどまった。コロナ禍前の19年の実績を上回っており、周囲の環境変化に惑わされることなく、着実に成長路線をたどっている。

ここ数年にわたって原材料費や運送費、ユーティリティコストなどが軒並み高騰し続けており、同社でもやむなく昨年9月に製品全般において10~20%の価格幅で値上げを実施。コストアップ分全般の解消には到底及ばないものの、製品の安定供給に必要な値上げ幅としてユーザーからの理解が得られた。しかしながら価格高騰の勢いは落ち着く気配を見せず、昨年末以降も原材料の値上がりは継続。搬送費、ユーティリティ、加えて包装資材関連でもコストアップが続いており、電力に関しては30%以上の幅で値上がりしている。ホースという製品は、価格に対する原価比率が高く、ユーティリティについても内部吸収できるレベルを超越。背景としてはフッ素樹脂などといった原材料が全般的に供給不足に陥っており、メーカーとしては原材料の確保による安定供給に向けても努力を続けている。フッ素樹脂は代替材料も見当たらず、必要とする量的確保の確証が持てない場合、事前に受注量を決めることによって供給責任を果たす事態に陥る危機感も抱えている。調達だけでなく納期の問題もあり、非常に厳しい環境に陥っている。

国際情勢を見渡しても円安傾向が価格高騰を後押ししており、ひっ迫度は過酷さを増す見通しから、同社としては5月1日納入分から二次値上げを実施することに決めた。

原材料を取り巻く厳しい事業環境にあって、PVCは比較的に落ち着いた動きで推移。そういった背景から、安定供給などの観点で見れば、PVCを使用した製品の優位性が高いが、同社の工業用ホースで、軟質ポリ塩化ビニール(PVC)製の「MEGAサンブレー」ホースが市場で好評。高耐圧性が特長で、内径4~25㍉で1・0㍋Pa 以上に耐圧性能を向上させている高弾性樹脂を採用しており、流体の目視確認も可能となっている。特に半導体製造装置向けで需要を伸ばしており、前期の売上高の好調な伸びも、MEGAサンブレーホースの好調さに支えられている側面がある。半導体製造装置や電子部品メーカーからの引き合いが大きく、需要の伸びは来期も継続する見通し。

人材については、人手確保も課題として残っているが、技術者の育成もメーカーである以上は重要なテーマ。知識の習得だけでは技術者としての資格は十分とはいえず、実際に作業に従事して技量を身につけることで一人前の技術者として活躍していくことができる。同社では無人化や省人化なども手掛けているが、生産現場では人間が主役であるという考え方は首尾一貫。一流の技術者による製品は品質のレベルが高く、季節の変化に伴う調整のノウハウの習得、機械トラブルなどといった不慮の事態への対応も人間の存在が不可欠であることは揺るがない。ただし自然の摂理として世代交代を免れることはできず、仕事を始めてから技術を継承し、実際に業務に携われるように成長するためには数年の歳月は必要。当然のことながら、働き方改革にも積極的に取り組んでおり、業務の合理化にも力を注いでいるが、モノづくりの主役を司る役割は人間であり、人財の重要性を同社では大きな要素として見ている。

今後はウィズコロナの時代を踏まえ、これまで培ってきたウェブ会議やウェブによる取引先とのミーティングなど、リモートの手法が浸透したことから効率化も図られ、場面においては仕事の能率も向上。ホームページにおいても動画を充実させ、企業PRの動画も盛り込むなど企業イメージの向上においても駆使するなど、有効な活用法を開拓することができた。しかしながら基本は対面が本道であり、コロナ禍によって業務上の進化を果たしたとしても、同社としては、今後も対面と現場主義に軸足を置きながら、製品を通じてホースメーカーとしての存在感を高めていく。