2023年7月10日

帝人
ISCC PLUS認証取得

環境配慮型原料の炭素繊維

帝人(内川哲茂社長)は、静岡県の三島事業所で生産を行っている炭素繊維「テナックス」ならびにその材料であるポリアクリロニトリル(PAN)について、持続可能な製品の国際認証の一つであるISCC PLUS認証(国際持続可能性カーボン認証)を取得した。同認証はマスバランス方式によるバイオマスや再生材料などに由来する製品について、グローバルなサプライチェーン上で信頼性を管理・担保する国際認証の一つ。炭素繊維とその材料であるPANが合わせて同認証を取得するのは、世界初。

炭素繊維は、低燃費化への寄与が期待される〝軽くて強い〟素材として幅広い用途で使用されているが、近年、ライフサイクル全体を通じた温室効果ガス(GHG)の排出量削減へのニーズの高まりを受け、製造工程における環境負荷が課題とされている。こうした中、同社は製造拠点における自家発電設備の燃料を天然ガスに切り替えを行ったほか、テナックスのフィラメントや中間材料の製造工程で発生するCO2の排出量を算出し、ライフサイクル全体でのLCA(ライフサイクルアセスメント)を評価の上で関連情報を開示するなど、環境負荷低減に向けた取り組みを進めてきた。これに加え、環境配慮型原料の使用によって、製造工程におけるGHG排出量をさらに低減すべく、環境配慮型原料を用いたテナックスの市場展開に向け、国際認証の取得に向けた準備を進めていた。

今回同社がISCC PLUS認証を取得した、三島事業所で生産を行っているPANならびにテナックスは、バイオマス由来製品の廃棄物や残留物を用いたアクリロニトリル(AN)または循環型の原料を用いたANを使用し、同認証に基づいたマスバランス方式で生産される。原料であるANが従来の石油由来のANと同等の物性であることから、これを用いて生産するPANやテナックスは石油由来品と同等の物性を有している。そのため、従来品から容易に切り替えることができ、製品のライフサイクル全体におけるGHG排出量の削減に貢献することが期待される。

今回の認証取得を受け同社では2024年前半までに、石油由来の原料を用いた従来品に加え、同認証に基づいたマスバランス方式でのPANならびにテナックスの生産・販売開始を目指し、準備を進めていく。加えて環境配慮型製品の展開を強化すべく、欧米、アジアで生産している炭素繊維およびその関連製品においてもISCC PLUS認証に向けた検討を進める。

なお、帝人の三島事業所ではISCCの最新の規定に則り、ISCC PLUS要求事項に準拠することを約束し、宣言を行った。