日本ゼオン
先進触媒技術の共同研究始動
大阪大学と共同研究講座を開設
日本ゼオン(豊嶋哲也社長)と大阪大学(西尾章治郎総長)は7月1日、大阪大学大学院基礎工学研究科に共同研究講座「日本ゼオン・カーボンニュートラル先進触媒共同研究講座」(以下、共同研究講座)を開設した。設置期間は2026年6月30日まで。同研究講座では、次世代型化学プロセスを支える先進的な触媒技術の研究開発を行うことにより、カーボンニュートラルを実現する〝ものづくり〟を推進していく。大阪大学との共同研究講座を開設するのは、同社としては初めてとなる。
カーボンニュートラルの実現に向けて化学工業ではエネルギー・資源の大量消費を伴う従来型の生産プロセスから脱却し、低エネルギー・低環境負荷型の化学プロセスを構築することが求められている。その中で、物質の変換を担う「触媒」は、持続可能な次世代型化学プロセスを支える中核技術であり、高機能性触媒の開発に対する社会要請は一段と強くなっている。
今回開設された共同研究講座は、独自のポリマー開発技術を有する日本ゼオンと、最先端の触媒開発技術を有する大阪大学が手を携え、カーボンニュートラルの実現に向けた先進触媒技術の開発によって〝社会との共創〟を進めることを目的としている。また、共同研究の場を大阪大学内に設けることで、日本ゼオンの基礎研究力の向上、共同研究の加速、人財育成などの相乗効果を得ることも狙いとしている。
両者の役割としては、大阪大学は新触媒の開発・評価および種々の分光学的手法に基づく構造解析を行い、真の触媒活性種の特定とその触媒活性発現メカニズムを明らかにすること。日本ゼオンはスケールアップに向けた触媒の改良、反応条件の最適化および耐久性の評価を行い、触媒化学の学理に基づいた従来触媒の延長線上にない高性能触媒の設計・開発を行い、社会実装を目指す。
日本ゼオンでは、中期経営計画の全社戦略として『カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現する「ものづくり」への転換を推進する』を掲げ、2030年の目標としてCO2排出量50%削減(19年度比。日本ゼオン単体のScope1+2を対象)の実現を目指している。同共同研究講座から生み出される技術や知見は、同社のカーボンニュートラル実現に向けた施策への寄与だけでなく、同社の研究開発の特長である「独創的な技術」にさらなるイノベーションをもたらすものとして期待される。
【共同研究講座の概要】
▽所在地=大阪大学大学院基礎工学研究科D棟(大阪府豊中市)
▽研究体制(研究代表者名)=満留敬人氏(大阪大学大学院基礎工学研究科・准教授)、谷地義秀氏(日本ゼオン総合開発センターカーボンニュートラル研究開発推進室室長)、小野健太郎氏(同社総合開発センターチームリーダー)
▽研究課題=ポリマー改質触媒技術の開発に向けてナノ、オングストロームスケールでの触媒活性種となる金属ナノ粒子の形状制御、金属の複合化・合金化、界面制御など、さまざまな精密構造制御を行い、次世代型ナノ触媒の開発を行う予定