2022年11月5日

住友ゴム工業
硫黄と天然ゴムの結合点解明

東京工業大学、理化学研究所と協業

住友ゴム工業(山本悟社長)は、東京工業大学の石井佳誉教授、理化学研究所の大内宗城客員研究員らと共同で、タイヤ製造における、生ゴムに高温・高圧を加えることによって硫黄と化学反応させるゴム加硫法の謎を解明した。今回の研究では、硫黄と天然ゴムの化学反応によって生成される結合点において、タイヤの基本性能に影響する可能性を備えた環状構造の検出に初めて成功。今後、天然ゴム分子の間をつなぐ架橋構造と、環状構造を高度にコントロールする技術を確立することによってタイヤの性能向上につなげていく。

1888年においてジョン・ボイド・ダンロップ氏が世界で初めて空気入りタイヤを実用化。この成功には39年に発見されたゴム加硫法が大きく寄与している。ゴムの弾性を生み出す硫黄の架橋構造は加硫工程で形成され、タイヤの基本性能および性能持続性に影響を与える。硫黄はタイヤゴムを構成する原材料のうち1%程度しか含まれないことから、硫黄とゴムの結合点の構造解明はこれまでは不十分の状態にあった。そうした状況にあって、今回の研究グループは、わずか1%で性能が変わる唯一の重要な原材料である硫黄に注目して研究を進めてきた。

今回の研究により、初めて硫黄と天然ゴムの結合点の構造を解明するとともに、タイヤの基本性能に影響を及ぼす可能性を備えた環状構造の検出に成功。この研究成果により、同社が掲げるタイヤ開発および周辺サービス展開のコンセプト「SMART TYRE CONCEPT」の主要技術の一つである〝性能持続技術〟の開発を加速させていく。

同社では、サステナビリティ長期方針〝はずむ未来チャレンジ2050〟の達成を目指し、地球環境・社会共生・ガバナンスそれぞれで課題解決にまい進。タイヤ事業においては、カーボンニュートラルが強く意識される以前から、バイオマス原材料の開発に取り組み、13年には原材料に化石資源を使用しない世界初となる100%石油外天然資源タイヤを発売した。この開発で培った技術をさらに進化・拡大し、30年に製造するタイヤはサステナブル原材料比率を40%、50年には100%サステナブルタイヤの実現を目指している。ゴム加硫法の発見から180年以上が経過した現在、硫黄の研究に回帰し、タイヤの性能向上を通じて持続可能な社会の実現に貢献していく。
 今回の研究成果は、アメリカ化学会の学術誌である「BIOMACROMOLECULES」(https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.biomac.2c00141)に10月25日付けで掲載されている。