ENEOSマテリアル
強化学習AI正式採用
世界初 化学プラントを直接制御
ENEOSマテリアル(平野勇人社長)と横河電機(奈良寿社長)は、横河電機とJSR(エリック・ジョンソンCEO)が共同で行っていた実証実験を昨年4月にENEOSマテリアルが承継、継続して実施し、AIが約1年にわたり化学プラントを高性能に自律制御できることを確認し、ENEOSマテリアルが自律制御AI(強化学習AIアルゴリズム)を正式採用することに合意した。強化学習AIアルゴリズムがプラントを直接制御するものとして正式に採用されるのは世界初。
実証実験は昨年1月17日~2月21日までの35日間(840時間)連続で、既存の制御方法(PID制御・APC)が適用できず、運転員が制御で使用するバルブの操作量を自ら考えて入力していた、手動制御のみでしか対応できなかった箇所をAIが制御できることを確認後、プラントの定期修理を経て、現在まで継続して行われている。蒸留塔の留出物の品質や液面レベルを適切な状態に保ち、かつ排熱を熱源として最大限に活用するという複雑な条件を満たす制御をAIが行い、品質の安定化、高収量、省エネを実現した。
今回確認されたのは次の4点となっている。
①約1年間の安定稼働=外気温変化(外乱)の影響を受けやすい制御箇所に対し、自律制御AIにより、年間で外気温が40度ほど変化する中、夏や冬を含めて安定したパフォーマンスで、液面制御と排熱利用の最大化を実現することができた。稼働中は一度もトラブルなく、安定的に稼働し、厳しい出荷基準を満たした良品のみを生産した
②環境負荷等を低減=自律制御AIによって規格外品が発生することによる燃料や人件費等の損失、時間的損失がなくなるとともに、原料を効率的に製品にできるようになった。出荷基準を満たす良品を生産しながら、省エネを両立し、従来の手動制御に比べ約40%の蒸気使用量とCO2排出量を削減できた
③人への負担を削減し安全性を向上=自律制御AIの導入により運転員が24時間体制で頻繁に手動制御する必要がなくなり、作業負荷のみならず人間への心的な負担も減り、誤操作も防ぐこととなり、より安全性が高まった
④ロバスト(頑健)なAI制御モデル=原料組成のバラつきや、系内の汚れの蓄積や定期修理による清掃によるプラントの状態変化などがあっても、AI制御モデルがそのまま適用でき、安定して有効に稼働することが確認できた
ENEOSマテリアルは、約1年間の実証によって自律制御AIが限られた状況だけでなく、夏冬を含めて安定した性能で最適運転を実現するロバストなシステムであることを見いだした。他工程、他プラントへの応用の検討を行い、自律化の範囲拡大を通じてさらなる生産性の向上、省エネルギー化に努めていく。
横河電機は本年2月27日、プラントの自律化を実現する製品として自律制御AIをエッジコントローラで利用できるサービスを世界で初めて開始した。これに加えて、本件同様のプラント操業の自律化を目指すユーザーに、制御箇所の課題抽出から最適な制御方法の検討とその費用対効果の試算、安全確保、実装、保守・運営までを含めたコンサルティングサービスをグローバルで提供を行う。
両社は、今後も協力して、プラントでの制御や状態基準保全へのAI活用も含めたDXを広く検討していく。