2022年4月5日

西部工業用ゴム製品卸商業組合
第58回「商品説明会」

十川ゴムがイノベテーマに

西部工業用ゴム製品卸商業組合(岡浩史理事長)は3月29日、大阪市北区の中央電気倶楽部において第58回「商品説明会」を開催した。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、同倶楽部で最も規模の大きな大ホール(261平方㍍)を会場として選択。商品説明会としては初の利用で、収容人数210人のパーティースケールの会場において当日は約50人が参加した。今回の説明会社は十川ゴムで、同社が手掛けるゴム・樹脂ホース、シートや型物製品を市場展開する上での研究開発の現状、今後の展望について、イノベーションをテーマの主役に置いて説明した。

主催者を代表してあいさつに立った工業用品部会の犬伏博明部会長は「本日は十川ゴムさんに説明会の担当をお願いした。同社の研究開発に対する理念や体制、営業手法などをご教示頂きながら、今回の内容を営業などといった日ごろの業務に役立てて頂きたい」と期待の言葉を述べた。説明会に先立って十川ゴム大阪支社・営業三課の中川雅康課長が「本日は当社が手掛ける研究開発コンテンツと、実際の製品についての2部構成で当社の製品概要の紹介を行っていきたい。最近ではニューノーマルの言葉が持てはやされており、変化や進化がさまざまな局面で追い求められる潮流にあるが、その中心に位置するイノベーションとは、全く新しいテクノロジーや要素によってのみ引き起こされるものではないと考えている。ハイテクも重要だが、ローテクであっても独創的な価値を引き出すことが可能で、イノベーションの引き金になる状況を示したい」と述べ、当日の発表内容の一端について話した。

第一部は〝十川ゴムの研究開発コンテンツの紹介~当社のものづくりにおける要素技術とイノベーション~〟をテーマに、同社研究開発部の井田剛史次長(工学博士)が説明。「これまではお客様からオーダーを受け、製品を開発して供給するマーケットインの手法が主流であった。しかしながらソリューション主体のプロダクトアウトに切り替えることで、新たな市場を切り開くことができる」と、本筋に向けての前置きを行った。マーケットインは受け身であり、そのため環境の変化による影響が大きくなり、市場のシュリンクなどといった状況にあらがうのが困難であるという一面がある。その一方でプロダクトアウト型の商品開発を進め、ソリューションによって市場展開することにより、能動的に市場や事業領域の拡大を推し進めることが可能となる。同社では「全く新しい技術にこだわることなく、これまで蓄積してきた従来技術を活用することで、市場の新たなニーズを掘り起こす活動を進めていく」(井田次長)。先に進むためにはイノベーションは重要な要素ながら、技術革新と同じベクトルを描くものではなく、革新的な技術であっても市場に受け入れられなければイノベーションにはつながらない。「自己満足に陥りやすく、市場へのマッチングが難しい」(同)という現実があり、〝発見・発明×商業化(実用化)〟に至るブレークスルーが不可欠。特に商業化や事業化へのハードルが高く、市場創出や新展開に至らないケースが圧倒的に多い。同社ではそうした状況を踏まえ〝イノベーションに向けた商品開発〟に軸足を置く事業展開へのまい進を決断した。その手法として〝事業機会の発見と認識〟〝アイデア拡張と展開〟という2つのテーマに着目した。「イチゴ大福や消しゴム付き鉛筆のように異なる2つの価値を合わせることで新たな魅力や付加価値を備えた商品が誕生する。旧知の観念を見直すことによって産業の新たな担い手としての成長が遂げられる」(同)。十川ゴムにもそういった状況を呼び起こす素養があり、材料設計テクノロジーという強みが大きな力を発揮する。さまざまな材料や機能を駆使する土壌が整っており、遮熱や遮へい、放熱、導電性のコントロールなどにおける独自技術によってEVの台頭などにより、新たな時代に求められる価値を生み出し、ソリューション展開することで、イノベーション企業としての飛躍を果たす。

引き続き、同社研究開発部開発課の勝井達也リーダーが「3Dデータを活用したデジタルエンジニアリングによる設計開発と樹脂製品」のテーマで紹介。構造設計テクノロジーにより「CAD、CAM、CAEなどによる3Dデータをベースとしたデジタルデータの最適化を図り、信頼性などを高めていく」(勝井リーダー)。防振ゴムなどは、あらかじめゴムの弾力性をコンピューターで計算し、エンジンによる振動値をインプットした上で材質と構造を算出、シミュレーションによってニーズに対して最適な製品を提供する。来期にはシリコン樹脂をフィラメントとして使用する3Dプリンターを導入する予定で、ゴムライクの質感を備えた試作品の製作を実現。実物に近く、意匠性などを含めた品質面の効率的な確認が可能となる。

樹脂製品も手掛けており、ホースなどといった製品においていろいろな材料や構造、技法を組み合わせて顧客のニーズを満たす。同社の既存の製品紹介においては「熱源気用樹脂ヘッダー・樹脂継手」や二色成形樹脂製品について解説。樹脂化のメリットとしては軽量で熱伝導率が低く、製品点数の削減やコストダウンが挙げられる。二色成形樹脂製品は硬質・軟質などの異材料や色違いの樹脂の同時成形品で、組み立て工数の削減によるコストダウンが可能。手の触れる部分だけを軟質樹脂に置き換えるなど、多彩な付加価値向上につながる。

同社ではPPS樹脂(結晶性スーパーエンプラ)成形品も取り扱っており「十川ゴムでは、複雑で困難とされるゴムの物性解析技術を駆使してニーズにこたえており、樹脂製品についても金属代替をはじめとするさまざまな設計提案を行っている。幅広いカテゴリーを手掛けていることから、相談案件が持ち上がれば積極的に持ち掛けてほしい」(井田次長)としていた。